D2-4
ハンスが目覚めて更に二日後。
ようやく身体も動かせるようになった。ハンスは酒場での一件と、自分が力を求めた故の失態を語った。
「すまないっす。助かったっす。俺、なんか焦ってたっす……」
「ハンス様、なぜ力を求められるのです?」
「それは……せめてまどか様の足でまといにはならない様に……とか、まどか様を守れる男になりたい……とか……」
「ハンスにそんなの、求めて無いんだよ!バーカ!」
「ま、ま、まどか様ぁー!」
そこに転移で戻ってきたまどか達。一人の老人を連れている。
「どうなんだ?ジョーカー?」
ジョーカーは隙なく構えていた。まどかが手を挙げると、ようやく警戒を解き答える。
「峠は超えました。」
「そうか。ハンス、ちょっと傷見せて。」
まどかはハンスの包帯を解く。その傷を老人も覗き込んだ。
「ふむ。これは原初の呪印じゃの。魔術ではどうにもなるまい。」
「呪印?」
「そうじゃ。バンパイアが眷族の契約を施す時、裏切らぬように呪いを打ち込むのじゃ。バンパイアは、その呪印を通して、眷族を操る。」
「解けないのか?」
「解けるのはかけた者だけじゃの。」
「じゃ、じゃあ、俺バンパイアに操られるんすか?」
「そうじゃのぅ……お、そう言えば、アレがあったの。」
それは、まどか達が封印術の修行で、マナの制御の補助として使ったアームカバーだった。ユグドラシルの欠片から削り出し、腕をマナの暴発から守る装備だ。
「これを付ければ、多少は呪印の支配から逃れられるじゃろ。じゃが完全に無効化出来るわけではない。後はおぬしの精神力じゃ。予備を作っておいて正解じゃったの。」
老人がアームカバーをハンスに装備させる。
「あ、身体が軽くなったっす。」
「ひとまずえぇじゃろ。」
そこにジョーカーが割って入る。
「まどかお嬢様、お聞きしてもよろしいですか?」
「あぁ、ジャンの事か。これからの作戦の事もある。みんなに説明しよう。」
まどかは全員を集め、作戦の説明をする。
「バンパイアは太古の昔、聖人によって封印されていた。精神を移し生き長らえる、ヤツの魂を もう一度封印しようと思う。
その為には、神樹より削り出した匣と、聖人の使った封印術が必要だ。だから私達は、メグミの里の神樹の森へ行き、匣を作り、封印術を修得する為にジャンの力を借りた。
確かにジャンは、一度道を誤った。だが今は改心し、人々の為に研究をしている。魔術の研究で、ジャンの右に出る者は居ないだろう。皇帝陛下に頼んで、連れて来たという訳だ。」
「左様でございますか。お嬢様がお決めになられたのでしたら、異論はございません。」
「ありがとう。なにしろこの封印術は、私とメグミ、ジャンの三人掛りで、ようやく発動出来る術なんだ。しかもバンパイアを 限界まで弱らせる必要がある。先ずは全員でバンパイアのマナを削る。その後魂を匣に封印するんだ。みんなの協力が必要だ。やってくれるか?」
「「「御心のままに。」」」「承知!」
「私も、微力ながらお手伝いさせていただきます。」
「ありがとう。みんなで島を取り戻そう!たぶん命懸けの戦いになるだろう。だからこそ、改めてみんなに言っておく。勝手に死ぬな!行くぞ!MJ2、最終決戦だ!!」




