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D1-4



門番の新兵も、国を救った英雄の話は知っていた。

炎を纏い空を翔け、天より雷神を呼び魔を討ち滅ぼし、対王国軍では戦場で散った兵士達を髑髏の兵士として呼び起こし、王国軍を蹴散らし、最後にはその魂さえも救った英雄、それがまさか、自分よりも若い女の子だったとは……


ゴルメスの屋敷へと走る馬車の中で、まどかの向かい側に座り、新兵は厳罰を覚悟し震えていた。


未だ戦火の傷跡が残る屋敷だが、人の活気に溢れている。裏庭からであろう、友の声が聞こえた。


「オラオラ!その程度では帝都は守れんぞ!殺す気で打ち込んでまいれ!」


(変わってないな……)


まどかは嬉しそうに微笑むと、裏庭へ向かう。若い兵士達が剣を打ち合わせ、いい汗をかいている。


「ゴルメス!」


声のする方へ兵士達が目をやる。帝都において男爵であるゴルメスを呼び捨てにする者など、数人しかいない。だが声の主は、その誰でも無かった。

右手を挙げ、手首に巻いた紐を見せる少女。呼ばれてゴルメスは、剣を逆手に持ってそれを掲げる。少女の手首の紐と、ゴルメスの剣の飾り紐は、同じ物だった。


「まどか殿!」


ゴルメスは剣を握り直し、顔の横で平行に構える。まどかもニヤリと笑い、猫科の猛獣のように、身を沈めて拳を握った。


「断頭迅雷!」「炎陣、フルスロットル!」


稲妻と火の玉が、裏庭の中央でぶつかる!若い兵士達は、その衝撃波で吹き飛ばされそうだ。門番の新兵は、近くの木にしがみついて、情けない悲鳴を漏らす。衝撃で舞い上がった砂煙が、ようやく落ち着いた頃、


「流石だな、ゴルメス。」


「俺の剣を平然と止めておいて、流石はないだろう、まどか殿。」


兵士達は思い知らされる。二人にとっては挨拶程度の打ち合い、自分達は、まだそこにすら及ばないと。


「男爵様、その御方は……」


「耳にしたことはあるだろう。帝国を救った英雄、そして我が友、まどか殿だ。」


兵士達の歓声が上がる。さすがはゴルメスが鍛えている兵士達、強者に対する敬意と畏怖、相手が少女であっても侮るような事は無かった。


「まどか殿、どうすればその若さで強くなれるのですか?」


一人の兵士が率直な質問をする。


(困ったな……私の場合は、特殊だからな……無難に答えるか……)


「私の国に、心·技·体という言葉がある。心を鍛え、技を磨き、丈夫な身体をつくる。どれが欠けても、真の強者にはなれない。

ゴルメスには鋼の肉体と、日々研鑽を怠らない技、そして国を愛する不動の心がある。私がこの国に来て、初めて認めた武人だ。

そんなゴルメスが鍛えているんだ。あなた方ならば、きっと強くなれる。

あと、命を粗末にするな。確かに皇帝の盾とならねばいけない時もある。しかし、生きることを諦めたら、強い盾にはなれない。脆い盾では守りにならないよ。」


兵士達は真剣に聞いている。ゴルメスもそれに頷いた。


「俺もな、前にまどか殿から、死ぬなよと言われた時があってな、その時は気付かなかったが、今なら分かる。責任感とでも言えばいいか……

確かに俺達は国の盾だ。だが使い捨ての安物ではない。どんな矛にも屈しない最強の盾となるのだ!」


「「おぉーっ!!」」


「ゴルメス、ゆっくり話でもしたい所だが、時間がない。人を紹介してくれないか。」


兵士達に気合いが入った所で、まどかはゴルメスに、魔導研究所の生き残りがいないか尋ねた。

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