D1-3
「お嬢、あんたが思ってるほど、簡単ではないぞ。」
「まずは一つ目の問題、これを使ってくれ。」
「これは?」
「神樹ユグドラシルの欠片だ。」
「ばかな!有り得ん!帝都でも出回らない稀少材料だぞ!偽物では加工に耐えきれないぞ!分かってるのか!」
「あぁ、正真正銘、本物だ。なにしろユグドラシル本人に貰ったからな。」
「本当に本当なのか?お嬢……いや、貴女はいったい……」
「たまたまだよ。たまたま知り合いになっただけ。」
「土地神と知り合いってなんだよ!もう驚くのも疲れたわい!分かったよ!匣は作る!但しそこまでだ。その後の事は知らん。いいな。」
「どれくらいかかる?」
「最低でも三日だ。手は抜きたくない。」
「わかった。その間に私は、封印術の方を何とかしよう。ちなみにその、封印をした術者のこと、何か知らない?」
「聖人と言われているが、詳しい事は知らん。だが冒険者と協力して、マナを限界まで削らんと封印すら出来なかった……と聞いている。」
「そうか……(まるでポケ○ンだな……)うん、何とかする。」
「アテはあるのか?」
「一つだけな。きっかけくらいは掴めると思う。いや、掴んでみせる!」
そこにようやくメグミが来た。まどかを見るなり、
「もう、まどか酷いよー!置いてくなんて……」
「メグミ、出発するよ。帝都へ行く。」
「え?え、え、ちょっと……」
「三日後また来る。」
まどかは困惑するメグミの手を引き、店を出た。すぐさま転移の術で帝都の近くまで飛ぶ。
「まどか、いきなり過ぎるよ……」
「ごめん、三日以内に調べなきゃいけないことがあるんだよ。そしてそれは、メグミに頼るしかない事かもしれない。」
「何が何だかわかんないよー!」
「歩きながら説明するよ。」
まどかは封印術の事をメグミに話す。前にバンパイアを封印したのは聖人であること。メルクシティで騒動を起こした帝都の魔導師が、匣について知っていたこと。それはつまり、帝都でその研究がなされ、封印術の資料があるかもしれない……ということ。
「…だからメグミには、その術を修得してもらわなきゃいけないかもしれない。」
「う、うん、なんとなくわかった。でも、私に出来るのかなぁ……」
「まぁ、やってみるしかないよ。」
「簡単に言わないでよー!」
まどか達は、帝都の正門前に来た。ついこの間まで居たのに、何か懐かしく感じる。門には新人の衛兵が居た。
「そこの者、止まれぃ。身分証等はあるか?」
まどかはギルドカードを渡す。
「ふむ、冒険者か。帝都には何用だ?」
「魔導の研究に。」
「なに?魔導の研究?……もしや、王国のスパイではないだろうな!」
「違う。急いでいるんだ。通してくれ。」
「ならん!ますます怪しい。来い!じっくり調べてやる!抵抗するならば、手打ちにするぞ!」
「どうした?騒がしいぞ。」
奥から老兵がやって来る。背中に芯が一本通った様な立ち姿、顔には深いシワが刻まれているが、眼光鋭く隙がない。
「はっ!不審な者がおりましたゆえ、取り調べを……」
「どれ……せ、聖女様!ば、馬鹿もん!この御方は帝都を この国を救って頂いた英雄であらせられるぞ!」
(御老公じゃないんだから……)
「あまり騒ぎにしたくない。ゴルメス殿はおられるか?」
「ははっ!では御屋敷までご案内致します。」




