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誰かの為に1-1



「私が、聖女?」


「そうだよメグミ。私も心強いよ。行こう!バンパイアを倒しに!」


まどかはメグミの手を取り、踵を返す。


「お待ちなさい!なかなか言いたい放題言ってくれましたね、まどか。」


「別にあんたに言ったわけじゃないよ……エリス、さん、だっけ?私はメグミに言ったんだ。仲間として。この森を襲った奴らも退治したんだ。メグミを解放してくれてもいいだろ?それでも森に縛り付けたいって言うのなら、私は仲間の為に、あんたを敵だと認識する。望ましい事では無いけどね。」


森がザワつく。意志を持った木々が、まどかを取り囲む。


『ふはははは……面白いやつだ。エリス、お前の負けだ。』


地鳴りのような声が、まどかの脳に直接響く。


『失礼があったな。エリスはジーニアスの心を奪ったお前に、嫉妬しているのだ。まどか。』


「ふぇ?」


「神樹様!そ、そのような事は……」


『まどかよ、入って参れ。』


壁の如くそびえる神樹の根元に、扉のようなものが現れる。まどか達は言われるがまま、中へと入った。


「神樹様、このような害を成す可能性がある者を なぜ受け入れなさるのです!」


『エリスよ、その答えは、お前も気付いているのだろう?』


エリスは臍を噛む思いでまどかを睨む。まどかは人を惹き付ける何かを持っている。だが同時に、この者に関わるのは危険だと、エリスの中で警鐘が鳴っているのも事実。

この森を災いに巻き込まぬ為には、まどかに関わってはいけない……それが森の導き手であるエリスの判断だったのだ。


(この者に心奪われるのは危険過ぎる……)


ユグドラシルは、そんなエリスの葛藤などお構い無しに、まどかに話しかける。


『まどかよ、確かにその匣は我の一部で出来ておる。しかし作ったのは人間だ。我は材料を与えたに過ぎぬ。必要ならば材料は与えてもよいが、我が出来るのはそれだけだ。』


「ありがとう。では、この匣を作った者、場所等は、ご存知無いだろうか?」


『メルクシティに行ってみるがよい。人間は短命だからの。その者はもう居まいが、話くらいは残っているであろうよ。』


「わかりました。早速行ってみます。」


まどかはユグドラシルの欠片を受け取り、メグミと共にメルクシティに向かうことにした。欠片と言っても、事務机程の大きさがある。材料には充分だろう。まどか達は一礼し、メルクシティへ転移した。


「宜しかったのですか?貴重な欠片をお与えになって……」


『エリスよ、あの者はこの先、世界を照らす太陽となるやもしれぬ。近付き過ぎれば身を焦がすであろうが、与える恩恵はそれ以上となるだろう。』


「そんな!それではまるで、神の御業ではないですか!人間が神に近付くなど、有り得るのですか?」


『そうよのう……この世界の人間ならば、無理であろう。おそらくあの者は、他の世界から神が呼び寄せた者かもしれぬ。我等はあれを 監視するのが役目であろうよ。』


「かしこまりました。あの者が森に、世界に害を成す者であるか否か、私が監視いたしましょう。あの者は危険であると判断した、私の目に従って。」


『それがよかろう。エリスよ、あの者を見極めよ。そしてあの者が、ジーニアスを預けるに価する者であるならば、メグミに弓を返してやれ。』

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