I4-3
ハンスが見つけた四角い物、それがあった周辺を全員で調べて、同質の欠片を拾い集めた。
まどかはクシナの資料室を 丸ごと秘密基地に移す。空間転移の応用で、ジョーカーやメイド達と術の同時発動をして、一気に転移したのだ。
「少し強引だったかな。」
クリシュナには、バンパイアに発見されて処分ということは避けたい……と言って転移した。
「さて、復元作業に入るか。」
回収した欠片を丁寧に洗浄し、テーブルに並べる。膠を炊き、テーブル横に準備すると、欠片のパズルを解き始めた。四時間程の作業で、大方の欠片が貼り合わされた。どうやら、箱状のものであったらしい。となると、古代文字の表すものは、箱の持ち主か、中味の説明か……
続いて古代文字の解読に移る。資料に照らし合わせて、読める部分を書き出していった。
【人……命喰ライテ悠久……生キル魔……魂ノ源ヲ……】
【聖樹ヨリ……セシ匣……聖人……法力……封……セシ……】
「読めるのはこれくらいか。だがこれは、バンパイアを封じていた匣のようだな。その方法さえ分かれば、ヤツを封印出来るかもしれない。」
「方法……でございますか…」
「そうだジョーカー、長い時を生きるお前なら、何か心当たりは無いか?」
「申し訳ございません。わたくしの知る限り、そのような話、聞き覚えございません。」
「そっか……んー……あ!」
まどかは耳飾りに触れる。
『リンドー、聞きたいことかある。』
『ん?まどか君か。丁度退屈しておった所じゃ。』
『魔物を封印する匣の話を聞いたことない?』
『なんじゃそれは?』
『……ないか……もしかして?と思ったけど、そう都合のいい事は無いよな……古代文字が刻まれた匣とか、知らないか……』
『待て待て。私を誰だと思っとる。叡智の結晶は、伊達ではないわい。君の言い方が悪い。魔物を封印する匣は無いが、魔物の魂を封印する秘宝ならば、聞いたことはある。』
『!本当に?』
『古代の聖人と、錬金術師の祖と言われる者の手によって、誰も倒せなかった魔物の魂を封印することに成功した……という話じゃ。聖なる力を持ち、人語を解する大樹を材料とし、聖人の法力を持って封印した……と聞いておるぞ。』
『それだ!匣に刻まれた古代文字と一致する。』
『じゃが、こればっかりは私でも作れぬぞ。高い木工技術、結界術、それらが無いとまず無理じゃ。それだけではないぞ。まず材料となる聖なる大樹。そして封印術式を使える聖人が居らんと、どうしようもないわい。』
『そうか、分かった。いいヒントになったよ。ありがとう。』
(こうなったら、本人に聞くしかないじゃないか!)
「どうしたの?まどか?」
まどかは思考する。あまり時間は掛けれない……だが、これは是が非でも手に入れなくてはならない。おそらく、島民の被害を極力出さず、バンパイアを排除するには、封印するしかない!焦る気持ちを抑え、まどかはメグミに告げた。
「メグミ、連れて行ってくれないか?メグミの始まりの地へ。」
「……私も、聖樹と聞いて、神樹様のことかなって思ってた。行ってみよう!神樹の森へ。」
そこはめぐみが、メグミ=ジーニアスになった場所。精霊が集い、ドライアドが治める森。
「のんびりは出来ない。転移で一気に行くよ。正確な場所、教えて。」




