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I4-1



エミリオの言葉で、シルバは足を止める。


「まどか、僕は全面的に支援する。民を守るため、バンパイアは今度こそ倒さなければ……」


「待ってエミリオ。今貴方が動けば、この国が真っ二つに割れる事になる。それこそ罪もない人達を戦火に巻き込む事になる。ここは私に任せてくれないか。」


「まどか……」


まどかはそう言うと、耳飾りに手をやる。


『リンドー、聞こえるか?』


『ん?おぉ、まどか君か。何か思いついたか?』


『手短に話す。バンパイアは生き延びている。兵士の姿で。武王も既に眷族に堕ちている可能性が高い。機を見てそこを離れろ。』


『残念じゃが、無理じゃ。私の研究室は、今や檻の中じゃ。』


『なぜ!』


『どうやら耳飾りを渡しておる所を 誰かが見ておったらしい。まぁ、場所などどこでも構わんよ。私の研究を止めれるものなど、誰もおらんわ。何かあれば知らせてやる。感謝しろよ。』


『くれぐれも気をつけて。』


『君もな。』


「……」


「どうした、まどか?」


「リンドーが投獄されたらしい。」


「なんと!」


「おそらくだが、バンパイアは精神を移したばっかりで、それほど眷族を増やせていないと思う。リンドーを眷族にして私に近付き、罠を張ることも出来た筈なのに、それをしなかったのは、そういう理由だと思うんだ。」


「では今のうちに……」


「そうしたいのは山々なんだけど、何も知らない兵士達の命を奪うことになりかねない。兵士を無力化して、バンパイアだけを仕留める方法を考えないと……」


それからしばらく、様々な案が出される。しかし、これ!というものは、中々出なかった。


「……まずは魔女王邸の地下を調べるか。ごめん、一度帰る。何か分かれば連絡する。ここにも武王の手が伸びるかもしれない。十分気をつけて。」


それだけ言うとまどかは、部屋を出た。状況は良くない。まどかは逆転のきっかけを探るべく、行動を開始するのだった。



-まどかがエミリオの屋敷を離れたのは、スパイの可能性を考えたからだ。リンドーとの一件を見たという誰か……結界と精霊に守られた森の中を 覗き見出来るものなどそうは居ない。明らかに邸内の誰かであろう。

転移の屏風には、MJ2以外の者には操作出来ない制限がかけてある。となると、名も無き島に入るには、海からの上陸しかない。まどかはリンドーが作った風の結界の箱に、幻術の印を合わせて刻んだ。一度上陸したことがある兵士でも、なかなか辿り着く事は出来ないだろう。


「さてと、これで暫くは時間が稼げるだろう。この間に魔女王邸の地下を調べよう。」


地下の捜索をかってでたのは、マリアだった。子蜘蛛を亀裂から侵入させ、糸を伝って情報を送る。マリアにうってつけの仕事だ。地下を調べる間、周辺の警戒をハンスが行う。


「俺はまだ、お前を信用した訳じゃないっすよ。まどか様の命令だから、仕方なくやるっす。」


マリアはハンスの気持ちも理解出来る。警戒されるのは当然だろう。だからこそ、少しでも役に立ちたい……と思った。


「私、信用して貰えるように、頑張ります!」


「ふん!焦ってミスしないようにするっす!巻き添えは勘弁して欲しいっす!」


ハンスの無意識の気遣いに、マリアは少し驚き、温かい気持ちになる。


「ありがとう。」


そう言って微笑むのだった。

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