I2-3
まどかは拳に浄化の炎を灯す。
境遇に同情しない訳ではない。しかし過剰なチカラを得て、破壊と殺戮を撒き散らす厄災となった魔物を 放っておく訳にはいかない。
(倒すしか無いか……せめて生まれ変わって、まともな生活を送ってくれよ……)
「炎陣!超速特攻!」
まどかは浄化の炎を背中から噴射しながら、限界ギリギリのスピードでキメラを削っていく。その姿は、翼に炎を宿した天使の様で、光の帯となってキメラの周りを飛翔し続ける!
(戦乙女装備は、無闇に使えない……今はこれで削るしか!)
浄化の炎に焼かれ、キメラの再生能力が落ちている。だがそれでも、一進一退という状態であった。
「蝿のようにうるさいヤツめ!絡め取ってくれる!」
キメラは蜘蛛の巣を張り巡らせる。次第にまどかの行動範囲が狭められていく。そして遂には、その爪に捕らえられてしまった。
「喰ってやる!そのチカラ、我がものとする!」
「まどか!」「まどか様!」「まどかお嬢様!」
キメラはまどかを一飲みにした!
「「そんな……」」
キメラの身体に浄化の炎が灯り、そのサイズを倍加させていく!
「凄まじい!チカラが溢れて来るぞ!」
「この蜘蛛野郎!」
ハンスが蜘蛛の巣を切り裂き、キメラに迫る!メグミは矢を番え、キメラの巨体に向かって放つ!
「エクスキュージョンアロー!」
ハンスの攻撃も、メグミの矢も、浄化の炎で掻き消える。ジョーカーやメイド達は、炎の影響で近付く事も出来ない。最早手の付けようが無かった。
「こんなところで終わるくらいなら、せめてまどか様と一緒に……」
ハンスは覚悟を決めた。手筒を取り出し、火薬玉を詰める。
「俺を食おうと口を開けた瞬間に、コイツを撃ち込んでやるっす!」
「そんな事、まどかが許すとでも思ってるの!」
メグミが初めて大声で怒鳴る。目に涙を浮かべ、ハンスを睨む。
「ハンスさん、まどかとの約束、忘れたの?まどかに断りもなく、勝手に死んでいい訳ないじゃない!」
ハンスの脳裏に甦る、あの時の記憶
『条件は一つ。勝手に死ぬな!それが守れるなら、ついてきていいよ。』
ハンスは目を真っ赤に染め、打ちひしがれ、その場に膝を付いた。
こちらの気持ちなどお構い無しに、肥大化を続けるキメラ。
「ふははははは、安心しろ。お前達も残さず喰ってやる!今のうちに神にでも祈っておけ。」
「うるさい!この偽司祭!俺が信じる神は、俺の女神様は、まどか様だけっす!」
その瞬間、キメラの表面に、青筋を立てたような血管が浮き上がる!肥大化が加速し、血管が破れ血が噴き出す!パンパンに膨らんだキメラは光り耀き、中から声が聞こえた。
「炎陣!フルバースト!!」
内圧に耐えきれなくなったキメラは、その身を破裂させ、爆散する!メグミとジョーカーは、衝撃と浄化のエネルギーを防ぐため、慌てて結界を重ねがけした。それでもジョーカーとメイド達は、身体の半分近くが消し飛んだ。
「ハンス!恥ずかしい事を大声で叫ぶな!メグミ、よく止めてくれた。ありがとう。ジョーカー、チェリー、コバルト、生きてるか?」
「ま、ま、ま、」
「まどか!」
「多少時間が掛かりますが、再生可能でございます。」
「「問題ございません。」」
「気を抜くなよ!ヤツはまだ生きてる!」




