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I2-2



魔物の姿が、完成形だと言わんばかりにその変化を止めた。ハンスが切り落とした腕も、既に再生している。


「完璧だ!遂に、遂に私は究極の進化をした!私こそが最強だ!全ての者が私に平伏すだろう!」


「何が最強だ!寄せ集めの魔物じゃないか。」


「今のうちにほざくがいい。竜種の魔法耐性と防御力、バンパイアの再生能力、それぞれの魔物の固有スキル、全てを併せ持つ究極のキメラとなった私を 倒せるものなど居ない!世界は私の支配下になるのだ!」


「……くだらない……そんなくだらない事の為に、お前は三王の島に巣食っていたのか……」


「そうとも!竜王の体内で生き残った私が、産まれて最初に見た光景は、身動きすら出来ぬ母の姿だった。それから数百年、母の介護に明け暮れたのだ!そして私は知った。母が竜王に食らいついた、本当の理由を!」


「本当の理由?」


「母は、サキュバスは、バンパイアに嵌められたのだ!」


「?!」


「バンパイアは昔、夜な夜な人を誑かし、その生気を吸っていた。時の王は、人心を惑わす魔女を討伐する為、聖騎士団を結成した。」


「島に伝わる昔話か……」


「だが聖騎士が行ったのは、杜撰な捜査と殺戮、魔女狩りと称して、吸血鬼騒ぎが収まるまで、疑わしい者から処刑していったのだ。そして聖騎士団は、この島に辿り着く。

バンパイアが自分の危機を躱すため、魔女の正体として、サキュバスを売ったのだ!当時この島には、五十近いサキュバスが住んでいた。

母は、地中に身を隠し、同胞の死骸を盾にして、なんとか生き残った。聖騎士団は凱旋とばかりに、意気揚々と引き上げる。

バンパイアは、そのタイミングで、人を襲うのを辞めたのだ。母は怒りに震え、子蜘蛛達を召喚し、浮かれている聖騎士団を皆殺しにした。」


「……ほぼ昔話通りかな。」


「その後だ!バンパイアは子蜘蛛達を捕らえ、眷族とし、竜王の島を襲わせた。サキュバスと竜王を険悪にして、バンパイアは自分の手を汚さず、姿も見せずにサキュバスを始末しようとしたのだ!

結果は相討ち。サキュバスは命を取り留めた。そこでバンパイアは、私を眷族にしてトドメを刺す事を思い付いた。」


「なるほど。凡そ私の推理通りだな。それがなぜ、チカラを求める事に繋がるんだよ?復讐ならば、もう済んだだろう。」


「復讐?そんな目的ではない!なぜサキュバスは騙された?聖騎士如きに蹂躙され、バンパイアにはいいように利用された?全ては弱さだ!私は自分の種族を 誰からも恐れられる最強の種族へと進化させたのだ!誰にも負けず、誰にも利用出来ない!究極の種族へと進化したのだぁ!!」


「……看病疲れと、騙された事実を知った事で、思考が短絡的になったか……その結果、親を殺し、復讐を遂げ、自分を正当化しようとする。緻密な計算と幼稚な言い訳が綯い交ぜになった、破綻した理由じゃないか……精神的に追い詰められると、魔物もこうなるのか?知能が高いのも考えものだな。」


「お前に何がわかる!訳知り顔で説教でもするつもりか?」


「わからないね。分かりたくも無い!何を言ったところで、今のお前には理解できないだろうし、お前の罪が消える訳でも無い。ただこの世の理から外れたお前を……このまま生かしておくわけにもいかないんだよ!」

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