A2-3
翌朝。
皆は人の気配で目が覚めた。数は100を超えている。襲撃か?それぞれ武器を手に窓から様子を伺う。屋敷の門の前には、老若男女様々な町人が並んでいる。
「なんの騒ぎ?」
まどかは外へ出た。人々はまどかの姿を見ると、一斉に手を合わせ、拝み出した。
「神託の聖女様だぁ!」
騒ぎを聞きつけた冒険者達が、まどかに話しかける。
「聖女様!騒ぎになるんで、屋敷にお入りください!」
どうやら神託の結果が住民に開示されたらしい。救いの聖女を一目見ようと、屋敷に押し寄せたのだ。
「まずいなぁ……」
「まどか、こんなんじゃ迂闊に外出出来ないよ。」
「うーん……とりあえず買い物とかは、メイドさん達に頼むか。」
「それしかないわねぇ……」
「それと、地下の抜け道くらいは、作った方がいいかもな。」
「そうっすね。」
まどかは屋敷の裏から出て、丘の形状を見る。丘の一部が潮に削られ、崖になっている。風魔術を使い、崖下に降りた。
「うーん……お約束のような、洞窟みたいなのは無いなぁ…」
屋敷周辺を見て回ったが、抜け道の出口になりそうな場所がない。森や廃屋、遮蔽物がほとんど無く、抜け道を作るのは諦めた。
「いっそ、腹括って堂々と出るか……」
まどかは、住民の前に出た。
「皆さん!神託の話しは私も聞きました。ただ私はまだ、皆さんの為に何もしてません!国の危機も今のところ無いですし、とりあえず普段通りの生活をしましょう!私も普段通り、普通の住民として買い物とか、町を見て回ったりしたいので、よろしくお願いします!」
「おぉ!聖女様が町を見回りして下さるそうだ!町は安泰だ!」
「なんと!流石は聖女様。我々にも平等に接して下さるのか!」
「町中で聖女様にお会い出来るのか!ありがたやぁー………」
多少の勘違いも含め、なんとか住民は納得して帰って行った。
「やれやれ……どうしたもんかね……ギルドの皆さん、すいません。ご迷惑かけて。」
「いやいや、聖女様にもしもの事があったら、ギルドの沽券に関わります。」
「やめてください。一応パーティ登録してるんです。皆さんの仲間として接してくれませんか?」
「え!いいんですか?」
「勿論です。普通にまどかと呼んでください。」
「じゃ、じゃあ……まどか様、今後の警備はどうなさいます?ギルドから人をやって、常駐させますか?」
「その辺りは、こちらに任せて頂きましょう。」
白いローブを纏った男が、兵士を連れてやって来た。この男、教会で見覚えがある。
「貴方は?」
「教会より参りました。法王コクーン様のご指示で、衛兵を連れて参りました。門番として常駐させます。聖女様、ご安心を……」
そう言うと、兵士に合図を出し、四人が門の前に立った。
「じゃあ、よろしくお願いします。冒険者さん、ギルドにもそう伝えてください。」
「わかりました。法王様のご指示なら、安心して帰れます。では。」
そう言って冒険者達は帰った。白いローブの男も、少し兵士に指示を出し、まどかに一礼して帰って行った。
門の前で微動だにしない兵士。まどかは門の内側に土魔術を施す。簡易的な詰所を作った。
「衛兵さん、門番は一人でいいでしょ?交代で休んでください。」
衛兵達は、まどかの優しさに心奪われたのだった。