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I1-3



「そんな事が出来るのか?まぁ、可能だからここにいるんだろうけど……」


「故意に霧を生み出すことと言い、秘密裏にここで研究がなされていた……と考えると、辻褄が合いますな。」


「そう言えば、以前帝国の暗部と戦った時、人に魔物の細胞を取り込み、獣人化したヤツが居たな……魔物に何かを掛け合わせる……出来ると思った方が良いだろう。しかし……思っていた島のイメージと違うな……」


「お嬢様、ここは一度、準備と情報収集に戻られた方が良いかと。」


「うーん……」


まどかが悩んでいたその時突然、


「ズドーン!!ゴゴゴゴ……」


島が大きく横揺れし、衝撃が走った!まるで島が移動し、何かにぶつかったような、ありえない程の地震である。まどか達は吹き飛ばされ、木々に強か身体をぶつけ、そのまま倒れ伏してしまった。


「み……みんな、大丈夫か……」


かろうじて起き上がるまどか。すぐさま治癒の魔術を使う。


「ハイメディック!」


不意打ちの衝撃で、まともに受け身の取れなかった事もあり、かなりのダメージだった。まどかの魔術でようやく立ち上がると、周囲に警戒し、身構えた。


「なんなんすかこれ!」


「こんな地震、初めてよ……」


ジョーカーとメイド達は、すぐさま飛び上がり、上空から観察する。今の衝撃で一時的に周辺の霧が晴れたのだ。


『まどかお嬢様、島でございます!』


『うん。島だよ。』


『あ、いえ、現在我々がおります島とは別の島に、衝突したような状態でございます。』


『島と島が衝突?どういうこと?』


『島が……なんと言いましょうか、口を開けて、霧を吐いております。』


まどかは意味が分からず、自分も上空へ飛んだ。


「これは……貝?」


島程の大きさの二枚貝が、その口を開けて霧を吐いている。まどか達が島だと思って上陸したのは、島ではなく、巨大すぎる貝だったのだ!海岸に繋いだはずの小舟は、先程の衝撃で大破していた。


「まいったな……だから土魔術が発動しなかったのか。舟も粉々……とりあえず、今ぶつかった島の方へ移るか。」


ハンスとメグミを拾い、空から隣の島へ渡る。ここには砂地の海岸があり、本物の島らしい。基地も問題なく作れ、外観を隠蔽すると、ようやく落ち着いた。


「多分、こっちが本物の名も無き島だろうな。」


「では先程のものは?」


「昔読んだ、異国の伝説の生物について書かれた本に、あれに似た一文があった。たぶんあれは【しん】という貝の魔物だろう。」


「蜃?っすか?」


「蜃は口から蜃気という霧を生み出す。その蜃気は、あるはずのない建物などの幻影を映し出し、人々を惑わせる。その幻影に映し出された建物を蜃気楼という……だったかな。

旅人が蜃気楼を見て、町があると思い向かって行く。だが行けども行けども町には辿り着けず、そのまま遭難してしまうらしい。」


「なるほど。」


「クシナが資料として残したのは、辿り着くはずのない蜃気楼の中に、あるはずのない島があり、そこに人心を惑わす魔物が潜んでいる……という事だったんじゃないかな。」


「それが、名も無き島ね!」


「その通り。そして今、私達はそこに居る!」


「そうであれば、このまま帰るわけには参りませんな。」


「そういうこと!少し遠回りしたけど、明日から司祭を探すよ!」

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