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H4-4



資料館(?)を出たあと、まどかは屋敷の隅々を調べる。隠し部屋、転移魔法陣、地下通路など、自分だったら作るだろうなぁ……というものがないか、くまなく調べた。その結果、司祭はもう、ここには居ないと結論付けたのだった。


ハンス達教会組は、主だった情報は得られなかったようだ。司祭は教会を離れる際に、特定の資料を処分したようだった。唯一燃残りから読み取れたのは、始まりの地……という単語だけであった。しかしまどかは、それで何か確信したらしい。ジョーカーに使いを頼み、帰りを待って作戦会議を開くこととなった。


翌日。

武王が魔導船を用意してくれた。流石は王所有の船、一軒家がそのまま船になったような造りで結界まで張れる。ただ岩礁の多い海域には入れないので、近くに停泊し、そこを拠点として小舟で捜索する手筈になっている。


実はこの船こそ、まどかがジョーカーを使いに出した理由だった。武王は話を聞くと、自分も同行する!と言ったらしいが、結界の早期実現と、国内の安寧の為に残るようにと言った。

なにしろ島周辺の魔物が活性化しているのだ。武王と冒険者ギルドには、そちらの討伐に専念して貰いたかった。


結界は、エミリオとリンドーに任せた。多少の不安(結界の祠を小型化するついでに、まどかの銅像を作って埋め込むと言い出したのだ。まどかは机を蹴り上げながら、丁重にお断りしたのだが……)はあるが、口出しはしない事にした。


まどか達は、必要な荷物を魔導船に運び入れる。準備は全て整った。出発を明日に控えた日、まどかは屋敷の全員を集めて宴を催した。


料理人達は味噌醤油の使い方をマスターしたようだ。なかなかの料理がテーブルに並んだ。メイド達はそつなく仕事をこなしている。ジョーカーとメイの指導の賜物だろう。

兵士達は各班ごとにかたまり、親睦を深めている。途中シルバが、


「せっかくだ、余興の代わりに班から一人代表を出して、力比べでもしてみろ!優勝した班は、明日の訓練を休みにしてやろう!」


などと言うものだから、兵士達は沸き上がった。余程普段から厳しく鍛えられているのだろう。


「面白そう!ハンス、お前も出ろよ。勝ったら何かご褒美考えてやるから。その代わり、負けたら分かってるよね?」


ハンスは、まどかのご褒美という福音を反芻している。やはりこの男、下心のパワーは桁違いだった。あっという間に兵士達を倒し、優勝してしまったのだ。

その結果に戦慄したのは、明日からの地獄の特訓が決定した兵士達だったのは、言うまでもない。重苦しい雰囲気になったが、途中からヤケになったのか、大盛り上がりで宴は終了した。


出発の朝。皆に見送られながらまどか達は出航する。島の裏手なので、昼には目的地に着くだろう。途中漁師達の船に会い、皆が手を振る。

まどかはふと考えた。


(のんびり釣りなんかしながら、穏やかに暮らす予定だったのに、私は何をしてるんだか……)


その疑問を振り払い、遥か先に見える霧の塊を見据える。決意……と言うよりは、自分自身のお節介な性格に、自分でも呆れていたのだ。


(まぁ、コレはコレで、嫌いじゃないんだけどね。)


仲間達の顔を見回しながら、一人苦笑するまどかであった。

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