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H4-1



それから数日。

武王を後見人に、新竜王戴冠式と披露が行われた。以前なら教会が情報の発信源として、良くも悪くも拡散力があったのだが、司祭による洗脳とクーデター未遂だと、今回の件を島民に告げ、法王と魔女王の暗殺の首謀者として手配すると告げた。

この情報の拡散には、冒険者達が大きく関わっているらしい。この短期間でいろんなことがありすぎた。バンパイアの真相など、民が動揺する情報は、なるべくカットしたようだった。


「ここに新たな王が誕生した!エミリオは正統なる竜王の後継者にして、民を愛する慈愛の王である!聖女に導かれ、神の加護を受けた聖なる王!武王シンバの名において、新たな王の呼名を【聖竜王】エミリオとする!」


大歓声の中、エミリオの頭上に王冠がのせられた。歓声に応えるエミリオ。一通りの挨拶の後、


「最初に王として手掛けたいのは、島の結界の再構築と強化です。聖女まどかの力を借り、武王配下の錬金術師に助力を受け、必ずや外敵を寄せ付けぬ結界を構築します!」


一際大きな歓声が上がる。民の安全を第一と考える新王への期待の表れであろう。


実はこのスピーチは、まどかの提案だった。エミリオに王としての手柄と言うか、実績を作ってやろうと思ったからだ。

まぁ半分は、この島に自分の名を残し過ぎたくない……と言うのもあった。何でもかんでもまどかの功績にしてしまうと、王の威厳など霞んでしまう。

民が王を軽視する状況は、避けなければならなかった。本当ならば、結界の構築も自分の名前を出して欲しく無かったのだが、


「そんな、僕が独り占めなんて嫌だ!そもそもコレ考えたの、まどかじゃないか!」


と、エミリオ本人に反対されてしまった。リンドーに関しては、流石は錬金術師、結界の祠の配置の算出から、小型化、効率化まで、難なくやってのけた。リンドーの功績は、武王の功績とも言える。これだけはしっかり明言する事にした。


式典の最中、まどか以外のMJ2メンバーは、屋敷で大忙しだった。エミリオ邸として引き渡すにあたって、兵士達は数が揃ったが、屋敷の中の事をする者が居ない。

今まではジョーカーとメイド二人で事足りていたが、まどかが旅立つとなれば、ジョーカーはまどかについて行く。チェリーとコバルトも、元々は屋敷の管理用に召喚したのだが、まどかの屋敷ではなくなるため、旅に同行したい旨を願い出ている。

そうなれば、執務や食事の準備、身の回りの事など、やる人間が居ないのだ。方々の伝手を使い、かき集めた料理人やメイド、執事などの面接や技能の査定、教育の真っ最中であった。


式典を早々に抜け出したまどかが、屋敷に戻る。


「ジョーカー、どう?なんとか形になりそう?」


「まどかお嬢様、おかえりなさいませ。多少は出来るものもおりますが、やはり急場凌ぎで集めた者、出来ることなら、これらをまとめる筆頭となるものが居れば良いのですが、なかなか……」


「そうか……ジョーカーの眼鏡にかなう者となると、そうそう見つかるもんじゃ無いよな……」


「左様でございます。エミリオ様も王という御立場、賓客も来られるでしょう。その日程管理と接客くらい、こなせる者が相応しいかと。」


二人で思案していた時、勝手口で声がする。


「ごめんくださいませ。」

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