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H3-4



翌日、武王は近衛を率いて、魔女王の屋敷の探索を開始した。逃亡した司祭の手がかりを掴むためだ。

同じ頃シルバも、冒険者を連れて島の外周を探索している。クリシュナ達漁師ギルドも協力して、活性化した海獣の討伐や、司祭の行方を追う。

探索が一段落着いた武王が、まどかの屋敷にやって来た。だが目的はまどかではなく、エミリオだった。


「エミリオ、単刀直入に言うぞ。お前、この国の王になれ。」


「は?え?えぇっ!」


「此度の一件で、三王の体制は崩壊した。儂も一人で治めるには無理がある。歳も歳だからな。お前ならば竜王の子、言わば王子だ。竜王亡き後、王子であるお前が、王を継ぐのは当然であろうよ。」


「し、しかし……」


「エミリオ。私もそれがいいと思う。」


「まどか……」


「竜の王子にして、まどかという女神の加護を受けておる。民も歓迎するであろう。」


「武王、その事なんだが……」


「まどかよ、戦乙女という立場を隠したいのはわかる。だがここは一つ、民を安心させる為に、協力してくれぬか?」


「……めんどくせぇなぁ……わかったよ。その代わり、エミリオの面倒、ちゃんと見てくれるんだろうな?」


「任せておけ。悪いようにはせぬ。」


「エミリオ、王になったからって、何も特別な事はしなくていいんだ。エミリオが居る、その事が、島のみんなの心の支えなんだよ。な、エミリオ。この屋敷、エミリオにあげるから……」


「へ?」「えっ?」「はっ?」「えぇーっ!」


「ここならリュウジュもあるし、森の結界もある。エミリオもその方がいいだろ?」


「だって、それじゃまどか達は……」


「私達は冒険者だ。ずっとこの島に居るわけにはいかないんだ。使ってくれよ。まぁ、たまには遊びに来るから。な?」


「……わかった。僕も竜王の意志を継いで、この島を守るよ!」


「それじゃ、私は王の護衛にでも、雇って貰おうかな。」


話を聞いて入って来たのはシルバだった。


「護衛もなしじゃ、王としてもカッコがつかんだろ?私では不満か?」


「シルバ!不満だなんて……よろしくお願いします!」


それから、屋敷の門番をしていた兵士達を呼び寄せる。元は法王が送り込んだ者達だが、どうやら司祭に軽く洗脳されていただけで、普通の兵士だった。法王がいなくなり、身を預ける主君も無く途方に暮れ、とりあえず門番を続けていたらしい。

今後シルバが、心身共に鍛え上げる!という条件で、エミリオに仕えることを許した。その噂を耳にした放浪中の兵士達が、挙って仕官を願いに来たのだが、厳しい面接とシルバとの模擬戦に合格したものを採用した。


なにしろジョーカーの魔眼を使った面接と、容赦ないシルバの模擬戦である。間違いなく難関であっただろう。それでも100名を超える採用となった。

中には教会で金庫を預かっていた文官なども居る。まどかは蔵の味噌醤油の製造と販売を 文官達と杜氏に任せ、エミリオの屋敷の運営資金にすることを薦めた。


「後は自分達で上手くやるだろう。」


こうしてまどかは、竜王エミリオ誕生の基盤を作り上げた。それは同時に、まどか達MJ2の旅支度でもある……と、朧気ながらエミリオは気付いていた。


(だったら安心して出発出来るように、僕がしっかりしないと……)


決意を新たにするエミリオだった。

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