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箱に並べられた、二体の人形。
まるで柩に収められた屍人か木乃伊のように見える。木製のようだが、石のように硬質化している。確かに背格好は、まどかとメグミに近い。
一体の髪の色は濃い桜色、もう一体は深い青だ。共に優しい表情で、主人の帰りを待っているようだった。背中に蓋のような物があり、開けるとオルゴールになっているらしい。
「まどかお嬢様、御相談と申しますのが、以前魔界におりました時、わたくしに付き従う者がおりました。この人形を、その者達の依代に出来ないかと愚考致しております。」
「なるほどねぇ。いい考えだと思うよ。」
「では早速、呼び寄せても構いませんか?」
「あー、ちょっと待って。」
まどかは人形の背中を開ける。収納から魔晶石を取り出し、中に詰めてみた。
「うん。二個づつ入るな。これで蓋をして……よし。少しはマナの補充になるだろう。ジョーカー、いいよ。」
「これはこれは!貴重な魔晶石を ありがとうございます。では、参ります。」
ジョーカーが思念を飛ばす。魔族の位置を確認し、ゲートを開く。二つの光る球体が、螺旋を描きながらゲートから現れた。その球体を手に取り、二体の人形に翳す!吸い込まれるように人形に入ると、ゆっくりと馴染ませるように隅々にマナを流し込んだ。
人形は起き上がり、箱から出てくる。まだ馴染んで無いのか、動きがぎこちない。それでもまどかの前まで進むと、膝を着き頭を垂れた。
「まどかお嬢様、どうぞ名を授けて下さいませ。」
「え、急に言われてもなぁ……桜色……深い青……単純かもしれないけど……チェリーとコバルトで……どう?」
名を告げた瞬間、二体の人形は、古木の身体に血が通ったように肌艶が良くなって行く。魔晶石を核とし、体内のマナが安定する。頬に赤みが差し、髪がサラリと揺れる。動きがしなやかになり、服装はシワ一つ無い黒のメイド服だ。
「「まどかお嬢様、お呼び頂きましたこと、至高の喜びでございます。全身全霊全魔にて、お仕え致します。」」
「よ、よろしくね。えっと、こっちがメグミ、こっちがハンス。いやぁ、想像はしてたけど、やっぱりジョーカーが呼ぶとメイドさんになるよね。はは……」
「「よろしくお願い致します、メグミお嬢様、ハンス様。」」
「よろしくね!」
「よろしくっす!」
「「まどかお嬢様、なんなりとご指示を」」
「そ、そうだなぁ……あ!基本的な指示や普段の仕事のことは、ジョーカーに任せるよ。」
「「かしこまりました。御用のさいは、なんなりとお申し付け下さいませ。」」
それから二人は、ジョーカーと打ち合わせをしている。どうやら最初は、屋敷内の仕事を振り分けてるようだ。
「まどかお嬢様、旅の間はこの二名が、お屋敷の管理を行います。どうぞ、ご安心下さいませ。」
「なるほど。そのために召喚したのか。さすがだねジョーカー。」
「お褒めに預かり、光栄にございます。」
こうして、屋敷にメイドが二人増えた。桜色の髪のチェリーと青い髪のコバルト。新たな仲間が増え、ここからMJ2は、世界を股に掛ける冒険者パーティとなるのであった。たぶん……