H3-1
「おのれぇ!雑魚のクセにぃ!」
魔女王の姿が霞む。次の瞬間、クリシュナの前に魔女王の爪が迫る!
「ガキーン!」
爪がクリシュナの眼前でピタリと止まった。見ると魔女王の手を 三叉戟が止めている。
「どうやら我が槍の方が長かったようだな。」
魔女王の動きを武王が止めている。クリシュナは低い姿勢から魔女王の胸に槍を突き入れ、
「ライトニング!」
ゼロ距離で光弾を放つ!魔女王はまたも吹き飛ばされ、床を転げて倒れた。
「……そうか、そんなに死にたいか……妾にこの姿を取らせたこと、後悔するがよい。」
魔女王から溢れ出す膨大なマナ。やがてそれは、魔女王を中心に渦を巻き、黒いドレスになっていく。
「死装、闇の衣。」
それはまるで、喪服。ベールで顔を隠し、死人を送る衣装である。つまり魔女王がこの姿になったと言うことは、周囲の者を確実に死の世界へ送り出す……という事なのだ。
「最早お前達に与えられるのは、絶対の死じゃ。命乞いも無意味じゃぞ!」
まどかはスッと眼を細める……
「(めんどくせぇ……女神の言った通りになったか……)世の中に絶対は無い。見せたくは無かったが、これが私の役目らしいからな……」
まどかは魂に宿った聖なる炎を 最大限まで燃やす。身体から溢れ出る炎が渦を巻き、まどかを包み込む。
-魔女王邸突入の時、一瞬女神に呼ばれるまどか。始まりの場所とも言える何も無い空間に、お茶の香りが漂う。
「なんでこのタイミングなんだよ!」
「まぁまぁ、せっかく新茶が手に入ったんだし、お知らせもありますし……」
と、お茶(輪廻)の女神は、客用の茶器に新茶を注ぎ、煎餅を出した。
「ここには時間の流れもありませんから、ゆっくりお話しましょう?」
「みんな頑張ってるのに、自分だけ休憩みたいなの、気が引けるんだよ……」
「どちらにせよ、これから戦う相手は、あなたしか倒せませんよ。他の皆さんでは、手の打ちようがありません。そしてまどかさん、あなたの今の立場というものを 把握して貰わないと。」
「立場?」
「はい。ステータス上は、亜人と表記されていると思いますが、一応は私の意思で、こちらの世界へ送り出したのです。言わば、私の眷属ということですね。」
「お茶の眷属?」
「何回も言うけど、輪廻の女神だから!普通は女神の眷属って言う所でしょうが!」
「ごめんって。冗談だってばよ。」
「なんかもっと、崇めるとか、平伏すとか、ないのかな?」
「だって、眷属と言えば家族みたいなもんだろ?それほどの繋がりなら、腹割って話すじゃん。」
「違うような気もするけど……まぁいいでしょう。その眷属であるあなたが、聖なる力を宿した。ここが問題なんです。」
「どんな問題?」
「普通なら、眷属から修行を経て亜神になり、ようやく聖なる力を手に入れるのですが、あなたはその間をすっ飛ばしてしまった……と言えば分かりますか?」
「へ?神になったの?」
「それに準ずるもの……ですね。今のあなたの立場は、戦乙女というものです。よってあなたの嫌いな、義務が発生しました。悪しき魂を 輪廻の輪に還す事が、あなたの仕事です。」
「!生命を奪う……のか?」
「それが必要な魂であれば、そうするしかないですね。」




