H1-4
「あ、悪魔め!」
「おいおい、聖女の次は悪魔呼ばわりかよ……どいつもこいつも好き勝手呼びやがって……ってか、そっちもバンパイアだろうが!」
このやり取りにメグミはクスッと笑った。そして思う。やっぱりまどかはまどかだと。
ここでの戦闘が始まる前、一瞬だけまどかは動かなくなった。まるで心ここに在らずという感じで、メグミの呼びかけに答え無かったのだ。そのあとメグミが「大丈夫?」と尋ねると、
「ん?あぁ、お茶の女神に呼ばれてた。」
と、意味不明な答えが返ってきた。今思えば、その時からまどかの様子が変わった気がするが……
(何かの冗談だったのかな……ま、いっか。)
それ以上、メグミは考えるのをやめた。
「余裕ぶりやがって!」
再生を終えたバンパイアが飛び掛ってくる。まどかは右の鉤爪を躱すと、その腕を取り、左手で後頭部を掴んで顔面を地面に叩き付ける!そのまま押さえ付けた状態で、
「待って貰ってたんだ、お待たせしましたくらい言えないのか?この礼儀知らず。」
地にねじ伏せられ、少女に説教されるバンパイア。見ていた誰もが呆れる程のシュールな光景だった。
「やはり……お嬢様のお相手をするには、彼の者では些か力量不足のようですな。とは言え、まどかお嬢様の本気が、少しだけ垣間見えた気がしました。」
「「ジョーカー様、ずるいです。わたくし達も危うく見逃す所でしたわ。」」
見るとジョーカーに足を切り飛ばされたバンパイアが、再生も虚しくミンチ肉になっていた。
「まぁまぁ、これも修行ですよ。」
ジョーカーは威圧のこもった笑顔で答える。メイド達はフッとため息をつくと、それ以上は何も言わなかった。
「まどか、シンバが心配だ。早く乗り込むぞ!」
シルバの声にまどかは頷く。頭を押さえていた掌に気を込める。
「寸勁。」
地面に埋まっていたバンパイアの頭は、篭った衝撃音とともに爆ぜた。
負傷者の治療と、屋敷周辺の見張りの為に冒険者達を残し、まどか達は邸内に乗り込む。残りの戦力は不明だが、圧倒的な防御結界を見せた魔女王を なんとしても攻略しなければならない。
「どうしたもんかね……」
一人思考するまどかに、リンドーが声をかける。
「まどか君、君は錬金術師なのか?」
「はぁ?」
「大筒の魔道具、あれは君が作ったのだろ?なかなか興味深い。私の知らない所で、私と似たような道具を作る。しかも威力は桁が違う。悔しくもあるが、それよりも興味が勝ってしまったんじゃ。ちと見せてはくれぬか?」
「え?今?」
「もちろんじゃ。でないと気になって戦闘に集中出来ん。」
仕方なくハンスに言って筒を渡す。子供のように眼を輝かせながら、しばらく質問責めにあう。それが終わるとブツブツと独り言を始めた。生粋の技術屋と言った所か……
「なるほど、魔術を刻印とな。玉の方にも術を……連携させる事で……ふむふむ、マナを感知するタイムラグを利用するのか……発想は私と似ているが、より簡素化されておるの。難しい技術ではないが、組み合わせの妙じゃな。魔晶石で補っておるのか……なるほど。だからこのサイズなんじゃな。」
「リンドー、それしばらく預けるから、そろそろ集中して。膨大なマナの気配が近い。」
濃いマナの溢れる大きな扉の前で、気を引き締めるまどか達であった。
厄介な結界
って書こうとして、なんか一人ツボった深夜のテンション。
結果書きませんでした。
※誤字報告、ありがとうございました。




