A2-1
その足でまどかは、教会に向かった。
法王コクーンの神託によって国政を行っているこの国の、その教えを民に伝える教会。国民と教会は、密接であった。
報告を済ませ、帰ろうとするまどか達を、一人の神官が呼び止める。
「もしや貴女様は、まどか様というお名前ではございませんか?」
「ん?まどかは、私ですが、何か?」
「先日、法王様に神託が下されました。『その聖女、北の地より海を渡り、三賢人と共に悪しき魔王を討ち滅ぼす。この地に災厄訪れる時、聖女の導きにより災厄を退け、民は皆救われるであろう。聖女の名はまどか、黒き髪の乙女なり。』と。」
「は、はぁ?」
「なんか、ホントにまどかっぽいね。」
「そうっすよ。まどか様がこの国に来ること、法王様は知らないはずですから。」
「そ、そうだけど……」
「わたくしも、まどかお嬢様は聖女様ではないか?と、思うところがございます。」
「ジョーカーまで……そんなんじゃないよ……」
「だって、北から船に乗って来て、テンタクルズ倒しちゃったし。」
「そ!それはまことでございますか!間違いない!お会いしとうございました、聖女様。」
神官は跪き、まどかに祈りを捧げる。
(うーん……話が出来すぎてる……裏がありそうなんだけど、確かに法王が事前に知ってる筈がないんだよなぁ……とりあえず話に乗っかるか。調べてみよう……)
「しばらくこの国にお世話になります。法王様にも宜しくお伝えください。」
「おぉ!これぞ神のお導き、早速法王様にお伝え致します。」
「では、私達はこれで……」
多少引き留められたが、なんとか教会を出ることが出来た。四人はそそくさと買い物を済ませ、屋敷に戻った。
「聖女様と三賢人のお帰りっすよー!」
「ハンス、調子に乗るな!」
「だってまどか様ぁ、凄いじゃないっすかー。」
「本気にしてんの?」
「え?だって……」
「まどかお嬢様、何か引っかかるのですか?」
「あぁ。話が出来すぎてる。私達がこの島に来て三日だ。この間に何かの策がなされた……と思ってる。目的はわからないけど……」
「なるほど。わたくし、信じてしまいました。申し訳ございません。」
「いやいや、ホントに神託の可能性もあるんだよ。ただ一度調べて、間違いないか確認はしたい。」
「まどかは、心配性だなぁ。」
「そうかもね。でも鵜呑みには出来ない。」
「わかりました。俺が間違いないと証明するっす!」
「まぁ、真実がわかれば、どっちでもいいんだけど……」
「そうと決まれば、早速調査ね!」
「あぁ。明日から行動開始だ……と言っても、すぐに接触してくるかもな。招待しますとか、相談がありますとか……二日ほど様子見だ。」
「なんか……まどかが言うと、ホントにありそうなんだけど。」
「ではまどかお嬢様、その様子見の間で、御相談したいことがございます。よろしいでしょうか?」
「あぁ。いいよ。なに?」
「じつはお屋敷を見て回りました時、前の主の趣味なのでしょうか、人形を見つけまして、利用出来ないかと思案しております。」
「人形?」
「はい。お嬢様方の背格好に近く、中々精巧に出来ております。」
「なるほど……ちょっと見てみよう。何かイメージが湧くかもしれないし。」