ハザマドライブ1-1
美しい庭園であった広場は、瓦礫の残る更地になった。
エミリオのブレスが熱を感じ無かったように、まどかの術はバンパイアだけを消滅させたのだった。
「よし、乗り込むよ!」
「アハハハハ……ようやく倒したか。じゃがその程度では、妾の元までたどり着けぬぞ。」
ベランダで魔女王が嘲笑を上げた。そう。あの聖なる炎に煽られながら、傷一つ無いのだ。周りを固めるバンパイアも、涼しい顔をしている。
「ちっ!結界か……」
「お前ら如きの術が、原初のバンパイアに通用すると思ったか!」
「くっそがぁ!!姉上の仇!ライトニング!!」
クリシュナ渾身のマナを込めた光弾が、魔女王に向けて放たれる!
「おやおや、まだ解らぬのか?弟よ。」
魔女王は人差し指一本でピタリと止める。
「児戯じゃな。」
フッと息を吐くと、光弾は、倍する速度で跳ね返った!クリシュナは防御の暇さえ無く、直撃を受ける。
「ぐはあぁーーーーっっ!」
「クリシュナっ!!」
「弟よ。妾の眷族となれ。さすれば力を与えるぞ?で無ければ……殺す。」
「くっ……バンパイアふぜいが、姉上を騙るな。」
「不敬な!魔女王様、我らに殲滅の許可を!」
近習のバンパイアが片膝をつき、魔女王の言葉を待つ。
「ふむ。聖女と……竜の子は使えそうじゃの。生かして捕らえよ。後は好きにするがいい。」
近習のうち、五人が広場へ降り立つ。それぞれがランクCを超える強者であるようだ。
「メグミ、チェリー、コバルト、エミリオをお願い。」
五人のバンパイアに相対するのは、まどか、ジョーカー、シルバ、リンドー、ハンス。数こそ同じだが、実力は向こうが上だろう。
「ジョーカー、二人程足止め出来る?」
「はい。まどかお嬢様のご命令とあれば。ただ……」
「ただ?」
「うっかり殺してしまうかもしれません。御容赦頂けますでしょうか?」
「いいよ。たまには好きなだけ暴れるといい。」
「かしこまりました。」
ジョーカーはエストックを二本抜いた。普段使いの一本は、言わば相手の力量に合わせた予備の剣であった。そのジョーカーが、自分のマナに馴染ませた、正装備を抜いたのだ。まどかはそれを見て、ニヤリと笑った。
「「わたくし達はもう、出番はありませんね。」」
チェリーとコバルトは、その双剣の意味を知っているらしい。メグミは、ナイフ二刀流をジョーカーから習った経験から、双剣を構えるジョーカーに、心躍らせていた。
「やっと見れるのね……本気のジョーカーさん。」
-ジョーカーの台詞に、バンパイア達は面白くない。
「ナメるなよ。実力の差も見極められぬ愚か者が。身の程を知れ!」
短剣による連続の突き!常人には視認する事さえ困難な怒涛の攻撃を 身体の捻りだけで躱すジョーカー。
「これほどかよ。化物と思ったが、桁が違うな。」
シルバはジョーカーの動きに関心している。横にいたハンスは、
「シルバさん、アレ見えるっすか?」
「あ?あぁ。つくづく敵じゃ無くて良かったと思うぜ。あんなの見せられたら、俺も滾るじゃねぇか!」
シルバは槍を構え、気を纏わせる。そこに一人のバンパイアが立ちふさがった。
「お前の相手はオレだ。俺の剣技は、武王の剣に匹敵する。死ぬ気で来いよ。」
「ほう、武王の剣ね……悪いがお前の命、あと3分だ。」




