M4-4
何も無い空間にエミリオは居た。
ピンと張り詰めた空気の中、声の主が姿を現す。それは嘗ての記憶にある竜王の姿に似ている。だが漂うオーラと威厳は、竜王に倍するものであった。
『竜の神様?』
『ふはははは……我は精霊王。バハムートである。なるほどその魂、竜王に似ておるな。』
『ご存知なのですか?』
『我に連なる者であれば、全て知っておる。お前もな。』
『ぼ、僕の事も?』
『あぁ。皆を守る力が欲しいのであろう?授けてやろう。使いこなしてみよ。』
『!あ、ありがとうございますっ!』
『ただし、我欲に使えば身を滅ぼす力だ。魂を汚すでないぞ!』
『わかりました。必ず守ってみせます!』
『では行くが良い。力に溺れるで無いぞ。』
エミリオは、現実の世界に戻った。
(ふはははは……サラマンダーの子か。楽しみだ……メグミももう少しで……)
「……リオ?エミリオ?大丈夫?エミリオ?」
「……あ、あぁ……大丈夫だよメグミ。竜の神様に会った。僕に守る力を授けるって。メグミ、僕も戦う!」
エミリオの魂に応えるように、ウチからオーラが溢れてくる。やがてそれは凝縮し、エミリオの額に紋章を浮かび上がらせた。
「それは!王の紋章!」
「メグミ、僕が合図をしたら、みんなを避難させて。」
「え?えっ!う、うん。わかった。」
メグミはみんなにリンクする。
『みんな聞いて!私が矢を放ったら、全員避難して!』
『メグミ!わかった。ジョーカー、先に冒険者を避難させて。チェリーとコバルトは、リンドーとシルバを ジョーカーと私でハンスとクリシュナを転移させる。ジョーカーが冒険者達を避難させてる間は、デカ蝙蝠の注意を引くんだ。私も行く!』
『仰せのままに。』
『『かしこまりました。』』
『承知!』
エミリオは目を閉じ、気を練っている。メグミは矢を番え、集中力を高める。ジョーカーはバンパイアを蹴散らしつつ、冒険者の避難誘導をする。その間、他の者総出で蝙蝠巨人に攻撃を加え続けた。激しい攻防の後、静かにエミリオが目を開ける。
「行くよ。」
「エクスキュージョンアロー!」
すぐさま全員で転移する。蝙蝠巨人は、矢を放ったメグミに向かって飛ぶ。そこに並ぶエミリオが大きく息を吸った。
「聖焔の息吹!」
エミリオの吐く白い炎が、蝙蝠巨人を包む!その炎は熱を感じず、森が燃え上がることは無かった。それは浄化の炎。蝙蝠巨人は抵抗も許されず、翼の先端から、まるで鱗が剥がれ落ちるようにボロボロと崩れ、灰になって行く。
「これはこれは、ここまで濃い聖属性では、わたくし達は近付く事も出来ませんな。」
「「魂ごと浄化されてしまいます。」」
「まどか、メグミ、僕と手を繋いで!」
エミリオは二人に、聖なる炎を注入する。
「僕の力、受け取って。」
まどかとメグミの魂に、聖なる炎が灯る。
「二人なら、聖なる力、使えると思う……ちょっと僕……いきなり使い過ぎた……」
エミリオはそう言い残し、目眩と共にその場に倒れた。
「「エミリオ!」ハンス、エミリオを頼む!」
「聖樹複合、茨の聖牢!」
広場を取り囲むように聖属性の茨が渦巻く。次第にその範囲を狭めて行き、バンパイア達を閉じ込める牢獄となる。それを見たまどかは、両手を天に翳す。某アニメの元気を集めた玉のように、聖なる炎が凝縮していく。そのまま上空高く舞い上がり、牢獄に向かって投げ下ろした!
「彗星大撃弾!」




