M4-3
まどかは戦いつつ、戦況を見ている。
組ませたパーティは、概ね力を引き出せていると言えよう。それでも頭数的に、ようやく同数になったくらいだった。しかも残っているバンパイアは、かなりレベルが高い。ここからが正念場であろう。
「なかなかやるではないか。少し遊んでやるか……」
魔女王は術を発動した。広場全体を覆う程の魔法陣、バンパイアの残骸や塵芥が寄り集まる。
練り合わされるように一つになる。
「我が眷族共よ、外敵を滅し契約を果たせ!」
その声を聞き、バンパイアの残骸だったモノは両翼15mの巨大な人化した蝙蝠になった。擬人化萌え系なら良かったんだけど、上半身は完全な蝙蝠、萌え要素は一つも無かった。
「ほう、的がデカくなりおった。エターナルブリザード。」
リンドーの術に蝙蝠巨人は翼を一振りし、吹雪を無効化する。蝙蝠の顔なのに、ニヤリとドヤ顔をしたように見えた。
「小癪な……ブツブツ……」
また考察モードになるリンドー。シルバは警戒しつつも呆れている。
「私のターンだ、ライトニング!」
クリシュナの放つ光弾を 蝙蝠巨人は超音波障壁で無効化する。
「ならば直接!」
クリシュナが高速の突きを放つ!が、これも障壁に阻まれた。
「厄介な……」
そのクリシュナの背後から飛び出す二人の影。
「「参ります。」」
メイド二人の波状攻撃!短距離転移を織り交ぜ、漆黒の武器を叩き付ける!障壁が間に合わず、多少のダメージが通り始めた!クリシュナもそこに参戦する。怒りの表情になる蝙蝠巨人。
「いただきます。」
チェリーが首を刈り取る!蝙蝠巨人は翼を激しくばたつかせ、風を起こして三人を吹き飛ばしたが、徐々に動きが止まり、完全に沈黙した。
「やったのか?」
クリシュナがフラグを立てる。(本人にはそのつもりは一切ないのだけれど……)
首の切断面が蠢く。異常な細胞分裂を繰り返すようにそれは膨らみ続け、やがて頭の形に纏まった。しかも三つに。
再度三人は攻撃を仕掛けるが、三つの頭でそれぞれ障壁を張るため、突破が出来ない。三人は一旦距離をとった。
-エミリオは戦況を見つめ、一人悩んでいた。
(僕はなぜ、ここにいるの?まどかに助けを求めて、まどかは応えてくれた。今もまどか達は戦っている。僕にとって、親の仇とも言える者達と。なのに僕は守られて、ただ見てるだけ……きっとまどかも、僕一人で留守番なんてさせられないと思ったんだ……僕は弱いから、一人で戦えないから……竜王の血を引いているのに……
僕に力があれば、留守番だって出来たし……いいや、まどかと一緒に戦う事だって……)
『……竜王の子よ。なにゆえ力を欲する……』
『誰?』
『なにゆえ力を欲する?』
『僕は……僕は王の子だ。王族には民を守る義務がある!』
『ふはははは……民など残ってはいないではないか!』
『そ、それは……それでも、目の前で戦ってる人がいる。傷ついてる人がいる。自国の民はもう居ないけど、せめて、せめて目の前で苦しむ人を助けたい!守られるだけじゃ嫌なんだ!僕にだって、守らせて欲しい!』
『ふっ、良かろう。メグミよ、聞こえるか。竜の子に紋章を翳すのだ。』
『!あ、貴方は……わかりました。』
メグミは水晶を取り出し、エミリオの目の前に翳した。




