M4-2
ハンスとジョーカーに作らせたのは、筒の大きさに合わせた炸裂弾だった。
二重の紙の球を作り、外周に銀の礫、中に火薬を詰める。火薬の中央に火魔術の印を仕込み、筒から発射する時のマナを感知し、数秒後に爆発する仕掛けである。爆風と銀の礫を浴びたバンパイア達は、その四分の一以上の数を減らした。
「行くぞーっ!」
冒険者達が一斉になだれ込む。浮き足立っているバンパイアを一気に攻めた。序盤は圧す事が出来たが、徐々に落ち着きを取り戻したバンパイアは、数にものを言わせ、冒険者達を取り囲む。冒険者達は互いの背を庇い、目の前の敵に集中する。ここに来て、膠着状態になった。
冒険者の剣を躱したバンパイアが、巨大な蝙蝠となり上空から攻撃する。陣形の乱れをついて、他のバンパイアが斬り込む。上下で攻められた冒険者に、少なくない負傷者が出る。
すると……突然蝙蝠が声を上げて堕ちてくる!銀の鏃の矢に撃ち抜かれていた。
「援護します!」
メグミが後方から連続で矢を射掛けた!その傍らでジョーカーが、
「ここはわたくしがお守りします。貴女達は行きなさい。」
「「かしこまりました。」」
チェリーとコバルトが参戦する。。二人は獰猛な笑みを浮かべ、一気に戦闘の中心に降り立った。
「お許しが出ましたので、少し暴れたいと思います。冒険者の皆様、巻き込まれないようにご注意ください。」
と、コバルトが一礼する。続けてチェリーが、
「わたくしの大鎌は、魂を刈り取ります。バンパイアの皆様、復活は出来ませんのでご注意ください。」
その一角で二人による蹂躙が始まった。
クリシュナ、ハンス組は、ハンスが相手の隙を作り、クリシュナがトドメを刺す。
「うぉぉーっ!ライトニング!」
二叉の槍から放たれる、聖なる光弾に触れたバンパイアは、白い炎に包まれ、為すすべも無く灰と化していった。マナの消費を抑えつつ、時には直接攻撃で、ここぞという時には光弾を放つ。ハンスとも良い連携が取れている。苦戦らしい苦戦は無かった。
シルバ、リンドー組。この一角は戦闘と言うより、公開実験だった。リンドーが一つ魔道具を使う度に、その効果を確かめ、自分の計算と比較する。時折ブツブツとその場で考え込んでしまうので、隙だらけである。その間シルバは大忙しであった。リンドーを守り、襲い来るバンパイアを斬り倒す。運悪くリンドーの邪魔をしてしまうと、戦闘中でも怒り、説教したり、逆に拗ねたり、非常に扱い辛かった。
「よし、次の実験じゃ。」
リンドーは持っていた杖の関節を折り曲げ、バラして繋ぎ直し、雪の結晶のような形に組み上げた。
「光属性付与の氷雪魔術ならどうじゃ?エターナルブリザード。」
地面と上空に、魔法陣が描かれる。その間に風雪が吹き荒れ、光が乱反射した!バンパイアは氷像と化し、ピキピキと音を立て粉々に砕ける。効果は絶大だが、数名の冒険者が巻き込まれ、身体が凍りついてしまった。
「ふむ。まずまずじゃの。マナの消費対効果も申し分無い。」
「リンドー、冒険者を巻き込むな!大事な戦力だぞ!」
「逃げ遅れるウスノロなど知らんわい。」
「くっ!身勝手な……」
シルバの怒りなど、リンドーには届かないようだった。




