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M3-2



仲間の死に、眉一つ動かさない繋ぎの男。


「ほう。そっちのメイドは、人ではないのか。面白い。報告せねばな。」


その言葉をきっかけに、男達はハンスとコバルトに、それぞれ二人がかりでしがみつく。繋ぎの男にとっては、他の者達は使い捨ての手駒に過ぎないのだろう。その足止めの隙に、繋ぎの男は逃亡を開始した。


『チェリー、こちらへ!』


コバルトがリンクで呼び出す。コバルトを探知し、チェリーが転移で現れると、


「追って。」


コバルトは短く言う。一つ頷き、繋ぎの男を追うチェリー。男は懐から武器を取り出し、チェリーに向けた。


「抗魔弾!」


魔鋼製の細い筒から、無音で放たれる銃弾のようなもの。拳銃を簡素化したような造りの魔法武器から打ち出された弾は、チェリーの脚を撃ち、体内で術を発動する。マナの流れを阻害されたチェリーは、その場で動けなくなってしまった。

男は武器を懐にしまいながら、その場を走り去る。


「「チェリー!!」」


コバルトは短距離転移でチェリーの元へ飛ぶ。追って来た男が飛び掛ると、無造作に頭を片手で掴み、そのまま地面へ。グシャリと叩きつけると、もう片方の手で別の男の横っ面を叩いた。

叩かれた男の頭部は引きちぎれ、壁にぶつかり赤いシミを作った。


ハンスは身体を捻り、一人を頭突きと肘打ちで剥がす。そのまま後ろに飛び、背中に取り付いた男を壁に打ち付けると、ようやく捕縛から逃れる。収納からロープを取り出し、素早く男達を縛り上げた。


「コバルトさん、チェリーさんが心配なのはわかるっすけど、皆殺しは良くないっすよ。」


「心配?誰をですか?」


コバルトは首を傾げる。すぐにチェリーに向き直すと、


「それよりチェリー、油断しましたね。まどかお嬢様のメイドとして、少々迂闊すぎるのではありませんか?その程度の術、自力で解除なさい。」


「え?説教っすか?」


「いいえコバルト。わたくしはワザと受けたのです。見慣れぬ武器でしたので、体内に残してお嬢様方の対策にお役立て頂こうかと思いまして。解除も問題ありませんわ。」


「そうですか。考えがお有りでしたら、賊を取り逃した件は不問にします。そちらの方がお嬢様のお役に立てると判断したのでしょう?」


「そうですわ。わたくし達は、お嬢様方をお守りするのが務めですもの。」


「いいでしょう。では、ハンス様が捕らえられた者を連れて、屋敷に戻ることにしましょう。」


呆気に取られるハンス。仲間を撃たれて怒ったのかと思ったら、繋ぎの男を逃がしたチェリーに怒っていたとは……

いや、あの程度では死なないという信用の裏返しなのか?チェリーも強がりで言っているわけではないようだし……ハンスの想像を超える二人に、ただ口を開けて見てるしかなかった。


「ハンス様、チェリーの失態と思い、つい勢いで殺してしまった事、ご指摘下さりありがとうございます。わたくしもまだまだですね。心のコントロールを出来るよう、一層精進致しますわ。」


優雅に一礼すると、コバルトは二人の男を担ぎ、丘の屋敷へと転移した。チェリーも何事も無かったかのように、ハンスを連れて転移するのだった。

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