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M2-4



リンドーは一つ咳払いをする。

それから大学の講師のように語りだした。


「原初の術に限らず、魔術に対して絶対的な耐性のある種族がある。それは竜種じゃ。竜種は生まれ持った特殊なマナによって、全ての術に干渉する事が出来、その全てを無効化することが出来るのじゃ。」


「なるほど。」


「この特殊なマナは、下等な竜種や亜種になると、その効果は薄れてしまう。言い換えれば、このマナをどれだけ受け継いでいるのか?が、竜種の優劣を左右しておる。つまりじゃ、原初の術を無効化するほどの竜のマナは、竜種の頂点と言うべきドラゴンのマナ、じゃろうな。」


「それがあれば防げると?」


「可能じゃな。竜種のマナは、その血に濃く表れる。仮に人が竜の血を浴びれば、人種を超越したスキルが身に付くと言われるほどじゃ。私が、材料があれば……と言うたのは、その最上位の竜の血じゃよ。まぁ、今となっては入手不可能であろうよ。代わりになる物など、存在はせんじゃろ。」


「代わりになりそうな物なら、用意出来るんだけど……やっぱり無理なのかな?竜王のマナを宿しているみたいなんだけど……無理ならしょうがないか……」


「待て、竜王のマナじゃと?その話、詳しく聞かせるのじゃ。」


まどかはハンスが持ち帰ったリュウジュの飲み物や、樹皮の欠片の話をする。樹皮に関しては、エミリオの大切な物だから渡せないが、少し削って研究するのは構わないと言った。

一応、エミリオの素性は隠した。言えば絶対、血が欲しい!と、言うだろうし、下手すれば人体実験やら解剖やら、玩具にされるのが目に見えている。


「……でも、代用品じゃ原初の術を無効化する薬なんか作れないですよね……残念ですが……」


「君、私を誰だと思っておる!この国の最高錬金術師にして、叡智の結晶じゃぞ。そこまでの材料があるのなら、私に出来ぬ筈が無いではないか。」


「え、でも……そんなに量は無いですよ?」


まどかは瓶を取り出す。以前ハンスが持ち帰ったリュウジュの飲み物だ。


「まどか、それは!」


「はい。三王会食のおり、ハンスが手土産に持ち帰った物です。これのおかげで、我々は一度、司祭に操られた事がありました。あの者が使う竜使いの魔笛に、このリュウジュのマナが反応し、操る事が出来ると判明したのです。」


「では、儂もその可能性があるのだな……」


「おそらく、三王の言葉によって、町の人々の心に、何かしらの誘導、或いは洗脳の状態を齎したのではないかと思われます。」


「君、今竜使いの魔笛と言ったか?あれは私の最高傑作じゃぞ!武王の海竜討伐のおり、私が作った物じゃ!」


「そう言えばあの後、儂の手元から消えておる。いったいいつの間に……」


「聞き捨てならん!私の最高傑作を 人心を誑かす道具にするとは……よし、その瓶は私が預かる!薬を作る代わりに、私を同行させるのじゃ!魔笛を取り返してくれる!」


「え!それは……ちょっと……」


「まどかよ、リンドーは儂とは別の意味で強いぞ!足でまといにはなるまい。連れて行ってやれ。」


「武王がそこまで言うのなら……わかりました。」


こうしてリンドーの同行が決まった。本人のやる気に充ちた表情が、かえって不安になるまどかだった。

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