M1-4
焼きイカとイカそうめん。港は大賑わいだ!シルバが酒を用意したものだから、大宴会になってしまった。どうやらイカそうめんにハマったらしい。料理の得意な冒険者に焼くのを任せて、まどかは一息ついた。
「まどかよ、どうやらお前の強さの秘密は、食欲のようだな!ガハハハハ!」
「まぁ、否定はしないよ。しかし……よくある事なの?こんな大型の海獣が港に来るなんて……」
「いや、ワシの知る限りじゃ初めてだ。やはりお前も疑問に思うか。」
「結界が機能していなかった……イヤな予感がする。武王とシルバはここを頼む。何があるかわかんない。飲みすぎ無いように。あと、エミリオも預かってくれないか?私達は一度、サキュバスの所へ行く。」
「わかった。お前の勘は当たるからな。ここは任せろ。」
「念の為、ジョーカーを置いて行く。ジョーカー、もしもの時はみんなを守れ。」
「かしこまりました。いってらっしゃいませ。」
「行ってくる。みんなも気を付けて。」
まどか達は一気に空間転移で飛んだ。
-魔女王邸、円卓の間。
リュウジュの実を啜る魔女王を眷族の魔導師が囲んでいる。魔女王の傍らには、司祭がいた。
「ご苦労であった。で、首尾はどうだ?」
「多少の修正はございましたが、概ね計画通りでごさいます。」
「そうか。だがサキュバスはお前の親であろう?良かったのか?」
「魔女王様、それは些か意地悪な問いでごさいますな。眷族となり、不死の力を得た私には、巣に篭もりっぱなしのサキュバスなど、邪魔者でしかありません。」
「お前も恐ろしい奴よのう。だが、これで邪魔者は居なくなった。島の民も、お前の洗脳が効いておる。後は武王を捕え我がものとし、ギルドを黙らせる。そして聖女に子を産ませ、バンパイアの楽園を作ろうぞ!」
「仰せのままに。」
司祭は恭しく頭をさげた。
-「遅かったか……」
リュウジュの洞窟。そこには、余りにも不自然な光景が広がっていた。
争った形跡がほとんど無い。その中にあって、多人数で何度も刺されたようなサキュバスの亡骸が横たわっていた。竜王でさえ窮地に追い込む力を持つサキュバスが、こんなにも一方的に傷を受けるなど、考えられる事ではない。洞窟の中央には、輝きを失ったリュウジュが切り倒されていた。実は全てむしり取られ、鱗のような樹皮は剥げ落ちている。
「司祭が、居ないな……」
気配を探っても、誰も居る様子がない。まどかは、僅かに残る輝きを失っていない樹皮を手に取り、そっと収納に入れた。
(竜王、エミリオは私が引き取る。せめて安らかに……)
すると、突然洞窟が揺れだした。岩肌が崩れる。まどか達は洞窟から避難し、様子を見守る。崩落で洞窟は塞がり、竜王とサキュバスは、永遠の眠りについた。
まどかはジョーカーとリンクする。
『武王達を連れて屋敷に戻って。私達も戻る。』
『かしこまりました。』
サキュバスはおそらく、魔笛で動きを止められ、多人数で切り刻まれたのだろう。まどかはクラーケン討伐に向かう前、司祭に違和感を感じていた。ただそれが何なのか、考える暇がなかったのだ。
(サキュバスを屠るつもりだったとは……)
その目論見に気付けなかった自分に、悔しさを噛み締めるまどかだった。




