M1-3
まどかは、クラーケンの全身が浮き上がるのを見計らって魔術を放つ。
「氷結!」
湾内を凍らせ、クラーケンの動きを封じる。氷に接種する部分が、赤褐色になった。
「みんな!手伝って!コバルトが打撃を与えた所に銛を打ち込んで!」
漁師達が銛を構える。コバルトはスコーピオンテイルを振り回し、連続で打撃を与えていった。
「今だ!」
漁師達は銛を打ち込み、銛に繋がれた縄をしっかりと握る。
「メグミ!」
メグミはクラーケンの周りの小船を媒介に、茨を絡め、蔦を延ばしてクラーケンをホールドした。
「引きずりあげろ!」
地引網漁の如く、全員で縄を引く。漁師も冒険者も、号令に合わせて縄を引く手に力を込めた。
「もう少しだ!引けぇ!!」
ズルズルと、氷上を滑るようにクラーケンを引き上げる。全身が引きずり上げられた時、
「チェリー、行くよ!」
まどかがクラーケンにラッシュをかける。連続で打撃を与えた後から、チェリーがデスサイズを振るい斬り裂いて行く。クラーケンの目がギロリと動き、足を振り回す。
「させないわ!」
メグミが茨を延ばし、クラーケンの足を縛り付けて行く。うにょうにょと藻掻くクラーケン。
「ハンス、コバルト!」
コバルトの鉄球が、クラーケンの両眼の間を打つ。そこにハンスが飛び込み、
「とどめっす!」
金属製の筒から槍の穂先を振り出し、クラーケンの目の間に突き刺した!
「浅い!」
まどかは一瞬焦るが、ハンスが飛び退いた所へ、コバルトの鉄球が降る!
「ドバァーン!!」
ハンスの手槍は、コバルトの鉄球でクラーケンを撃ち抜いた!蠢いていた足も、次第に動きを止めていく。体表に浮かんでいた赤褐色の模様が消え、完全に動きを止めた。
「大漁だ!」
「「うぉーーーっっ!!!!」」
漁師も冒険者も、その場にいるみんなが歓声を上げる。ハイタッチし、抱き合い、それぞれがクラーケン討伐を実感した。
『ジョーカー、聞こえる?』
『まどかお嬢様、いかがされました?』
『エミリオを連れて、港まで来て。イカパーティだ!』
『かしこまりました。』
ジョーカーが転移で港に来ると、周りは既にお祭り騒ぎだった。
「まどかお嬢様、凄い騒ぎですな。」
「来たか。クラーケンを解体して、みんなで食べよう!」
「なんと!かしこまりました。あ、そう言えばお嬢様、蔵の杜氏より絞りたての醤油を預かって参りました。味をみて下さいませ。」
「なんてタイミングだよ!どれどれ……うむ……少し甘めか……旨みも申し分無し。合格だ!」
まどかは満面の笑みでクラーケンの解体を始める。醤油が出来て、イカがあって、といえばアレだろう。まどかの指示を聞き、ジョーカーが調理に入る。薄く削いだ身を細く切っていく。その一方では格子状に切れ目を入れ、串に刺していった。まどかは蜂蜜酒と醤油を混ぜ、串刺しの身に塗りながら焼いた。香ばしい匂いが辺りに漂う。武王がまどかに声をかけた。
「この匂いは堪らんぞ!何を作っておるのだ!」
「焼きイカだよ。一つ焼けたから、食べてみる?」
武王はまどかの言葉を聞き終わる前に、串に手を伸ばしていた。豪快にがぶりと噛み付く。
「なんじゃこりゃ!美味いぞ!!」
「みんなも食べなよ!大漁祭りだ!」




