MJ2フェスティバル1-1
「あ、あれは!」
漁師の一人が指をさす。海獣の背に並び立つ二人。凶大な武器を担ぐメイドの異様さたるや、ミスマッチどころの話では無い。所作の美しさに、技の残虐さ、美しく恐ろしいこの娘達は、以前漁師ギルドで、クリシュナの銛を叩き落とした、あのメイドだった。
「これ程の差があったとは……お前ら!海の男の意地だ!一匹くらい仕留めて見せろ!」
「「おぉーっっ!!!」」
クリシュナは思う。もはや人の域を超えている。このような者達が付き従うまどかという娘は、この二人より更に強いに違いない。海の魔王を倒したという噂は、本当の話だろうと。そして、その強者がバンパイア討伐を止めた理由は、自分達の実力不足であると。
(敵討ちなどと逸っていたが、気持ちだけでは倒せない。強くならなければ……)
「ぬおぉぉーーーっっ!!!!」
クリシュナは渾身の力を込め、銛を投げる!風切り音を鳴らし、アスピドケロンの一体の目に突き刺さった。
身を捩り暴れるアスピドケロン。銛に結んだ縄を握り締め、頭にしがみつくクリシュナ。そこへ、
「その気骨、見事である!うぉりゃぁーっ!」
アスピドケロンの、もう一方の目に突き刺さる三叉の槍。クリシュナを抱え、船へと飛び移る男……武王シンバ、その人であった。
「見ておれ。」
両の手を天に向けて突き出す武王。
「ボルテッカー!」
にわかにかき曇る空、小型の雷雲がアスピドケロンの頭上に湧き、一条の雷が武王の槍へと落とされた!アスピドケロンの眼玉は、水分が沸騰し、その圧力で弾け飛んだ!
武王は再びアスピドケロンの頭に飛び移ると、槍を手に上空へと跳ね上がる。
「喰らえ!海王三叉戟!」
水の渦をまとい、アスピドケロンへと放たれた槍は、頭を穿ち、海中まで突き抜けた!アスピドケロンは、少しの痙攣の後に動かなくなった。
船へと降り立つ武王。その手へ槍が飛び戻る。
「この槍は持ち主を選ぶのだ。そしてどこに居ても、持ち主に戻ってくる。クリシュナよ、お前も選ばれる男になれ!」
武王と共にやって来た冒険者達も、次々と海獣の群れに突進している。その姿にクリシュナは奮い立った。
「武王様!このクリシュナ、男になって見せます!」
「はっはっはっ!良いな!ワシも滾るわ!よし!ワシが以前使っていた槍をやろう。使いこなして見せよ!」
それは二叉の槍に、宝珠を埋め込んだような装飾があった。
「光の神の加護を受けた槍だ。必ずや闇を討ち滅ぼすであろう。」
クリシュナは涙を滲ませ武王に感謝した。
「ありがとう……ございますっ!」
クリシュナは槍を手にすると、マナを込めた。すると槍は光を放ち、クリシュナを包む。槍の意思が伝わってくる不思議な感覚。この槍をどう使えばいいのか、脳に直接響いてくる……クリシュナは船から跳躍し、近くのアスピドケロンへ穂先を向ける。
「ライトニング!」
二叉の穂先の間に、光が集まってくる。やがてそれは一つの光弾となり、アスピドケロンへと放たれる!
それは高熱のレーザーのように、硬い鱗をものともせず、その身を撃ち抜いた。
「ほう。そいつもお前を認めたようだな!クリシュナよ、存分に暴れるがよい!」
ストックが切れそう…




