S4-4
冒険者ギルドは活気を取り戻した。
まどかが武王とシルバを連れ、その姿を見せたからだ。結界の正常化まで、海獣討伐を請け負ったとステラに告げられ、その準備にかかっていた所に武王救出の知らせ、冒険者の士気はうなぎのぼりだった。
「大変だ!港に海獣が!」
「「なんだと!」」
「やはり結界は当てにならないか……それで数は?」
「数は十数頭なのですが、それを追って更なる大海獣が……」
「連鎖か!してその大海獣は?」
「クラーケンです!」
「なんと!クラーケンとなると、並の冒険者では歯が立たぬ。まどか!頼めるか?」
「わかった。引き受けよう。(タコの次はイカか……)」
「よし!下位の冒険者は住民の避難だ!ステラが指揮を執れ!ランクD以上で海獣討伐に向かう!指揮はこの武王が執る。シルバも働いて貰うぞ!者共、参る!!」
「「「うぉぉーーっっ!!!」」」
『みんな、聞こえる?』
『まどかお嬢様。いかが致しました?』
『港でイカが暴れているらしい。チェリーとコバルトは港に、ハンスとメグミは、住民の避難を手伝って欲しい。ジョーカーは、屋敷を頼む。』
『心得ました。』
『『御心のままに。』』
『承知!』
『わかったわまどか!』
『MJ2、行くよ!』
まどかはいち早く転移で港へ飛んだ。そこにメイドの二人が合流する。
「二人の強さ、まだ見たこと無かったからね。見せてくれる?」
「「御心のままに。」」
港でのたうち回る海獣達。小さめのクジラ程のサイズで亀のような形、だが甲羅は無く、硬い鱗に被われている。頭は獰猛な深海魚のようで、鋭い歯はひと噛みで人間くらいは食いちぎるだろう。アスピドケロンというヤツらしい。
漁師ギルドのみんなが、銛を手に戦っている。その先頭にはクリシュナの姿もあった。
「チェリー、コバルト、手伝ってやれ。死ぬなよ。」
「「かしこまりました!」」
二人は歓喜していた。時折ジョーカーに聞かされてきた、まどかの「死ぬなよ」という言葉の意味。人形である二人にも、その言葉をかけてくれる主。しかも新たな能力を授けてくれた。
それは仲間としての信頼、絆。それを裏切る事は、償えぬ罪である。今まで死というものを軽んじてきた魔族の二人が、初めて死を恐れ、死なぬ方法を考える。そして導き出された答えは……
『『強くなること。敵対者より強ければ、死なずに済む。そしてこれからも、主に仕えることが出来る!』』
二人は黒いオーラを放ち、武器を形作った。
「行きましょうコバルト。まどかお嬢様がご覧になっています。」
「ですわねチェリー。無様は晒せません。」
上空に転移したコバルト。スコーピオンテイルの三つの星を、一体のアスピドケロンに叩き付ける!背中の鱗を突き破り、深く埋まり込む棘付きの鉄球。身体をくの字に曲げアスピドケロンは口から水弾を放つ。
するとコバルトの前にチェリーが転移する。デスサイズを一振りし、水弾を左右に両断すると、そのままアスピドケロンへと落下し、回転の勢いを付けて首を切り落とした。
動きを止めたアスピドケロンの背中に着地する二人。
「あまり手応えがありませんわね。チェリー。」
「油断は禁物ですわ。コバルト。さっさと片付けましょう。」




