A1-3
翌日。
まどか達は代金を受け取り、街を見て回ることにした。港町は活気に満ち溢れている。歩いているだけで元気になる。元の世界で河岸に出入りしていたので、どこか懐かしい気分にもなった。
「いい街だなぁ……こんな街に住みたいなぁ……」
まどかの何気ないつぶやきに、三人は驚いた。
「まどか!旅はどうするの?」
「そうっすよ!世界を見て回るんでしょ?」
「ふむ。まどかお嬢様が、そうなさりたいと仰るのであれば……」
「え?あ、いや、世界は回るよ。回るけど、最後にまたここに来て、のんびり暮らせたらいいなぁ……って、そういう話しだよ。」
「なんだ、びっくりさせないでよ。でもいいかもね、こういう所に住むのも。」
「お、俺は、構わないっすよ。(この街で新婚生活かぁ……)」
「ハンス!またなんか変な妄想してない?」
「え!いや、してないっす……」
「まどかお嬢様、別荘としてお考えでしたら、良い街だと思われます。」
「別荘ねぇ……いいかもな!買っちゃうか!」
「まどか、突然過ぎる!」
「い、いいっすね!(新居購入)」
「まどかお嬢様は、決断がお早い!」
四人の会話に聞き耳を立てていた男が、話しかけてくる。身なりはジョーカーの劣化版といった感じだ。
「あの……突然の不躾申し訳ございませんが、宜しければ、うちのお屋敷を 買っていただけませんか?」
「「「はぁ?」」」
「わたくし、決して怪しい者ではございません。さるお屋敷にご奉公させて頂いております。執事のメイと申します。」
「その執事さんが、何故?」
「当家の主は、身寄りのない、元貴族のご子息でございました。戦乱の折り、この島の別荘へ主とわたくしだけで逃がされたのです。やがて敗戦、お父上は身罷られ、領地は没収。主一人、取り残されたのです。」
「まぁ、この時代、ある話しなのかな……」
「その主も、先月病にて逝かれました。わたくしは主無きお屋敷にて、途方に暮れておる次第でございます。」
「私がそこを買ったら、どうするつもりなの?」
「わたくしも、やっと暇をいただけます。」
「そうか。その屋敷、見せて貰ってもいい?」
「ちょっとまどか、怪しいって。」
「まぁまぁ、考えがある。ジョーカー、見極めて。」
「かしこまりました。」
四人はメイに連れられて、丘の上の屋敷へやって来た。
『まどかお嬢様、今のところ、怪しい気配はございません。』
『そうか。』
まどかとジョーカーは、思念リンクで確認している。
「よく手入れをされている。」
「はい。わたくしの仕事でございますので。」
『ジョーカーの執事の嗜み……みたいなものかな。』
『左様でございますな。この仕事ぶりを見ましても、誠実な者だと思われます。』
『わかった。』
「それで、いくらで売りたい?」
「金貨500枚でいかがでしょうか?それだけあれば、何か商売でも始められると思うのですが。」
「そうか。商売始めたら、教えてよ。客として行くから。」
「では!」
「うん。500枚。」
まどかは収納から、金貨を出して渡した。
「ありがとうございます!この御恩、生涯忘れるものではございません!」
こうして、まどかは家を衝動買いしたのであった。言わば初めての、秘密では無い基地である。