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S3-2



男達の怒涛の攻撃が始まった。

まどかは突いてきた銛を掴み引く。体を崩し、飛んで来る男の腹を銛の底で突く。

次の銛を掴み男を蹴り飛ばすと、その銛で二人の男を薙ぐ。足元に来た銛を踏み付け、その柄を駆け登るようにして顔に膝を入れた。

50人ほど居た屈強な男達は、開始10分でほとんどが倒れ伏している。その間、まどかは魔術を一切使わず、体術だけで倒したのだった。


「ぜぇ、ぜぇ、」「はぁ、はぁ、」


「うぐっ……」「いててて……」


「ば、ばかな!」


まどかは、一つ溜め息を吐いて、


「はぁ……本気で来てよ。ほら、立って。」


「ハッハッハッハー!さすがだなまどか。テンタクルズを狩っただけのことはある!いやぁ見事だ!」


シルバの言葉にギルドが凍り付いた。商船の船乗り達が噂していた、リヴァイアサンの生まれ変わり、海の魔王を喰らう者、その人物が今、目の前に居る少女だとは思いもしなかった。


「あぁ、あのタコね。美味しかったよ。まだ残ってるけど、食べる?」


そう言ってまどかは、収納から皿を取り出す。タコパで余った小間切れに、小麦粉をはたいて油で揚げた物を収納に入れていたのだ。塩を振り、柑橘系の果物を絞ってシルバに渡した。


「ほう、これがテンタクルズか!うむ!美味い!」


ジョーカーがテーブルセッティングをし、チェリーとコバルトがお茶を出す。殺伐としたギルド内で、そのテーブルだけが寛いでいた。なんとも異様な光景である。

ただ一人怒りに震えるクリシュナは、壁に掛けてあった銛を掴む。穂先から柄の部分まで全てが鉄製の、海獣を仕留める用の特別な銛だ。クリシュナは、身体をバネのようにしならせ、まどか達のテーブルに向けて全力で放った!


「ガギーン!!」


クリシュナの放った銛は、テーブルの手前で撃ち落とされている。その側には、青い髪のメイドが、棘の付いた鉄球を振り回し立っている。

桜色の髪のメイドが並び立ち、漆黒の大鎌を抱えてクリシュナを見た。


「「マナーが悪いですよ。」」


側で見ていたメグミとハンスが、


「あの二人、俺達より強いんじゃないっすか?」


「そうかも、ね。はは……」


と、乾いた笑いを上げていると、


「「メイドの嗜みでございます。」」


と、二人は頭を下げた。呆然としているクリシュナの腕を掴み、ジョーカーが椅子に座らせると、香りの良いお茶を出した。


「では、お話を伺いましょうか。」


ようやく観念したのか、クリシュナは、お茶を飲み、大きく息を吐く。


「この一件、俺がやらなきゃならない事情がある。あんたらが強いのはわかった。だが、俺達でカタ付けさせてくれ。頼む。」


クリシュナが絞り出した言葉、それは懇願だった。


「俺達は、15年、この日のために我慢したんだ。ヤツの正体を見破るために……そしてようやく掴んだ!」


「ヤツ?」


「あぁ、あんたらならば話そう。俺達に何が起きたか。だが今から話すことは、ケリがつくまでは他言無用だ。いいな。」


「あぁ、約束しよう。」


周りで蹲っていた男達も起き上がり、テーブルを囲むように座った。銛は全て片付けられ、敵意は無い意思表示とした。


「結界の魔女王、クシナとは、この俺、クリシュナの姉だ。いや、姉だったんだ。」

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