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S2-3



「まずは情報が欲しい。知ってること、聞かされた話、全部。」


ステラが詰所で聞かれたのは、暗殺の犯人だと言われた者の身元。調べた結果、確かに冒険者の登録があった。しかし、名を聞いても、顔を確認しても、覚えのない人物だった。武王の屋敷へ確認したところ、誰も知らないと言う。教会側の言い分は、この手の仕事をさせる為に、武王が雇い入れた秘密の組織ではないか?ということらしい。


「憶測で武王様を首謀者扱いしたのか?」


「いや、暗殺者本人が、武王様の指示だと白状したらしい。」


「なんだよ!たったそれだけで?他に証拠でもあるの?」


「それを今調べているんだと。」


「まずい。武王様の屋敷へ行こう!」


(そんなの、屋敷を調べると言って証拠を持ち込まれるに決まってる。捏造し放題じゃないか!こんな子供騙しに気付かないなんて、明らかにおかしい……)



武王の屋敷に着いた時には、すでに衛兵に門をかためられていた。


「遅かったか……」


まどかは、ハンスの不可視化の潜入を躊躇った。何らかの探知スキルでバレる可能性を考えてのことだ。


(タイミング的にも、そう考えた方がいいだろう……)


程なく屋敷から騒がしい声が聞こえる。どうやら法王邸の見取り図と、殺害に使用された毒物が出たらしい。やられた、こんなあからさまな証拠、残っている方がおかしいのに……

武王は縄をうたれ、衛兵に連行されていく。


「待ってくれ!少し話がしたい。」


シルバが声をかけた。衛兵が無理矢理引っ張っているが、武王はピクリとも動かなかった。


「よぉ!シルバじゃねぇか。まぁ、心配すんな、なんとかなる。今はおとなしく従うさ。」


「なに呑気なこと言ってんだ!シンバ、これは……」


「言うなシルバ。今何を言っても通用せん。」


「……信じて良いんだな。」


「あぁ、それから、まどか聖女!」


「なに?」


「この国の魚は食ったか?美味い魚食いたきゃ、漁師ギルドに行ってみな。」


何かを目で訴える武王。


「……!わかった、そうするよ。」


「じゃあな!」


武王はスタスタと歩きだし、衛兵を引きずるように去っていった。


「アイツ、なに呑気なことを……」


「シルバ、ひとまずギルドへ戻ろう。」


まどか達は、ギルドへ向かって歩く。道すがら、シルバに耳打ちするまどか。しばし考え、頷くシルバ。

すでにシルバのひととなりは、ジョーカーの眼で確認している。真に友の身を案じ、助けたいと願っている。ステラもこちらの味方と思っていいだろう。

ギルドに着くと、執務室に入り、風の結界を張った。これで外に会話が漏れることは無いだろう。


「ステラ、シルバ、それにみんなも聞いて欲しい。これからの行動と作戦について。」


まどかは順を追って説明する。


「まず、教会の裏には、大昔この地を統べていた竜王がいる。今は魔蟲の術によって、リュウジュという木になっている。

リュウジュは、その根元で、自分の子を守り続けていて、魔蟲はその子を奪うために、リュウジュのマナを削り取っている。」


「まるでおとぎ話だな。」


「あぁ。私もそう思うよ。その魔蟲には仲間がいる。人の姿で、魔蟲の餌となる人間のマナを集めるために教会に潜り込み、リュウジュの実と、竜使いの笛を使って、人々を洗脳していった。それが今の司祭だ。」

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