S2-1
タコパの翌日、まどかはたこ焼き器で甘い生地を焼いている。蜂蜜をかけ、一つ食べると、
「うん。カステラっぽいかな。」
みんなでつまんでいると、
「「ただいま戻りました。」」
チェリーとコバルトが帰ってきた。まどかはカステラもどきを二つつまむと、
「おかえり。はい、あーん……」
二人は戸惑いつつ、口を開ける。
「どう?」
「「味はわかりませんが、多少のマナの補給になりました。」」
「うーん、そっかぁ……」
「ま、まどか様、あーん……」
目を瞑って口を開けるハンス。まどかは顎を掴み、カステラもどきを次々とねじ込んでいく。最早口が閉じれないほどパンパンだ。
「はもははま、もいっふ!(まどか様、無理っす!)」
口を手で押さえてふがふが言ってるハンスを横目に、まどかはチェリーとコバルトに話しかける。
「早かったね。3日って言ってたのに。」
「「はい。思わぬ収穫がございましたので。」」
「聞かせて。」
「この島の結界、確かに張ってありますが、張る方向がおかしいのです。ねぇ、チェリー。」
「はい。単刀直入に申しますと、魔物を寄せ付けないための結界ではなく、島から逃げ出せないようにする結界でございます。ですよね、コバルト。」
「逆向きの結界……そうか!そういうことか!」
「ねぇまどか、何がそういうことか!なの?」
「蟻地獄。だな。」
「流石はまどかお嬢様。つまりは、人々を島に誘い込み、結界で逃げられないようにして、餌として確保しているのです。ねぇ、チェリー。」
「ですわね、コバルト。しかし、それをさせているのは、法王ではなく、魔女王なのです。」
「魔女王が?ふむ。」
そこでまどかは考え込んだ。この島は、いったい誰の意思で動いているのか……法王、その後ろには蜘蛛型魔蟲、そいつが洗脳による支配で魔女王にさせているのか?それとも魔女王の意思?裏で糸を引いて、もしくは法王を利用しての支配か?
もう一つの疑問、それは、結界が表裏反転しているにも関わらず、魔獣が上陸してこない点……
武王はじめ、ギルドの活躍によるものか、あるいは……
「そうか。ではアイツの正体は……」
「どうなされました、まどかお嬢様?」
「ジョーカー、長くなりそうだよ。この島、めんどくせぇ……」
まどかの中で、一つの仮説がまとまった。おそらく間違いないだろう。町の人達は、気付いていないのか?わかっていて今の状況を受け入れているのか?場合によっては、周りが全て敵……という状況にもなりうる。
「敵か味方か……武王辺りから攻めてみるか……」
だがまどか達はこの後、思いもよらない展開に巻き込まれる事になる。穏やかな島の裏の顔が、まどか達に襲いかかる。
-その報せは突然で、あまりにも理解し難い内容だった。
法王の訃報。しかも、武王が冒険者を使って暗殺したらしい……と。
ありえない。動機が無い。明らかに何者かが武王を陥れるために、罪を擦り付けたとしか……いったい誰が?なんのために?
この事件を受け、冒険者達の行動が制限され、教会への立ち入りを禁止された。おそらく、事実関係を調べられぬように、冒険者の動きを封じたのだろう。
ということは、教会内部の者か?一番怪しいのは司祭だが……まどか達も冒険者だ、教会には近付けない。ハンスの偵察がバレたのだろうか?とにかく、迂闊に動けなくなったまどか達であった。




