A1-2
船上でテンタクルズを鑑定する。足には毒は無いが、胴の中に毒腺があり、傷付けると食べれなくなるらしい。ギルドに持ち込めば、薬の材料として買い取ってくれるそうなので、とりあえず収納しておいた。
足を一切れ……と言ってもドラム缶程のサイズだが、取り出し、薄く削って食べてみる。
「もむもむもむ……うん。蛸刺しだ。思ってた程硬くない。これは使えるな。」
遠巻きに見ていた船員は、恐ろしい者を見るような目で、その光景を見ていた。まどかはジョーカーにも味見をさせる。
「新鮮な生の状態だと、こんな味。火の通し方で味と食感が変わるんだ。」
「なるほど。これは楽しみです。」
それからまどかは、マグロを解体した。テンタクルズを食べるのは皆敬遠したが、マグロは喜んで食べた。半身を収納し、皆んなで食べた残りは、料理長にあげた。
-そんな騒動がありつつ、船は港に着いた。まどかはギルドの場所を教えて貰い、船を後にする。船長と握手を交わし、笑顔で去っていく。後日、船乗りの間で、海の魔王テンタクルズを喰らう者、リヴァイアサンの生まれ変わり、冒険者まどか……と言う話しが語り継がれることを まどかは知らない……
コクシン共和国の港町チコ。冒険者ギルドはこじんまりしている。依頼掲示板にも、荷運びや海獣討伐が多いようだ。その中にテンタクルズ討伐の依頼もあった。まどかは受け付けカウンターに行く。
「旅の冒険者まどか、これ、ギルドカード。依頼報酬受け取りと、素材買取りお願い。」
「はいはーい。カード確認しますね……え!すご!……あ、すいません。カードお返しします。依頼達成ですね……商船の護衛……」
「あと、これ。」
まどかは掲示板の依頼書を取り、カウンターに出した。
「え!て、テンタクルズ討伐ですかぁ!」
「うん。ついでに倒した。素材もあるし。」
「わ、わ、わかりました!先に買取りカウンターにお願いします。」
ギルド内がザワつく。海の魔王と恐れられ、何隻もの船が為す術なく沈められている。そんな海獣を討伐出来る者など、極一部の上位冒険者しかいないはず……
「お待たせしました。こちらにお出し下さい。」
受け付け隣の、買取りカウンターの女性が言う。かなりの年配だが、目が異様に鋭い。きっと目利きのスペシャリストなのだろう。
「うーん……無理。狭すぎる。」
「それでは……あんた達、どきな!そこのシート拡げて。ほらボーっとしてないで、そこの男達も手伝いな!」
急に河岸のおばちゃん風になった。こっちが本性なのかな?
「これでいいかい?」
ロビーに拡げられたシートに、まどかが収納からテンタクルズの胴を出す。それだけでロビーの七割が埋まってしまった。
「ごめんね。毒腺の解体がイマイチ分からなかったから、このまま持ってきた。」
「こりゃたまげた!確かにテンタクルズだ!よし。わかった。解体はこちらでやろう。肉はどうするね?」
「四分の一くらい貰いたい。捨てるって言うんなら、全部貰うけど……」
「捨てるもんかね!高級食材だよ!四分の一だね。残りは買い取るよ!少し時間を貰えるかい?明日の朝には代金用意しとくよ。」
「わかった。宿屋はある?」
「上が空いてる。泊まって行きなよ。手間も省けるってもんだ。」
「そうさせてもらうよ。」
まどか達は、ギルドの二階の部屋を借りることにした。