洗脳パラダイス1-1
まどか達は、教会潜入の準備に入る。
昨夜の作戦会議での情報の擦り合わせで、ある程度の予測が立てられた。
おそらく、ハンスが見た洞窟にリュウジュがあり、神官服の人達が実を採取していて、リュウジュの元に蜘蛛の魔蟲が巣くい、生気を吸い取っているのであろう。
それを教会では修行と呼び、五つの班をローテーションすることで、言わば餌が枯渇するのを防いでいるのだ。
司祭は多分、蜘蛛の魔蟲の配下だろう。もしかしたら、魔蟲自身が人に化けているのかもしれない。
神官服の人達が集めたリュウジュの実を使って操り、洗脳して餌場を確保し、魔蟲は力を貯えている。そして、リュウジュが守る竜王の子を 我がものにしようとしているのだろう。
後はその目的。それがわかれば、その後の対処が決まるだろう。もちろん魔蟲は討伐する。ただその背後が見えないことには、対処のしようが無い。
もし背後があるのなら、魔蟲のみ討伐しただけでは元の木阿弥である。故に教会に潜入し、調べる必要がある。そう考えたまどか達だった。
今回の潜入の鍵となるのは、おそらくメイドの二人だろう。まずこの二人の登録を兼ねて、ギルドと教会に行く。
街の人達には、買い出しに同行させているので、ある程度の認知は得ていた。なので早めの登録と、潜入のきっかけを探る。
まどかはチェリーとコバルトを連れ、街へ出た。以前程の騒ぎにはならなくなったが、時折手を合わせ、まどかを拝む者がいる。
ギルドに入ると、騒がしいホールが一瞬で静かになり、カウンターまでの道が出来る。順番待ちをするつもりだったが、畏れ多い!と言って、皆が譲ってくれた。
「パーティの追加メンバーの登録をしたい。」
「かしこまりました。では、こちらへ。」
その後もスムーズだった。二人はメイドとして登録したが、選べる職業欄に、狂戦士、呪術師、暗黒魔導師などがあったのは、気のせいだろう……
教会へ行く途中、新規オープンのカフェを見つけた。表に銀髪の紳士が立っている。
「貴方はたしか……メイさん?」
メイは恭しく一礼すると、すぐさま驚愕の表情になる。
「ま、まさか!いや、有り得ない……失礼ですが、まどか様、後ろのお二人はもしや……」
「中で話そう。ここでは騒ぎになるかもしれない。」
「かしこまりました。どうぞ中へ。」
落ち着いた雰囲気の店だ。調度品のセンスもいい。ここで元執事の淹れるお茶を飲み、寛ぐ。人気の店になるだろう。
まどか達はカウンター席に座った。メイドの二人は座ろうとはしなかったが、まどかが許可を出し、座らせた。
「メイさん、この二人は、屋敷にあった人形に、魂を宿らせたものだ。どうやら驚かせてしまったようだね。」
「なんと、そのような事が可能なのですか!」
「あぁ、それで……この二体の人形には、なにか謂れがあるのかな?」
「……では、少し語らせていただきます。この二体は、お亡くなりになりました我が主の、姉上様を象った人形なのでございます。名をサクラ様、アオイ様と申されます。
我が主がまだ御幼少の砌、御二方はそれはそれはお優しく、我が主も懐いておいででした。それが戦乱のおり、離れてしまわれたのです。」