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A4-2



まどかは土魔術で、林を抜けるトンネルを作り、メグミに頼んで木々や蔦で隠した。門番の兵士から死角になるように、抜け道を作ったのだ。

杜氏のみんなにも協力してもらい、屋敷に人が居る芝居をしてもらうつもりだ。と言っても、家族や知人を呼んで、普通に生活してもらうだけなのだが。


今度の作戦には、チェリーとコバルトも必要不可欠だ。詰所への食事の差し入れもお願いする必要があった。急に入れ替わると不審に思われるので、しばらく自分達の姿も見せつつ、差し入れをお願いした。


杜氏の家族達には、屋敷の食材を自由に使ってもらった。給金も貰えて、食費も助かる!と、喜んで手伝ってくれた。


ハンスが調査に行ってる間、まどかとメグミは、積極的に町の人達と触れ合った。目的は情報収集だ。この島の言い伝えや昔話、教会のこと、島の生活、などなど……


「まぁ、だいたい話しは聞けたかな。」


夕方、そろそろ屋敷に帰ろうとしていた時、遊んでる子供を迎えに来た母親が、


「帰るよ!いつまで遊んでんの。早く帰らないと、吸血鬼が来るよ!」


まぁ、子供を脅して言うことをきかせる親の常套手段ってとこかな……と思ったが、どこの親も同じことを言う。吸血鬼が流行ってんのかな……


屋敷に帰り、杜氏の家族も含めて食事をした。最初の頃は緊張していたようだが、次第に打ち解け、気安く話せるようになった。


「今日、町で子供に声をかける親が、吸血鬼が来るよ……みたいなこと言ってたけど、何あれ?」


「あぁ、私も子供の頃言われてましたよ。」


「私も私も。ひぃおばあちゃんが、昔はこの島に吸血鬼が住んでて、今でも生きてるって言ってたわ。」


「その話し、詳しく聞かせて。」


「その昔、島がまだ四つに分かれていた頃、法王の治める島に吸血鬼と呼ばれるモノがいた。美しい女性の姿で、夜な夜な人々を誘い、精気を吸い取る。

一度で吸い尽くすことは無いけど、魅惑チャームの術に捕えられた人々は、夜になると自ら吸血鬼の元へ赴き、精気を吸われて帰ってくる。人々は次第にやせ衰えて行き、ミイラのようになって、やがて命を落とす。」


「ふむ。それで?」


「吸血鬼の存在に気付かず、流行り病かと思われていたが、ある夜、吸血鬼の館へ向かうものの後をつけた神官により、流行り病ではなく、魔物の仕業だと判明する。法王は聖騎士団を派遣し、聖結界と光魔術で撃退する。」


「撃退したんだ。」


「そう。そのハズだったんです。でも討伐戦に参加した聖騎士は、凱旋の途中、毒蜘蛛に噛まれて死んだのです。町のみんなは、吸血鬼の執念が蜘蛛に乗り移り、聖騎士を噛み殺した……と、口々に言ったのです。」


「執念ねぇ……」


「その後、吸血鬼の姿を見たものはいません。それから十年後に竜王の島が噴火、四つの島は繋がり、今の形になりました。噂では吸血鬼が島を渡り、竜王の怒りに触れた……と言われてますが、竜王の島の生き残りが居ないので、本当の所はわかりません。」


「(なんとなく繋がったな……)ありがとう。貴重な話しを聞かせて貰ったよ。」


「貴重だなんて、この島に伝わる昔話ですよ。」


「いや、おかげで私が何をすべきか、わかった気がする。」


「では聖女様、島の危機とは、吸血鬼が?」


「それはまだ、なんとも言えないよ。ただなんとなく、話しが繋がっただけだからね。」

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