会いたかったよ1-1
令和スタートに合わせて、新シリーズ スタートです。
まだお読みで無い方は、シリーズ第一作品「帝国編」もどうぞ!
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コクシン共和国。
元々四つの島だった。220年ほど前の火山の大爆発によって、中央にあった島は熔岩に飲み込まれ、周りの三つの島と繋がって今の形になった。火山の活動がおさまり、三つの島だった所から徐々に移り住むようになり、争いを避ける為に三つの島の王が協定を結ぶことで、共和国となった。
今では、三つの島に三人の王がいた事を知るものも少ない。三人の王が協力して治める国……という認識である。
現在の王は、神託によって国の方針を決める法王、名をコクーン。魔術、特に結界術に長け、島の守りを固める魔導女王、名をクシナ。剣術や槍術に長け、外敵や海の魔獣と戦う、元は海賊の血筋と言われる武王、名をシンバという。
火山岩と火山灰だった島の土壌も、200年の年月を経て、植物が育つ環境となり、熱帯性のフルーツが豊富に採れる。漁業も盛んで、漁業ギルドまであった。冒険者ギルドは、武王の庇護を受け、海獣討伐に特化した者が多い。
まどか達の乗る商船は、穀物や野菜等の農産物を主に島へ運び、島から魚や海獣の肉や素材、フルーツを積んで帰る…という船だ。片道三日、天候にも恵まれ、大した魔獣も出なかった……ただの一度を除いては……
その日は船尾から竿を出し、糸を垂らしてトローリングをしていた。収納に残っていた魔獣の内臓を餌に、のんびりと水面を見ていた。
(これだよ、これ。こういう穏やかな生活をしたかったのだ。)
「まどか様ぁ、こんなんでホントに釣れるんすか?」
ニヤニヤして見ている顔が、無性にイラッとする。
「そうだなぁ……ハンス、餌になれ。」
「またまたぁ、まどか様、冗談ばっかり……冗談、ですよね?え?」
「え?」
「ちょちょ、勘弁してくださいよー!」
「ハンスさんが揶揄うからでしょ!」
「いやいや、大物が釣れるかもしれませぬな。」
皆んなでわちゃわちゃしていたその時、
「きた!」
竿がしなる。船には丸太にハンドルを付けたような糸巻きが付いている。四人でハンドルを回し、糸を巻いていく。竿のしなり具合を見ながら、ある時は一気に、ある時は巻くのをやめて……
船員達が、銛をもって構える。一斉に銛を投げ込み、巨魚を仕留めた。ヒラヒラした羽根のようなヒレのあるマグロだ。全員で引きずりあげる!
「「「ヤッター!」」」
みんなでハイタッチしながら喜んでいると……
「メリ……メリメリッ!」
海中から赤黒い物が延びてくる。ウネウネと動き、吸盤が並んでいる。
「て、て、テンタクルズだぁ!」
船員達が慌てふためく。それは巨大な蛸だった。船底に張り付き、船を抱き抱えるように足を巻き付ける。胴を起こし、獲物を探すように目を動かした。メグミは弓を構え目を狙う。ハンスは鉈のようなナイフで張り付いた足を切っていく。ジョーカーはエストックで、まどかは解体ナイフを使っている。
「食材!食材!」
まどかはせっせと収納している。ジョーカーも食材と聞いて、
「これはまた、料理の幅が広がりますな。」
と収納して行く。
「そろそろいいか。メグミ!」
メグミが弓を構え、まどかが雷を纏わせる。
「「サンダーボルト!」」
目を撃ち抜かれ、沈んでいく大蛸。すかさずまどかが銛を打ち込む。
「引き上げろー!」
呆気にとられていた船員も、総出で引き上げた。
「大漁、大漁!」