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セシャトのWeb小説文庫2019  作者: 古書店ふしぎのくに
第十一章『不協和音の三重奏 〜今もまだ〝君〟への想いが消えなくて〜 箸・帆ノ風ヒロ』
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最後の入店 作品の感想

さて、合宿が決まりました。講師はバストさん、参加者はレシェフさん。サタさんとダンタリアンさんがアシストという形ですねぇ^^ こうやって、当方のメンバーを育てていける環境をつくれていけるのは古書店『ふしぎのくに』も成長しているという事なんでしょうね! 私も参加したかったですよぅ!

「こんにちわ!」



 からがらんと古書店『ふしぎのくに』へと入店する音。それにどたどたと入口まで走ってくるセシャトに秋文はプレゼントを渡す。それにセシャトは笑顔で奇声を上げた。



「はっひゃあああ! 可愛いですねぇ!」

「遅くなってごめんなさい! 色々あって遅れちゃいました」

「大丈夫ですよぅ! さぁ、カレーライスも大変美味しくなっていますから! 母屋に入ってください」

「はーい!」



 セシャトは秋文から『不協和音の三重奏 〜今もまだ〝君〟への想いが消えなくて〜 箸・帆ノ風ヒロ』の疑似小説文庫を受け取ると金の鍵を取りだして神のワードを呟く。



「нобачуxотосеа(疑似文庫Web変換)」



 元々無かったかのようにその本は薄っすらと消えていく。母屋には古書店『ふしぎのくに』オールスターズがいるわけで、もはや疑似小説文庫もスマホもタブレットもいらない。



「おじゃましまーす」



 秋文が母屋に入ると、一人一人は何度か会った事があるが、彼らが一同に介する光景は初めて見た。



「おや、秋文君。遅い入店ですね! こちらにお座りください」



 そう言ってトトが席を引いてくれるのでそこに秋文は座った。古書店『ふしぎのくに』の母屋は決して広くない。四人がけのテーブルは満員。さらに二人来客が来る予定である。これに関しては神様が何とかしてくれる。



「神様、はやく部屋広げるん!」

「貴様っ! 馬鹿、私に指図するなっ! 全く愚かの極だのっ。気分的にはやはり、カフェ・ルポゼかの。この『ふしぎのくに』も物語という休息を与える店だしの」



 神様はリンゴをがしゅっと齧りながら指を鳴らした。

 パチンとした音と共に、母屋の姿がだんだんと変わっていく。全書全読の神様による奇跡、ここにいる全ての読者達が同じ作品を読んでいるからできる必然。



「さすがです神様、いつ見てもほれぼれ致します」

「まぁ、ヘカならもっと上手くやるんけどな」



 当然のようにそう言いあう面々の中で秋文は開いた口が塞がらない。何度かセシャトに奇跡を見せられたがそれを軽く超えてしまう神様のこれ……



「小僧、好きな席に座るといいぞっ! 他二人が来るまで、最終項を読みながら、茶でも飲むといい。トト!」



 かしこまりましたと、トトは秋文の為にトトのスペシャルブレンドを淹れる。それを秋文が座る席に運ぶと語った。



「ここまでくると結末はさすがにどんな鈍感な人でも想像がついてしまいますよね? でも、このエンドが一番なんだって作者さんは思ったんでしょう。そして読者である我々もそう思ってしまう。違いますか? 秋文君」

「分かります……きっとこれが嫌いな人もいると思うんです……でもこれは」



 秋文が今、言わんとしようとしている事。それに関してここにいるメンバーは全て理解してくれる。

 店を準備中にしてセシャトが母屋に戻ってきた。



「この母屋は……神様、素敵ですねぇ! そして、秋文さん。秋文さんが感じた事を私が僭越ながら代弁させて頂きましょうか?」



 セシャトはふふふのふと笑う。秋文が頷くのでセシャトは赤い伊達眼鏡をかけてから話し出した。



「万人に親しまれる物語という物を作る事は難しいです。ですが、この作品を、そしてこのエンドを嫌うという人の多くは嫉妬でしょうね。そうですね例をあげますと」



 セシャトが語ろうとした時にヘカが付け足した。



「君の名は現象なんな? 言われてみればこの作品は昔の新海誠っぽいん」



 ”君の名は”が一世を風靡した時、ツイッター等の創作界隈では、”君の名は”見ませんや、かたくなに見ようとしない姿勢を見せる人々が一部いた。それは大きな嫉妬。多くの人々を、にわかも含めて虜にした作品への嫉妬。



「まぁ、嫉妬というものは創作意欲への薪になる事もあるからの、一概に悪いものではないが、大抵この作品が合わないという輩は嫉妬連中であろうの。本作は単純に文章作品としての”いろは”は揃っておるし、文句の付け所はなかろう」

「そうですね。この作品はWeb小説らしき良い点がちりばめられています。本媒体の量ではなく、裁量で終わるような作りです。そしてWeb媒体の作品でありながらその完成度の高さです。魅せたいものを出し過ぎない、そして作者とキャラクターの適切な距離です。作者が完全に導いている。これは操作しているとはまた違います。これが今回、大賞として選ばせていただいた大きなポイントですね」



 そう、本作は11月の紹介小説コンテストの受賞作品である。地獄のような選評の中で全チームを使って全作品を読みこみ選んだのが本作。『不協和音の三重奏 〜今もまだ〝君〟への想いが消えなくて〜 箸・帆ノ風ヒロ』。



「私はWeb小説という物が自由であると感じれる事が大好きですよぅ! 書きたいから書く、Web小説はそんな敷居の低さが趣味としても素晴らしいものだと思います。ですが、本作のように小説作品としての完成度の高い物も公開されます。多種多様に得意な分野で戦える場所が本当に綺麗だとは思いませんか? この作品のエンディングのように、救いを感じる事ができるんです」



 セシャトはそう言って全員の目の前にカレーライスを配膳していく。神様とヘカが待ちに待ったセシャトの特製カレーライス。



「皆さん、最高の読書に合うのはおかしもですが、そもそもカレーライスは読書をしながら食べる為のものです。ハヤシライスに洋食の王者としての地位は奪われてしまいましたが、今でも読書のお供はカレーライスです! それでは皆さん」



 手を合わせて頂きます!

 カレーを食べながら神様がここでもまた一つ奇跡を起こす。スプーンを水の入ったグラスの中に入れる。これは昭和の人のカレーの食べ方でもある。チンとスプーンを鳴らすと、セシャト達の目の前に立体映像として『不協和音の三重奏 〜今もまだ〝君〟への想いが消えなくて〜 箸・帆ノ風ヒロ』のダイジェストが流れる。

「まぁ、今回は大賞作品だしの……このくらいのサービスは当然であろう。そうだ、セシャトよ。この作品のあれはもうできておるのか?」



 あれの話を聞いてセシャトはふふふのふと笑う。そして神様も笑う。秋文はなんの事か分からない中でセシャトは応える。



「まだですよぅ!」

「まぁ、出来る限りはやく用意するんだぞ」

「はい!」



 今回の11月Web小説コンテストに関して、実験的な要素も大きくあり、参加頂いた全ての作品と作者に感謝をするとともに、大賞作品に関しては古書店『ふしぎのくに』より何か贈り物を考えていたりいなかったりする。

 からがらんと誰かが入店する音が神様にのみ聞こえた。神様は席を立つって母屋から店内へと出る。きょろきょろと見渡して入口のノブに触れた時、神様の目が隠された。



「だーれだ?」

「あれだの。本来はここにはおらん奴だの?」

「神君、中々寂しい事を言うじゃないか……アタシが来なくて、古書店『ふしぎのくに』の初めてのコンペに箔がつかないんじゃないのかい?」



 神様の目を隠しながら目隠しをしている人物は語る。



「カレーの匂いだ。それにこのカレー、チョコレートが入れられているね? アタシはちょっと皆とはこの作品に関して読み込みが違うんだよね!」

「ほぅ、で貴様はどう考えた?」



 神様の目を隠す手が震える。この目隠しをしている人物は笑っているのだ。ふっふっふと……神様と唯一同じ力を持つ過去の亡霊は何を語るのか……



「この物語のエンディング。アタシは、まだトゥルーエンドじゃないと思ってるんだよね。この物語は別のエンドがあるんじゃないかなって思ってるの……」



 神様はあきれた。本作はもう完結しきっている。だからそれは大いなる希望でしかない。そしてさすがはこの者だなと思って神様は振り返る。



「むぅ? おらん。まぁいるハズもないか……カレーに酔ったかの?」



 神様が母屋に戻った時、そこには、欄とアリアの姿があった。カレーを食べていたハズだったのに……楽しそうにお茶をしながら『不協和音の三重奏 〜今もまだ〝君〟への想いが消えなくて〜 箸・帆ノ風ヒロ』を読み談笑している。

 いつのまに二人は母屋に入ったのか……神様は店内にいたのに二人が入ってきた気配も音も感じはしなかった。



「あら、神様じゃない。いないと思っていたら、遅かったのね」

「何を言っておる! 私はほぼいの一番でこの店に来ておったわ! 貴様らが美味そうに食べておるその三重奏を物語から出して持ってきたのは私だっ!」



 神様のその言葉にセシャトは笑顔を絶やさずにニコニコしながら答える。



「こちらはヘカさんが偶然使えた羽ペンの力でお出ししたものですよ! 神様は一番遅れてこちらにいらっしゃいました! もぅ、11月紹介コンペの大賞作品なんですから! もう少し早く来ていただかないと困りますよぅ! もう11時ですから、もうじき美味しいカレーライスの時間ですからねぇ!」



 神様は目を丸くする。まさか、全書全読の神様たる自分が物語に酔い過ぎたか? 何が起きてもおかしくはない。それが小説という物の醍醐味なのだ……



「あちらが、異世界であったか、それともこちらが異世界なのか? まぁ私にはさして関係のない事だの、果たして、三重奏の登場人物は救われたのか……それは読者の心の中と言ったところであろう」



 神様は、”11月紹介小説大賞受賞作品、読書会 第一会場”と書かれていた。きっとおべりすくや、文芸部でも同じように読書会が開かれているのだろう。

 今年も残すところあと少し、寒さがひどくなってくると、コーヒーが美味くなる。そしてコーヒーのお茶請けにはチョコレートは欠かせない。



「美味い茶と茶菓子があれば、あとは面白い小説だの?」



 神様は人差し指を咥えると母屋に再び奇跡を起こして見せた。母屋の店内をカフェに変え、皆が座る席から見えるところに大きなモニター、そこに映し出される物は今、皆が読み楽しんでいる作品。



「この作品は映像作品としてみたいものよの」



 神様はそう言って目玉焼きの乗ったカレーを所望する。

早いものですが、今回の紹介をもって『不協和音の三重奏 〜今もまだ〝君〟への想いが消えなくて〜 箸・帆ノ風ヒロ』の紹介を一旦終了とさせていただきます! どうでしょうか? 皆さん本作はもう読まれましたか? 週末に一気読みするのにも適していますし是非この機会に楽しんでみてくださいね!

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― 新着の感想 ―
[良い点] >この作品は昔の新海誠っぽいん そうですね。この作品を書く切っ掛けになったのも、 私がタイムリープ物を書いたらどうなるか、 というのがスタートだったもので。 >魅せたいものを出し過ぎない…
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