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セシャトのWeb小説文庫2019  作者: 古書店ふしぎのくに
第十一章『不協和音の三重奏 〜今もまだ〝君〟への想いが消えなくて〜 箸・帆ノ風ヒロ』
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上手い文章と正確な文章の違い

先日、年末イベントのミーティングを行いました。1周年目という事ですが、この間に大分投稿サイトも増えましたねぇ^^ 今後なんですが、色々と当方も新しい動きをしていきますよぅ! 

紅白Web小説合戦の参戦をお待ちしておりますよぅ!

「この一文は中々強烈ですよね!」



 ”コーディネートを見るに都会的な暮らしは否めない。”


 ファッションは回ると言われている。今、若者達に70年代ファッションが流行るように流行りは回るのである。ここ最近はSNSがあるので、各地方、流行る物も流行る言葉も服装も大体似たり寄ったりだったりする。



「仕事が趣味とかいう人間がいるん! 馬鹿なん? って思うんけど、セシャトさんとトトさんはどうなん? 仕事は好きなん?」



 セシャトの古書店経営とトトのブックカフェ経営、二人はこの仕事に関して考えて当然の如く頷いた。



「好きですよぅ!」

「えぇ、大好きです」



 ヘカは口をへの字に曲げる。あざとさの二重奏。そこに神様がビスケットを三枚重ねてバリバリと食べながら話に入る。



「岩見という男も昔は普通だったらしいの。所謂企業戦士という男だな。嫌な風に描かれておるが、こういう奴がおるから会社がまわり、社会が回ると考えてもよいのだろうの……リアルだの。やや嫌味っぽいところもの」

「ですね! この駆さんは岩見さんを見てかっこいいと思えるところは実に人が出来ていますね!」



 ここから年齢別に読者が感じる部分に大きな違いはあるかもしれない。十代や学生の読者は岩見は嫌味ったらしい男だなと単純に考えるかもしれないし、60代70代の人、所謂段階世代が読めばこの岩見の言っている事は大いに間違いないというかもしれないし、現役社会人が読めば、こういうやたらと説明したがる人っているよなと感じるかもしれない。

 そしてそれを総称しているのが駆の考えである。

 どちらの生き方(感じ方)も間違ってはいないと……



「まぁ、ヘカは絶対こんな働き方はしたくないんな? 好きな事だけして楽して生きていきたいん!」



 そしてヘカのようなベンチャー脳を持つ者。本作の文章表現も校正の非常に上手い。そしてなろう小説として一般的に人気を出すような作風とは一線を画す。

 が、これら表現は所謂なろう系小説を書くに対して非常に勉強になる。



「まぁ、結局読みやすい物というのは一つの指標になるからの文章のUFO現象に似ておるの!」

「神様、なんですかそれ?」

「知らんのか? 私の造語だっ! UFOという物は指を指してUFOと言った時点でUFOではなくなるであろう? それと似ていてというか真逆でと言った方がいいかの? 正確な文章と上手い文章というのは違うのだ。多くの人が読んで上手いなと思う文章は上手い文章なんだの? 但し、それが文章表現として正確かはそこは判断基準ではないのだ」



 分かるような? 分からないような? 神様の考え、小説においての表現の自由というべきかもしれない。



「要するに神様は国語的にそれはどうなの? という事を言う人は小説を書くのに向いていないという事でしょうか?」

「まぁ、国語は基本だからの。そこまでは言わんが、それが思考の妨げになるのはいかんとう事だの。しかし、ウィンドウショッピング、私もセシャトが千円しか毎日小遣いをくれんから、食べたい物も食べれず困窮しておるわ」



 そう言ってセシャトをじっと見る神様だったが、セシャトは紅茶を飲みながら話を無視した。



「今年が終わればもうバレンタインですねぇ! 来年も皆さんでチョコレート交換をしましょうか! ヘカさんがエルヴァンをお持ちされた時は驚きました」



 ジャンクフード大好きなヘカが高級チョコレートを買って来た時である。それにヘカは三本目のエナジードリンクを飲みながら語った。



「花蓮や、セシャトさん、トトさんみたいに上手にチョコレートを作れないん。だったらいいのを買った方が早いんよ」



 セシャトにトトにヘカ、三人はハルが駆に花蓮とお似合いである事を話、駆が照れる。そして話題を変えた話が学生時代についてである事にやや苦笑する。

 三人とも学校という組織に所属した事がない。

 ある種の憧れや信仰のような物を持っている。



「駆さんの高校生と大学生時代は輝いていたんですねぇ……いいですねぇ!」

「作品のキャラクターは作者の世界を越える事が一般的にはできないと言われています。そういう面では作者さんは素敵な高校時代や大学時代を過ごされたのかもしれませんね! そして今は社会人としての楽しみやデメリットを感じられているんでしょうか?」



 作品を作る事は全てその人の経験基盤になっていると言っていい。ファンタジー作品ですらそういった作品が好きであるという元になる何かがあったから書いているわけで、経験が多ければ世界は広がるのだろう。



「それにしても駆、気持ち悪いくらい良い奴なんな? 自分の愛すべき青春の時間の記憶を失っているハルの事を気にかけすぎなん」



 彼は一貫して実に良い奴である。こんな好青年だからこそ花蓮という素敵な女性と付き合えたのかもしれない。

 セシャトが全員のカップにコスタリカの苦めのコーヒーを入れていく。それをすすりながらヘカがもう一声。



「ハルはなんだかこの時点では達観しすぎなんな? JKなんてだいたい馬鹿なん!」

「馬鹿は貴様の事であろうがっ!」

「馬鹿じゃないん! ヘカなんな! 作品内でパンケーキが出てるとパンケーキが食べたくなるん!」



 ふっふっふと声が聞こえる。セシャトが東京駅の中にある成城石井で購入したパンケーキミックスを見せる。



「今日は特別に御作りしましょう!」



 そう言ってセシャトが箱を開けた時、カラガランと入店者を告げる音が響く。それにセシャトは目を大きく開いて入り口に走った。



「秋文さんかもしれません!」



 パンケーキミックスを置いたままいなくなり、ヘカはパンケーキが食べられないという事に絶望的な表情をしているので、トトがエプロンをつける。



「では本業の僕が作りましょうか?」



 鼻歌なんかを歌いながらトトがパンケーキを作る為に母屋内の台所に向かう。二人きりになった状態で神様が一言呟く。



「のぉ、パスタやらハンバーグやらオムライスなんて言葉を聞くと腹が減らんか? のぉ、馬鹿よ!」

「馬鹿じゃないん、ヘカなんな? ハンバーグについてる目玉焼きって黄身をつぶしてつけて食べる物だったんな?」



 本来目玉焼きの食べ方に決まりはないが、海外はソース代わりに使う事はある。半熟にしたゆで卵をつぶしてオイスターソースを混ぜたエッグソース等が有名どころか。



「そこでなんだがの? もう作られているカレーを食べんか?」



 不思議な事に食事シーンはお腹が減る。お腹が減るという事は、それだけ描写が良いという事だろう。ここでもう一つ……お腹が一杯になる部分。

 駆と花蓮ののろけ話と言ってまとめてしまうハル。



「やっぱり、やたらと達観してるんな? チョコパフェ頼むあたりもなんだか不自然に感じるくらいなん。ところで神様、カレーの話。くわしくなん」



 トトが調理している隣に、前日からセシャトが各種スパイスや果物を加えて作った特製カレーがある。軽く見積もっても数十皿分はある為、一杯二杯食べてもバレない事。



「どうだ馬鹿よ! 完璧であろう?」

「馬鹿じゃないんヘカなんな? じゃあ行くん」



 神様がトトを呼び、その間にヘカがカレーを二皿盛って母屋のテーブルへ戻る。という連携プレイ。



「のぉ! トトよ」

「はいなんですか? もうじきパンケーキが出来上がりますからね!」



 さすがはブックカフェの店主、焼き加減完璧なパンケーキを焼いてる。それも漫画に出てきそうな巨大な物を……



「ハルが、直近の事を未来視しはじめよった。突如、物語が進行するんだがの! 私はそこもなんだが、この作品は社会門への的を得てはおらんか?」

「ご年配の交通事故ですか?」

「高齢者ドライバー事故はある意味、暴走チームみたいなもんだからの!」



 初老の男性とあるので、高齢者ではないのだが、神様はカレーを手に入れるというミッションの為にトトをそこから動かさないように頑張る。



「例えばの話なんですが、ハルさんが見た直近のイメージはなんだったんでしょうね? それがとてもよくないものだったとしたらどうお考えになりますか?」



 神様はパンケーキを次々に焼き上げていくトトの腕に驚きながら、トトの質問を考える。例えばの話というは実はその答える人間の感性に対する心理テストに近い。



「まぁいくつか考えられるの、惨状が見えたのか、漠然とした危険という本能。虫の知らせみたいな物を感じたのか」



 遠い目をして作品に同化しようとする神様に見とれているトト。神様は横眼にヘカがカレーをよそっている姿を確認する。



「時に神様、僕も一つ未来が見えたんですよ」

「貴様が? そんな力は私は与えておらんハズだがのぉ!」



 不思議そうに神様が見つめているとトトは指を神様に向けるとみせかけてからこっそりカレーをよそおうヘカを指した。



「多分ですが、このままだとセシャトさんに見つかって叱られるという未来が僕には見えますねぇ!」



 そう言って片眼鏡の位置を直すトト。



「ぬぅおおおお! バレておったか!」

「えぇ、内緒にしておきますから、僕の作ったパンケーキを食べて我慢しましょう! 塩を足してベーコンをトッピングしたハワイアンです。少しはお腹の足しになるでしょう」



 メイド喫茶のオムライスのようにメープルシロップでネコさんの絵が描かれたそれを持って神様はテーブルへと戻る。



「あー! ヘカさん、カレーはまだですよぅ!」

「違うん! これは神様がカレーを……」

「神様はパンケーキを食べていらっしゃいますよ!」



 神様は少しばかりの罪悪感を感じる。これは事故に遭わなかった駆の気持ちが少しだけ分かった。そしてヘカに言う。



「セ、セシャト。まぁ良いではないか! のぉ? 良いでは……」

 この後、ヘカと揃って滅茶苦茶怒られた。

『不協和音の三重奏 〜今もまだ〝君〟への想いが消えなくて〜 箸・帆ノ風ヒロ』に関しまして国語的表現と本作で説明しました文章の正確さ、そして読ませる為の文章の上手さ、この二つが綺麗に合わさっていますよぅ! 小説を書く事においてお手本のような表現方法となっています。恋愛という大ジャンルの現代ミステリーとなる本作ですが、他ジャンルを書かれる方も一度ご一読頂ければ得られる物は多いんじゃないでしょうか?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今回も楽しませて頂きました! 岩見のエピソードを拾って頂きありがとうございます。 恋愛に終止するだけでは話に厚みが出ないなぁと思い、 働く駆の姿を強調するために出て来たキャラクターです。…
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