表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セシャトのWeb小説文庫2019  作者: 古書店ふしぎのくに
第八章 『双竜は藤瑠璃の夢を見るか 著・結城星乃』
72/111

婿候補と妖怪あるある

最近、東京の夜は涼しい時がありますねぇ^^ もう夏も終わりでしょうか?

皆さんはやり残しとかありませんか? 夏休みの宿題なんてもう終わってますよね?

気候が変わる時は体調管理もしっかりお願いしますねぇ!

「トト、あの神々しく面を見つめる事が出来ない美しさの嵐のような神様はどこでしょうか? 神様の使徒らしく美しい従者を用意しているようですが……」



 カーヤがそわそわとしながら辺りを見渡しているとトトはあのちんちくりんな神様に手を向けて笑う。



「カーヤさん、あちらが僕を生み出した神様ですよ」



 カーヤと呼ばれた存在を見て神様は蓮華微笑を見せると手を挙げる。そして立ち上がった。



「あの蛇みたいな大きさのお前がおうきゅうなった。カーヤ、いかにも私が神様だっ!」



 カーヤは一度トトを見るとトトが頷くので開いた口がふさがらない。



「な……」



 そして発した音。それを聞いて神様はうんうんと頷く。



「あまりの嬉しさに声も出んか、それもしかたあるまいな。あの頃の貴様は私の後ろをヒヨコのようについて回ったものよの!」

「なんなのです! このちんちくりんは! トト、このカーヤを怒らせたいのですか? こんなチビが神様のわけがないでしょう! 神様はもっとトトよりも身長が高く、なのにお美しい黄金の御髪は地につくほどの長さをもって、その微笑みは朝日のよう。その神様を侮辱するとは、ここにいる者命はいらないのですか?」



 怒り狂うカーヤ、その怒りに比例して山の天気が悪くなる。トトを含むここにいる皆がこのカーヤが何やらとんでもない存在であろう事を知る。



「なんだその。カーヤだっけ? お前の気持ちは分からなくはない。『双竜は藤瑠璃の夢を見るか 著・結城星乃』の作品に出てくる真竜とは違って神が神たる所以と言えるような神気も威厳もこの神様にはねーんだけどさ。でもコイツは神様である事は間違いないんだよ」



 大友がそう言ってカーヤにフルーツティーを渡す。それにカーヤは顔を暗くしてから呟く。



「人間のおなごが、このカーヤに気安く振れるとは失礼の極みではありませんか? 死にたいんでしょうか?」



 頭をかくと大友は頷く。



「ごめん、俺。男なんだわ」

「は? 貴女、私を馬鹿にしているのですか? そんな美しい顔をした男子が神様以外にいるわけがないでしょう」



 神様がカーヤにこう話す。



「私を除き、ここにおるものは皆、男子だぞ! そこな汐緒もの。約束通り貴様の婿候補を連れてきたのだからなっ! 覚えておるか? 月明麗夜であったの? ダンタリアンは捨て行くと言った事に酷く怯えておったのを私は昨日の事のように思い出すぞ」



 神様の話を聞いてカーヤは再び開いた口がふさがらない。二重の衝撃。全員が、トトですら女子と言われれば信じてしまうような愛くるしい見た目なのに、男子であるという事実。トトは確かに大友に関しては男子ホルモンはどうなっているのやらと無表情で考える。そしてカーヤは泣いた。涙を隠す事なくぽろぽろと涙を流した。



「……そんな、でも貴方が神様なのですね?」

「そうだの、私に触れればわかるであろう?」



 神様の顔を両手で触れてからもう一度だけ涙を流してカーヤは神様を見つめた。そしてトトには見せなかった幼い笑顔で笑う。

「神様、そのお姿には何も聞きますまい。ただ、ただ約束をお守り頂いた事、感謝のしようもございません」



 神様はカーヤの頭を撫でる。その様子にトトは表情を変えないが、やや嫉妬する。神様はカーヤの頭から手を離すとカーヤに聞いた。



「カーヤ、どうであった? 私のところにおるトト。中々に良い男であろう? まだ1歳だがな。そして今回私が選んだ物語どうだ? 楽しんでおるか?」



 神様の質問に頷く。



「この物語を紡ぐ者、大陸の術者でしょうか? 百年生きた物や者は変化。即ち妖となり、それが千年生きるという修行の末、神格すると……実に興味深いです」



 真剣な顔で作品について神様に報告するカーヤ、それを神様はうんうんと頷く。それに大友と汐緒は苦笑して二人で話した。



「まぁ、山猫っていうのがちょっと面白いよな? なんというかそもそも希少性ありそうじゃん?」

「そうでありんすな? でもカーヤさんの言う事。あちきは少しわかるでありんす。魔妖の王。即ち神のような存在に拾われて、神に近い存在になる。これはよくある昔話でありんす。それも、そういう話がありそうだとあちきも感じてしまったかや、そして玉三郎。良い名でありんすな? 神格に襲名したという事かや」



 恐らく、そこから取られているのではないかと考えられる。梅幸あたりのキャラクターが登場すれば、物語という事も相まって実に感慨深い。



「どういう事かしら、そこの蜘蛛の変化」



 汐緒は笑い顔のまま、大分イラついている事をトトは何となく分かってしまった。但し、トトの店で接客業をしている為か、それともトトや神様の顔を立てたのか、我慢してカーヤの目の前までくると言う。



「これは、一本取られたかや、さすがは名のある()神のお嬢様でありんすなぁ! 本作は設定においてあちき達が知る口伝物語と、そして人間が作った芸能。そして今の作家さん達との実に興味深い作りをされているんでありんす。さぁ、このあちきが作り申したダッチベイビーでありんす。お口汚しにいかがかや?」



 汐緒の紳士な態度にカーヤは上品に笑うと口を開ける。それに汐緒は驚いた。食べさせろとそう言う事なのだろう。



「あ、あーんかや」



 フォークをカーヤに向けて食べさせるとカーヤはもぐもぐと美味しそうにそれを食べてから汐緒に言う。



「及第点ですね」



 ピキっと音がしそうなくらい汐緒は血管を見剣に浮かばせるが、なんとか我慢。そして笑う。汐緒は怒りを収めるようにカーヤに話す。



「魔物が影武者をするというのもまた昔語りによくあるかや、これは人間よりあちきら妖やカーヤお嬢様のような存在にこそあるあるを感じはせんりょ?」



 くくくとカーヤは笑う。それはトトや大友には理解できない領域の話。むしろ神様ですらこの汐緒とカーヤ。本物の妖怪に属するこのWeb小説の世界に関わらないと存在すら知る事のなかった彼らの理解。



「そうですね! 人間という存在の、力の強さ。そして彼らの中には私たちを普通に見えてしまう方もいますし……香彩という童。きっと猛き者になるでしょうね」

「そうでありんすな! あちきもまぁ術者には痛い目を見せられたかや」



 少しばかり妖怪あるあるで盛り上がる度にカーヤは口をあけてダッチベイビーを所望する。それを食べさせながら汐緒は語った。



「この物語でもそうでありんすが、式という物を物語では紙や物として扱うんでありんすな? それは神と紙をかけているダジャレである事を実は皆知らんのでありんす」



 実際、詳しくは違うのだが、そういう意味合いがあるのでトトも神様もあえてなにも言わない。



「へぇ、物語の続きの繋げ方が常にイベントなんだな」



 妖怪共が宜しくやっている中で、大友はトトが淹れてくれた紅茶を飲みながらトトが綺麗に飾り切りした桃、リンゴ、ザクロと神様と一緒に舌鼓を打ちながら物語を楽しむ。それに興味を示したのはやっぱりカーヤ。



「人間、何がいいたのかしら?」



 大友はザクロという普段食べないフルーツの甘酸っぱさを楽しみながら片目をつぶってカーヤに言った。



「おぉ、いきなりこっち来たな。いや、物語を書く上で次を読みたいとか読ませたいとか思ったりするわけだろ? この作品は、手っ取り早く次どんな事が起きるのかって事件とか想像しやすい流れが予告的に入る事が多いなって言ってるんさ。今回だと二人が連れ去られただろ? で気になって話を続けると叶視点の物語に繋がるわけだ。なんてことはないけど、作者によっては一話ごとの完結して次というパターンもあるだよ」



 大友が食べようとしているザクロをじっと見るので大友はほらよとザクロをカーヤの口元へと持っていく。



「まぁ! 人間が恥を知りなさい」

「残念だが学生は恥知らずなんだよ」



 上目遣いに怒るカーヤを大友が冗談でいなすとカーヤは少しばかり嬉しそうにした。いわゆる逆ハー状態を楽しんでいる。



「恥知らずに教えてあげましょう。強すぎる力は何も人だけじゃなくて、神や妖にも等しく毒なのよ」

「だろうな。因果応報ってやつだ」



 そう言ってザクロを再びカーヤの口元へもっていきそれを食べようとしたカーヤの前で大友は手首を返して食べさせない。

 そして自分でそのザクロを食べた。



「人間!」

「大友だ」



 そう言うとカーヤは下唇を噛んで言い直した。



「大友、この私に数々の失礼な態度、許しませんよ……?」



 カーヤの口元に再びザクロを持っていく。少し警戒してからカーヤはそれを食べた。大友が何をしたいのか……



「俺は俺の事を名前で呼ばない奴がすかん。それだけだし」



 カーヤは少し顔を紅潮させて怒ろうとしたが、それが大友のルール。妖や神にも似たようなルールが存在する。



「この私をここまで楽しませた人間は貴方がはじめてよ大友」

「そりゃ、ありがとさん」



 丁寧懇切にカーヤに対応をしたトト、いらつきながらも半同族としてカーヤを持て成した汐緒。そして少しばかりカーヤをからかう大友。三者三葉の接し方を見ながら満足するように神様は言った。



「どうだカーヤ、貴様が気に入った婿候補はおるか?」



 そう言えば神様はそんな事を言っていたなと三人が思い出して、トトと汐緒は神様に抗議しようかとした時……カーヤは答えた。



「えぇ、神様決まりましたとも」

『双竜は藤瑠璃の夢を見るか 著・結城星乃』実にキャラクター小説としても、楽しめる本作ですが、次回をもちまして8月紹介作品終了です。この間に皆さん是非本作を読んで復習してくださいね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ