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セシャトのWeb小説文庫2019  作者: 古書店ふしぎのくに
第一章 『蛭子神 著・三上米人』
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事実から見るホラーと酔う神様

思いのほか寒くなってきましたね^^ 2月が一番寒くなるそうですので、暖かくして風邪に気を付けてくださいね! 寒い時期は昔病気が流行りました。これらを百鬼夜行なんて言われておりましたね。

今回はニューネッシーのお話を少し入れさせていただきましたよぅ!

「煙草は美味しいものなんでしょうか?」



 主人公は海辺で会う老人の喫煙姿を見て、皆が吸うから美味しいものだろうと結論づけていた。さて、それはどうだか分からないが、美味いというよりは気持ちがいい方が強いかもしれない。日本の喫煙者の9割は本来の煙草の吸い方を知らない。煙草は飲むな、腹の足しにはならぬという言葉があるが、本来煙草は含むものであって肺に入れない。

 これは簡単に書くと、口内より、肺で煙草を吸った方が早く気分が良くなるとでも考えてもらえばいい。本作の読者年齢は不明だが、一言。

 喫煙は成人してもしない事をオススメする。



「煙草のぉ、私はあんまり好きではないの」



 神様がそう言うので、セシャトはそういうものなのかと頷いた。



「腹にたまらんしの、しかしニジマスの釣り堀。最近はめっきり見なくなったの」



 本作の主人公が祖父に連れて行ってもらったというそこ。少し前は日本全国山間部等によくあった。釣ったニジマスをそのまま塩焼きや唐揚げにして食べれたり、神様は涎を垂らしていると大将が言った。



「のどぐろでも焼きましょうかい?」

「いいのぉ! 人肌で、越乃寒梅」



 神様がそう言ってお酒を頼む。それに大将は眼光を光らせて神様にぬる燗を差し出した。それを一口飲んで神様は聞く。



「大将は釣りとかするのか?」

「へぇ、ヘラを少し」



 最も難しい釣りの一つ、ヘラブナ。1ミリ動いたかどうかのウキの動作と人間の反応の勝負。達人になってくると、針は小さく、ハリスもどんどん細くしていく縛りプレイを行われるらしい。



「ほぉ……喰えぬ釣りというのもなんだか可哀そうだの」



 実際、レジャーとしての釣り。釣った魚を逃がしてあげる。実のところ、釣られ人の手で触れられた魚は大分弱っている。神様の言う可哀そうというのはそういう意味だった。差し出されたのどぐろの焼き魚に舌鼓を打ちながら神様はセシャトに言う。



「海開きをする前に海で遊んでいると連れていかれる。これはよう分からんの、海開きは歴史が死ぬほど浅い。海水浴レジャーが儲けるのに適したシーズンに関係各所が動く為のもので、海で楽しむ為の物では実際ないからの。そもそも、神事も実際遊びみたいなものだと考えると寒中水泳しかり、シーズンオフの海遊びは古来から行われておる」



 神様のうんちくを聞いて、セシャトがポンと手を叩くと実際おじいさんが言いたい事の意味を語ってみた。



「神様、あれじゃないですか? シーズンオフのレジャーは危険が伴いますし、そういう意味で危ないですよ! 死んじゃいますよというのを連れていかれるって言ってるんじゃないですか?」



 実にそれっぽい事を言うセシャトだったが神様がもふもふとのどぐろをつつきながらこう言った。



「連れていかれるという意味なら、シーズン真っただ中の夏の方がリップカレントとかが起きやすいではないか」



 いやに神様がセシャトに絡んでくる。それも中々に正論という名の屁理屈で……これはいかにとセシャトは思っていたが一つの答えに到達した。



「神様、酔ってますね?」

「酔ってはおらんわ! 馬鹿者めがっ!」

「それは酔っている人の常套句です」



 そう、神様は酔っぱらっていた。

 元々、お酒が好きだという事はセシャトも知っていたが、神様が飲酒している姿なんて見た事がなかった。そして確信した。

 神様はお酒は好きなのかもしれない。

 が、どちゃくそお酒が弱いという事。



「神様、もう! お酒なんて飲むからですよぅ!」



 赤い顔で神様はセシャトを見る。



「いつも海に入り浸る老人。こやつの弟が何やらよく分からないモノを吊り上げておろう? 手と足に尻尾。そして水かきがあったとな? 一体こやつの弟は何を吊り上げたんだろうの? 海の謎さ加減は中々ホラーだからの」



 ケケケと笑う神様にセシャトは水を飲ませる。そう言えば神様も海の巨大魚。ジンベイザメを依り代にしている為、海とは中々に縁があったりするんだなとセシャトは思いだした。



「なんとなくですけど、かっぱとかでしょうか?」

「かっぱ? かっぱが海におるなんて聞いた事がないぞ」



 確かにそれもそうだ。

 主人公は猿の死体でもひっかけたんじゃないかと一番ありえそうな事を言ってのけるが、老人はそれを否定する。

 子供の頃の思い出という物は一つくらいアレはなんだったのだろうかと思う物があったりする。実際は記憶に鮮明に刻まれた夢だったり、実際には起こりえていない事を誤認識していたりするケースもあるという。



「じゃあセシャトに面白い話をしてやろうかの? 超記憶者を知っておるか?」

「いえ、存じ上げません」

「あれだ。物凄い記憶力のいい奴だ。母親から生まれてくる瞬間の事を覚えておったりする。リアル異能力者だの。そういう連中のおかげで、幼少期の記憶などの解明は随分進んでおる。子供の頃、夜起きたら幽霊を見たというのだ」



 神様がのどぐろの皮に醤油を垂らして美味そうに食べる。おばけというフレーズを聞いてセシャトは興味を持つ。



「おばけは実在するんですか?」

「その超記憶者はの、夜に怖い夢を見た。そして目覚めた時、夢で見た化物がこちらをずっと見ていて心臓が止まりそうになったらしいぞ。ふとんで顔を隠して、ゆっくりと冷静にもう一度見てもその化物はおる」



 ごくりと喉を鳴らしたセシャト。この神様の話の結末は? そんな化物がいたならその超記憶者は今頃……



「食べられてしまったんですか?」

「いんや。ずっと一時間以上その化物はおったそうだ。怖いと思うが、一体何者なのかとずっと睨めっこをしておったらしいのだ。すると、突然その超記憶者が見ていた物は化け者ではなく鞄や帽子かけだった。ようは夢で見た物が強烈すぎて、脳が誤認識してそやつにその姿を見せておった。これがこの話の真相な」



 セシャトはほっとした。そして神様に問う。



「という事はお化けはそう言った目の錯覚や脳の暴走という事ですか?」

「まぁ、全部が全部そうとは言えんだろうの。ただ、電磁波を浴びると人間の目は球体を目撃したりするらしいの、いずれにせよ。超記憶者がはっきりとその記憶を覚えておるからこれは見間違いで終わるが、そのあたりの記憶が曖昧だとどうなる? その摩訶不思議な物は曖昧な記憶が育てて実に化物としての格を上げよる」



 ここまでの神様の話を聞いているとセシャトは神様が言わんとしている事が全然分からなくなってきた。という事はお爺さんの弟が釣り上げた物は実際は対した物ではなく、何か記憶の思い違いだったのではないか……

 何故なら、そのお爺さんの思い出は実の弟が失踪する事件につながるからだ。



「PTSDですか?」



 セシャトの質問に神様はへっと笑う。正解だったのだろうかと思ったが、神様はお酒を舐めるように飲むと大将を見る。



「大将。海といえば、昔この日本でも変な物が漁船に引っ掛かった事件があったよの?」



 神様は話しているセシャトではなく、蚊帳の外にいるハズの大将に向かってそう言った。それには何かの意図があるのか……というよりセシャトの知りえない昔の話である。

 大将の方が知っている可能性が極めて高い。



「あれは国際的な問題になりやしたな」



 オカルト好きなら聞いた事くらいはあるだろう。実際にネットで調べればその写真も確認できる。



「名前はあえて伏せやすが、ある漁船の網に、明らかにプレシオサウルスみたいな恐竜のような姿をした死骸が引っかかったんでさな。腐敗が激しかった為、他の魚がダメになるといけないと、写真を撮って海に捨てたんです。あの昭和の時点まで恐竜が生きていた可能性があると、それを捨てた事で世界中から轟轟避難を浴びました。先ほど聞いていたお爺さんの話ですが、もしかしたら、本当に何かを吊り上げてしまったのかもしれませんね」



 結局その事件は、最終的にはウバザメの死骸であるという事で落ち着いたが、実際に見てもらえば分かるが、果たしてあれがウバザメの死骸だろうか? 海に生きている漁師が、ウバザメの死骸だと分からない事があるだろうか? と色々な考察がされるが、世界中が満場一致でクジラの死骸であるという事で片付けた。

 何故だ?

 それはこのお爺さんの話にも通じるのかもしれない。本来、見つけては、見てはいけない物。世にでてはいけない物が上がってしまったからなんじゃないだろうか? 

 それを聞いてセシャトは瞳孔が広がる。



「ふひゃっ! なんだかリアルに怖いお話ですねぇ」



 セシャトがややビビったところで神様は酔いが醒めたかのようにまじまじとセシャトを見つめる。



「リアルに怖い話だの。老人の弟は水死で戻ってきて、それから大漁が続いたと、老人の弟はえびす様になったと村で祀られ、老人は弟はえびす様に連れていかれたといいよるの、仏として見つかっておるのにの……不気味な話だとは思わんか? こういった島、狭い村コロニーの独自ルール故の事かもしれんの」



 神様の言っている意味が理解できないセシャト、そして大将。熱いお茶を二人に出しながら神様の話に耳を傾けていた。



「たしかに、得体のしれぬえびす様とやらも怖いが、私は如何せん、子供一人死んで、この老人の話す空気感では哀しみより他の感情の方が多くはないかの? 歓喜と畏れ、いずれも死した子供に向けるものではない」



 神様の言わんとしている事、人間の恐ろしい一面について、得も知れぬ者に人間が恐怖するように、人間はあらゆる事に関して理由をつけたがる。

 それは時として狂気的に、第三者が理解に苦しむような見解を出してくる。これでは、老人の島のえびす様信仰はまさに……

 ある種の人身御供ではないかと……

 熱いハズの緑茶を飲みながらセシャトの背中がぶるぶると震えているのを感じていた。

そういえば、少し前にSNSで不気味なお猿さんの度座衛門が上がりましたよね? 海というものはこの地球において一番摩訶不思議な場所かもしれませんね!

『蛭子神 著・三上米人』本作はもう読まれたでしょうか? ホラー側面もそうですが心情描写がやはり本作の楽しむ大きなポイントだと思いますよぅ!

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