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セシャトのWeb小説文庫2019  作者: 古書店ふしぎのくに
第五章 『愛した人を殺しますか?ーーはい/いいえ 著・夢伽 莉斗』
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作品は作者の鏡ですか?ーーはい/いいえ

うまく行けば明日頃でしょうか? あれを皆さんに公開する事ができそうですねぇ。

もう一つの……

みたいな感じですねぇ!

「ここは何処かしら?」



 暗い海を漂う船の上にいる事は分かった。足元に落ちている本を拾うと、ヨミはそのタイトルを見て目を疑った。


『異世界で愛した人を殺しますーーはい 著・セカイ』


 弟・セカイの書いた物語に入る時、ヨミはスマホで『愛した人を殺しますか?ーーはい/いいえ 著・夢伽 莉斗』のページを開いていた。

 単純に世界が混ざった。それがどんな意味を持つのかヨミには分からない。



「確か、ブラッディーメアリーって最後にタバスコ入れるんだったっけ?」



 ラムズの口にしたカクテル。それが未完であるように、歪な世界の中に入ってしまった。戸惑っているヨミに懐かしい声がかけられる。



「よく知ってるじゃん。姉ちゃん」



 振り返り、その姿を見た時、ヨミは既に泣いていた。長身の少年。つまらなさそうに笑う自分の弟。



「セカイ、本当にセカイなの?」

「あぁ、でも姉ちゃんどうやって? 異世界転生者? というかここ何か俺の物語じゃないな」



 事情を説明するとセカイは簡単に理解した。



「あー、愛殺の物語と繋がっちゃったか。へぇ~」

「セカイ、知ってるの?」

「えっ? まぁまぁ有名だよ。更新が滞る時がわりとあるけど、よく追いかけてたよ。ちな、俺の生前は俺と相互フォローだった」



 セカイの話を聞いて感動の再開のハズが、なんだか拍子抜けしたヨミ。

 元気そうで楽しそうなのだ。



「ラムズってさ、結構メアリロスに陥るじゃん? あれを宝石集める事で代価してるのかもね。それにしてもラムズ・シャークは容赦がないよな?」



 スワト会の男を殺した描写に不快そうな表情を見せるセカイ、それにヨミは姉らしくセカイを諫める。



「物語の中の悪者じゃない」

「姉ちゃんは知らないと思うけどさ、物語の中は物語の中で人の営みがあるんだ。それを……」



 腰に刺したサーベルを抜くとセカイは呟く。



「俺の世界の俺と莉斗さんの世界のラムズ。どっちが強いんだろうな? 世界が繋がってるなら、俺の正義でラムズ・シャークを殺れるんじゃね?」



 セカイは見た事もないくらい楽しそうにそう言う。普通じゃない。それにヨミはこう言った。



「貴方誰?」

「俺はセカイだよ。いや、セカイが作ったセカイか? そうだね。俺に近い存在はレオンかな」



 愛殺のセカイにおける現実世界からの転生者。セカイの話を黙って聞く事にしたヨミにセカイは話す。



「神々に優劣が無い。ありえないよな。レオンは賢いよ。同一個体のコピーでもない限り優劣は存在する。さらに言えばスワト会も甘いよ。一神教ではなく最高神? 馬鹿馬鹿しいに程がある」



「セカイ、でもさ。人を殺す事を厭わないような世界で宗教がなりたっているのも何だか変じゃない? だって種族で考え方が違うでしょ?」



 ヨミの意見は最も、宗教が人間の間だけで広まっても仕方がない。なのに、思考回路の違う種族だけで構成された世界。宗教が広まりずらい。

 それ故布教すら意味を持たない。



「あー、姉ちゃん。あったまいい。じゃあスワト会も悪じゃん」



 セカイは自分一人で言って自分一人で納得してしまっている。ヨミも薄々目の前のセカイは本当のセカイじゃないと分かりつつも自分の知っている見た目で、知っている声で話すセカイの事をどうも疑えないでいた。



「宗教が雇う人が暗殺できるような人ってなんかリアルだよね。私達の世界でもさ、宗教関係って……」

「姉ちゃん! 元の世界の話はやめろ。それより、甲板で何か飲もう」



 甲板にある椅子に腰かけると、シュワシュワと炭酸がはじける何かをセカイは差し出した。



「ビールじゃなくてごめん。エールだけど、中々美味いよ」

「セカイ、私達がお酒なんて」

「この世界では関係ないよ。それに姉ちゃん、酒なんて飲んだ事ないだろ? 口にしてみろよ。どうせジンジャエールみたいな味しかしないって、それよりさ。シーフの能力面白いな」



 謎かけに対して答えが分からない限り不死身。実はこの能力、レオンが使えたら最強の魔法になりうる事をレオンは分かっていない。



「進学校なのにな。やっぱ落ちこぼれだからか」



 これでもヨミは一欄台学園。超進学校に進んでいるから言わんとしている事が分かった。



「数学上の未解決問題?」

「おぉ、姉ちゃんさすがだな」



 偶然、同じクラスの変人。

 茜ヶ埼理穂子が授業中、婚約数が無限に存在する理由を一人で語っていた事を思い出しただけだった。ヨミの持ってきたスマホを見ながらセカイは嗤う。



「へぇ、また別の転生者がクラーケン殺したんだ。次はリヴァイアサンでも作るのかな? 倒しがいありそうだなぁ」



 セカイはとにかく戦いたがる。ヨミはそれ故聞いてみた。



「セカイはその、神力みたいな物あるの?」



 愛殺の用語で言ったので、理解するのにしばらくかかったらしいセカイは何度か頷いてから話し出した。



「あぁ、チートね。俺は死なない。誰にも負けない。誰からも必要とされる、何も俺には通用しないし、痛痒も覚えない。俺を作ったセカイが命を塗り込んでそう作ったから」



 作品上。最も禁忌に近い存在が今目の前にいるセカイ。

 俺TUEEEEどころか、編集時点で確実に却下される設定を持っている。



「愛ってさ、おかしくね? 生殖行動は種の存続の為だ。生物その物として考えれば、誰とでもしたがる事は異常はない。メアリ達人魚は滅ぶぞ」



 これまたヨミは上手く返してみた。



「好きになるっていうのも、色々あるんじゃない? 確実に種の存続が可能なつがいが本能で分かっていてそれが恋愛感情のような物として働く。とか?」

「成程、それもまた本能か。それにしても呪文で魔法を使うって面倒だな。大半の日本人はこの世界に行くと発音の関係で魔法の使用自体不可能じゃね?」



 日本人は基本的に耳が出来ていない。

 というより特殊言語である日本語の音になれすぎていて脳が音を勝手に理解できる音で認識してしまう。それ故、発する事が出来ない音が他の人種より多い。

 例えば日本国内で英語をネイティブレベルで使用できるようになるのは不可能である。

 もしその気があるなら、英語圏で、周囲の物を全て英語にして生活をすれば二年あれば標準的な生活レベルの会話は出来るようになるだろう。



「うん、確かにね。この作品の魔法は私達には使えなさそうだね」

「俺は詠唱無しで魔法くらい使えるけどな」



 何でもありなセカイはあーそうだと思い出す。



「この作品で一つ間違っている事があるんだ。性行為をしたい事が性欲の正体じゃない。性欲は脳が刺激物を求めてるだけで、各種麻薬で代用できる。性行為をしたいのは本能で種の存続をしたいからだ。これも人間の誤認で行為と昇華を間違った方法で結び付けてるから。結果人間は快楽に弱い」



 依存症に陥りやすい男女の比率は変わらない。結果として欲に対する依存も変わらないのである。ラムズは愛については語れないが、何故か人間の欲と抑制については非常に分かり易い説明を行う。人間は快楽に弱い反面、動物と違い我慢できる唯一の種でもある。

 ヨミはやたらと性行為について数話書かれている内容を読んでも何とも思わない。というより、少しばかり作品外の物が見えてきた。



「この作者さん。男女の営みを美化したい半面、嫌悪しているのね」

「あはは、俺や姉ちゃんみたいに何とも思わない人間もいれば、そうでもない人間もいるって事だろうな。でも何か黒い物が伝わってはくるな」



 作品は作者を映す鏡である。

 特にWeb小説はその時々の気持ちやテンション、信仰に左右されがちである。気持ちが伝わるというのはある種の一芸ではあるのかもしれないが……



「レオンって結構スケベだよね。でも憎めないけどさ。セカイはこういう気持ちってわかるの?」

「全然、俺はハーレム物には興味がないから」



 そう言うセカイは再び嫌悪する表情をした。それは作品内では微笑ましく可愛いと思えるようなシーン。ヴァニラがそこら中の酒を飲み干し宿から酒の提供が出来ないと言われるシーン。



「世の施しを独り占めする奴は、生かしてはおけない。悪と断定する」



 セカイの中でルールのような物がある事にヨミは気づいた。作品の話をしているかと思いきや、唐突に不快感をあらわにする時がある。



「セカイ、もしかしてセカイが自殺した理由ってさ」



 どうしょうもない理由なのではないかとヨミは確信に迫っていた。彼は世の不条理に対して怒り、正義を執行したいとそう考えていたのかもしれない。

 生きる為に躊躇なく命を奪うラムズ、立った一人で酒を飲み干し他者にそれが回らない迷惑をかけたヴァニラ。

 そう言ったはみ出した者に対する牙無き者達の怒りや恨みを一人で受けている。

 それは現実世界で言えば、納得のいかなり事で虐げられた者。兄弟で出来の良い方と比べられている者や生徒達。ありとあらゆる不平等に対して、それは一個人の力ではどうしょうもない事。

 彼は自分の創造する世界に自分を書込み、その世界で秩序を守る使者になる事で折り合いをつけたのか……



「何? 姉ちゃん」

「セカイ、アンタ。もしかして正義を執行する為に自殺なんてしたの? こんな自分の世界に篭って」



 恐る恐るヨミはセカイを見るとセカイは少し考えるようなそぶりを見せてから、いつも通り面倒臭そうな表情を見せた。



「いや、わかんね。俺は俺を作ったセカイじゃないからさ。でもなんだろ、俺の世界は俺が秩序を守れるけど、世界がくっついて秩序を乱す奴がいるなら、それは俺が皆滅ぼさなきゃいけないと思うかな。じゃあ行こうか、異世界の愛する者達を殺しにさ」



 散歩にでも行こうかという体でそう言うセカイ、ヨミはどうすればいいのか分からないでいる中。

 空間に穴が開いた。



「なんだぁ?」



 そこから現れたのは、あの古書店『ふしぎのくに』にいた金髪にパープルアイの子供。自称神様。



「貴様、えらい事をしてくれたのぉ!」

愛とはなんなんでしょうね?

紹介小説は残すところあと1話ですが、セカイさんの登場。物語が混ざる。どうなるんでしょうね?

何やら、神様が随分怒っているようです。

そんな5月の紹介作品『愛した人を殺しますか?ーーはい/いいえ 著・夢伽 莉斗』を楽しんでいますか?

まだ読まれていない方は是非この機会に!

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