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セシャトのWeb小説文庫2019  作者: 古書店ふしぎのくに
第五章 『愛した人を殺しますか?ーーはい/いいえ 著・夢伽 莉斗』
39/111

お城のお茶会は楽しいですか?ーーはい/いいえ

さてさて、私のあずかり知らないところで、もう一人の私が登場する『魔本少女スイートセシャト』の完成が間近になってきたみたいですよぅ! どうやら、パラレルワールドの私は世界を守れなかったそうです。とってもダークなファンタジーですねぇ^^ まったくスイート要素をこれだけ聞くと感じませんねぇ^^

「やぁ、好きなところにかけてよ」



 ヨミは重工棚田の総帥であり、同じ学校の先輩の棚田クリスにお茶に招待され今に至る。

 ヨミは呼ばれて来たものの、5分で帰りたくなった。お城みたいな敷地の門をくぐると、大勢の使用人らしき人々に頭を下げて出迎えられる。

 笑顔のクリスが出迎えてくれたかと思うと、クリス直属の使用人らしい、沢城という女性に連れられて今やドレスに身を包んだ自分がいる。



「そのドレスとっても似合ってるね。好みを聞くのを忘れていたから色々用意させてもらったよ。好きな物を好きなだけやってほしいね」



 先ほどまでいた沢城という女性はいないが、代わりにクリスの横に立つ外国の少女に目が行った。



「彼女気になるかい? 当社の誇る最高レベルのオートマトン・ノベラロイド。メジェドだよ」



 何かの冗談だろうとヨミは話を流してから、今自分がここにいる理由それを率直に尋ねた。



「棚田先輩、今日の要件はなんでしょう?」

「『愛した人を殺しますか?ーーはい/いいえ 著・夢伽 莉斗』は楽しめているのかなと思ってね?」



 クリスはその赤い瞳でヨミを見つめる。何故、古書店『ふしぎのくに』でその作品に触れた事を知っているのか……ナチュラルな金色の髪を軽くかきわけてクリスは話し出す。



「メジェド、ヨミちゃんは何処まで読み終えたんだい?」



 名前を呼ばれ、メジェドと呼ばれた少女は今日のスケジュールでも読むように話し出す。



「島にてラムズ達が魔物とと交戦、メアリ等はラムズの死体を確認したあたりです」

「成程、ラムズが死んでしまった……が実のところそうでもなかったね?」



 とてつもない魔法と、作中では魔力において上級種族であるエルフに匹敵するようなその力、ラムズは自らの傷を癒して生還した。



「僕はね? 彼の名前、そして宝石に狂っている性癖から、一つの連想をしてしまったんだよね。ラムズ、複眼の子羊ってね」



 沈黙の子羊、神々の七つの魂(宝石)をその身に宿した存在。クリスの話を知らないヨミは茫然としていたので、クリスは「失礼」と言ってその話を流した。



「ラムズ達はスキュラなる怪物を前にしているね。恐らくこの怪物は古代ギリシャ神話に記載されたあのスキュラかな? 嫉妬狂いのヘラによって不幸を辿る王女様。スキュラも元々の王女の名前も求婚という意味が訛った言葉でね。それそのものが当時としては魔力のようなものだったのかな?」



 饒舌に語り、銀の杯で水を飲むクリスを見ているとヨミはあの古書店『ふしぎのくに』にいた神様にどことなく似ているなと思った。



「クリス先輩って弟さんか妹さんとかいますか?」

「ううん、ボクには姉しかいないよ……」



 それにメジェドが口を挟んだ。



「マスター、アリアお嬢様は?」

「あぁ、そういえば妹もいたかな」



 どうでもいいようなぶっきらぼうな態度、ヨミはクリスと出会って初めてこの態度のクリスを見た。



「それって神様って子ですか?」

「……詳しく話を聞かせてもらえるかな?」



 ヨミの話を聞いてうんうんとクリスは頷く。そして「へぇ、そうなんだ」とただ一言呟いた。その言葉の冷たい事。ヨミはえも知れぬ恐怖を感じたが、突然クリスは話を変えた。



「このスキュラとの戦闘シーン、中々面白いよね。倒す必要はない。石板を書き写しただけってところね。まぁ、ボクなら立ちふさがる者は徹底的に叩き潰してしまうかもしれないけど」



 クリスがこんな好戦的な事を言うとはヨミは思わなかった、だが少しばかりクリスの見解を聞いてみたい気が先にたった。



「クリス先輩、魔法とか使えないじゃないですか、どうするんですか?」



 クスっと笑うヨミにクリスもほほ笑んだ。並みの女子なら一瞬で心がもっていかれるであろう王子の微笑み。



「そうだね。ボクは魔法は使えないけど、ミサイルくらいなら手に入れれるかな? 人間の暴力はもう既に神を越えているからね。人類の火を越える魔法は存在しないんじゃないかな?」



 沢山の魔法使いが、必死で攻防していたクラーケンであろうと、スキュラであろうと、ボタン一つでクリスは焼き払おうと言う。

 なんと夢のない話か……



「でも僕なら、このスキュラも飼いならしてみせるけどね。実にかわいそうじゃないか、人を愛してはいけないなんて、そうは思わないかい? 二つの意味で消える島をボクなら二つの意味で消えない物にしてあげよう。消えても構わない人間なんて五万と今の世界存在しているんだしね。それにしても神と名乗る連中はいつも不快極まりないね」



 さらっと恐ろしい事を言ってのける。



「それは地の神と光の神でしょうか?」

「あぁ、自分の手を殆ど煩わす事無く、絶望を作り上げる。これは聖書でも物語でも、古書店『ふしぎのくに』でもそうだと思うね」



 本作の消える島において、本来交わる事のないハズの種族の結びつきに怒った神の行いにより、種族が滅び、その滅んだ種族を作った神の報復により消える島は実質存在する地獄と化した。それをクリスは正直に不快と言ってのける。

 そんなクリスにヨミは少しばかり聞いてみたい事があった。彼の事、ラムズをどう思うのか、立場は違えど、二人は船長と社長。王の立場である。



「棚田先輩はラムズの事をどう思いますか? ちょっと変ですけど、強いし、カッコイイですし、おまけに頭もいいですよね」



 石板の古代文字の訳を瞬時に理解してのけた。一体どういう教育を受けて来たのか、彼は運命をただひたすらに疑わない。



「そうだね。もし会う機会があれば、長旅の話を聞いてみたいものだね。これでもボクは作家でもあるから、実に楽しい時間を過ごせると思うよ」



 相手は海賊、この屋敷には貴重な宝石の一つや二つくらいあるだろう。されど、このクリスはそれを惜しいとは思わなさそうだなと同時にヨミは思う。



「どうせなら、僕はメアリも会ってみたいね。神と悪魔にはあった事があるんだけど、人魚は実はないんだ。それにしても日本各地にある人魚のミイラとやらをラムズが見たらどう思うんだろうね」



 あれらは大体見世物用に上手く作った作り物。されど人魚が好きだと言う彼、メアリに石を投げるだけで犯人を殺害するような、彼に人魚のミイラですと見せたら言わずもがなかもしれない。



「ふふっ、棚田先輩って結構お茶目なんですね」

「あはは、そうだよ。僕が美しくすぎるから、こういったところ中々みてくれないんだけどね」



 そして自分への自信が圧倒的なのだ。ラムズがメアリの鱗に触れ、全体像を見たいと望むシーンそこを思い出してヨミは聞いてみた。学校で女子を引き連れる彼に……



「棚田先輩ってどんな女の子が好きなんですか?」



 それにメジェドがピクりと反応する。ヨミはすぐに、このメジェドはクリスの事が好きなんだなと察した。



「好きな女子か、難しい事を言うね。しいていうなら僕と似た見た目の娘かな」



 ラムズとは似て非ざるベクトルの異常性。その言葉を真に受けたのはメジェド、手鏡を出して自分の顔を眺めていた。



「ラムズは意外と少年のようだよね! こういうところも嫌いじゃない。だけど、扉を開くなと言われたら僕は開きたくなっちゃう質なんだよね。押すなと書かれているボタンを即押すタイプだ」



 クリスはラムズを子供っぽいと言うが、度々クリスも似たような幼い反応を見せる。それを言うと彼の従者が怒りそうなので黙っているヨミ。

 そんな時、クリスがメジェドに耳打ちをする。



「畏まりましたマスター」



 五分程で戻って来るメジェドは何かのケースを持ってきた。それをクリスは開ける。その中には青い宝石。手袋をするわけでもなくクリスはそれをヨミに渡した。



「スターサファイアだよ。ラムズはサファイアのようだと、メアリはオパールに近いと言うなら、このあたりの色をしているんじゃないかと思ってね。メアリの鱗だと思って触りまくってくれたまえ」



 透明感が普通のサファイアより弱く、深みが強い。方法は違えど、彼の読み込みは古書店『ふしぎのくに』に通じるところがあった。それなら拷問についてはどうだろうか? 彼らは中々えげつない事を言ってのけた。



「拷問? 僕はそんな前時代的な事はしないから分からないけど、ラムズの言う拷問を人間同士で行った場合。僕が犯人でも絶対バレない自信はあるかな。心も読まれない、自白剤も通用しない。そういう体質なんだ」



 ただのサイコパスじゃないだろうかとヨミは考えるもこれも睨みをきかせているメジェドの前では言えない。



「物語の流れを作るという意味ではメアリがドアノブに触れたのは実に巧みだよね。よくあると言えばそれまでなんだけど、僕はどうしても作り手として読んでしまうから、嗚呼これで物語が広がりを見せるなぁとか感嘆しちゃうんだ」

「分かります。完璧に思えたラムズが一気に血の気が引いちゃうシーンとか結構リアルですよね! あとロミュー、カッコよくないですか?」



 親指をクリスは立てた。



「是非、わが社に勧誘したい人材だ。さて時間も良い頃合いだ。ヨミちゃんをお送りする前に見てもらいたい物があるんだ」

「見てもらいたい物ですか?」

「うん、君の弟さんにもし会えるとしたら君はどう思う?」



 死者と出会う事なんて叶わない。これも彼特有の冗談かと思ったが、これはいくらなんでも少し過ぎた事。



「先輩それは……」



 メジェドが何か操作すると、この部屋自体が下降していく、エレベーターになっているのだ。なんというデタラメな屋敷かとヨミは思っていると、そこは何やら研究施設。そんな中、十数メートルの大きな枠、門のような物がある。



「これは、イシュタルの門と僕が名付けた装置。あと一つ、部品が揃えば小説の世界に入る事が出来るんだ。君の弟さん、自殺の前に作品に自分を書き込んでいるだろう。その小説に入る事ができれば……」

「やめてください! そんな事できるわけないじゃないですか! いくら何でもこれは酷いです。私、帰ります!」



 怒りに任せてそう言ったヨミを宥めるわけでも謝罪するわけでもなく、クリスは話す。



「古書店『ふしぎのくに』で何か不思議な経験をしなかったかい?」



 当然、経験している。あの白昼夢のような物。ヨミは段々とクリスの事が怖くなってきた。それ故嘘をつく。



「してません」

「そうか、それは失礼した。メジェド、ヨミちゃんがお帰りだ。準備を」

「畏まりました」



 帰り際、見送りに来たクリスはこう言った。



「セシャトさんという女性が持つ金の鍵。あれが、最後の部品なんだ。きっと君は望んで僕の元に戻って来る」



 クリスを無視し、送迎の車を断ってヨミは家路につく。自分があの古書店『ふしぎのくに』の人達に酷い事が出来るわけがないと……

『愛した人を殺しますか?ーーはい/いいえ 著・夢伽 莉斗』何だか、お話がこじれてきましたねぇ^^ 今度私達、古書店『ふしぎのくに』と重工棚田の関係はどうなるんでしょうか^^ 今まで月間紹介で幾度となくこの重工棚田の関係者さん達は登場されましたが、何処か愛殺のキャラクターに似ていますねぇ^^

是非是非、『愛した人を殺しますか?ーーはい/いいえ 著・夢伽 莉斗』を楽しんで頂ければ、幸いですよぅ!

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