ラノベ設定を知っていますか?ーーはい/いいえ
GWももう後半ですねぇ! 皆さんは楽しめましたでしょうか? 当方はGW開けより態勢が変わるらしく。またミーティングですねぇ^^
「ヨミさん、お待たせしましたよぅ! お飲み物は珈琲で宜しいでしょうか?」
セシャトはニコニコと笑いながらそう言うと「お構いなく」と返すので、今朝淹れておいたアイスコーヒーをトンとヨミに差し出した。
そしてIpadを取り出すと作品の提案に入る。
「私のオススメのSFですが……」
「ラムズとメアリの小説をカミ君? カミちゃんかな? に教えて貰ったんですが、それを読んでみたいです」
「神様が……分かりました。ではどのあたりから?」
神様と一緒に読んだあたりの話をすると、セシャトはカップケーキをヨミの前に置いてから、ふふふのふと笑う。
「では、はじめましょうか」
「魔物から魔石が出るってどういう事かな? いまいち意味が分からないんだけど」
「う~む。ヨミさんはテレビゲーム等は?」
「全然しないかな、弟は好きだったけど」
さて困った。
何故か知性の無さそうなモンスターを討伐するとお金がドロップしたりするアレ、その背景は他冒険者を喰らった後だとか、今回においては魔物の生を維持する物が魔石だった等、ある程度予測はつくのだろうが、その基礎知識がないヨミには理解ができない。
それはもうこう言うしかない。
人差し指を上げて……
「そういう設定の生物が魔物です! ですが本作でも出てくるクラーケン、こちらは実在の世界にモデルがいます。ダイオウホウヅキイカです。深海生物ですので殆ど上がってはきませんが、食べる物がなくて船を偶然見つけたら巻き付きます。実際にサーファーさんが襲われたりしてますねぇ!」
ポンと手を当ててヨミは頷く。
「クラーケンが浮上する時は異常事態が起きる。それが魔法的な神的な現象としてるけど、これって異常気象に置き換えられますよね。そう考えるとちょっと楽しいですね」
現実世界でも古来では自然現象や異常気象は魔力的な、神々の行いであると世界各国で信じられてきた。そう意味では異世界物はそう言った別の顔を垣間見れるものなのかもしれない。
「ねぇ、セシャトさん。ラムズが雷の魔法をクラーケンに使って痛みを感じてますけど、クラーケンって大きなイカなんですよね? 痛覚とかあるんですか?」
さてこのリアリストなお嬢さんとどうお話をしようかと考えてセシャトはあらゆるWeb小説の知識を瞬時にまとめる。
「そうですねぇ、軟体動物も実は私達とは違った痛覚をお持ちです。そしてこのクラーケンさんは対話が出来るかは分かりませんが、何らかの意識をお持ちです。痛覚と意識は密接な関係性がございます。従って従来のイカ等よりも痛覚に関して反応が強く出るのではないでしょうか? そして……」
怒りや食欲の本能より生物は生存本能を優先する。メアリの力、ラムズの規格外の魔法でなんとか危機は去るが、面白い事件が起きるのだ。
「さて、この混乱時にラムズさんの宝石が盗まれてしまいましたね。さて拷問が始まります。このシーンですが、当方の自称人気作家ヘカさんという方に、ヘカさんならどのような拷問をされるかお聞きしました。それは大変酷い方法です。お聞きしたいですか?」
「えっと……このシーンより酷い拷問ってあるんですか……結構私引いてますが……」
ラムズがコポルトの獣人を絶命させるまでの嬲り方は中々どうして痛々しい。それを越える拷問とはどんな物かヨミには理解できない。
「ヘカさん曰く、目の前から動けないようにして、手の届く範囲に樽になみなみと入れた海水を用意し、コップ1杯の海水を飲ませるだけだそうです」
よほどのサイコパスでもなければ考えつかないだろうが、肉体的痛みはないが、絶対に癒える事のない渇きを与えられ、内臓、脳から肉体を破壊される。この方法、死に至った後、見るに堪えない姿に変わる。船員達に与える恐怖は腸をまき散らした死体との比ではないだろう。
「何その拷問、怖っ! そのヘカって人、頭おかしいんじゃないですか」
「あはは、ヘカさんは少しそうかもしれませんねぇ、それ故全然読者さんが増えません」
多分そうだろうなと、ヨミは平然とした顔で語るセシャトに少し引きながら、このシーンでの憧れる部分を話してみた。
「船でハンモックとか少し憧れませんか? なんか映画みたいですしね」
ヨミの話を聞いてセシャトは「わかりみが深いですねぇ」と言いながら人差し指を自分の鼻にぴたりとつけた。
「実はハンモック、揺れる船においては大変科学的に良い寝床なんですよぅ! 船の揺れと同調しますので、まずベットから落ちません。当然水平が保たれており、寝ている方の重みで沈みますうので殆ど落ちないんですよ。固定ベットより安全だったりするんです!」
ヨミは遠くを見ながら、存在しないハンモックと船内の映像を想像してそこで働く力学をかんがえながら「あぁ、確かに」と納得した。
ヨミはまたまた困る質問をセシャトに投げかけた。
「セシャトさん、無人島の魔物。目が弱点というけど、これ誤って自分で目をぶつけてしまったりしたら死んじゃうのかな?」
モンスターを狩りながら進軍するラムズ達の情景を考えながら読んでいたヨミがふと気になった事。そのモンスターもふとした事でずっこけたりして、自分の弱点をぶつけてしまう事もあるだろう。それ故、セシャトが下した判断。
「恐らく死んじゃいますね。さてヨミさん、そんな事より無詠唱という言葉気になりませんか?」
魔法という概念は大体呪文の詠唱からはじまるという設定が多用される。そういったプロセスを必要としない物が無詠唱と呼ばれるのだが、ヨミはそれに関してこう切り返した。
「えっ? なんでですか? 魔法使いってステッキふったら魔法使えたりするじゃないですか?」
(ディズニーの魔法使いですか……)
そう、世界的に有名なアニメーション。ディズニーシリーズの魔法はもはや神の奇跡みたいな事をやってのける。そういった作品に慣れ親しんだ場合、こういったラノベ系特有の設定の方がもはや理解できないのだろう。
「成程、まさにこちらは物語におけるカルチャーショックですねぇ!」
「でも、セカイならこの作品理解して読めるんだろうな」
弟の話をするヨミは少し嬉しそうだった。そしてこの島における疑問をセシャトに話す。
「この世界って人間の存在価値薄くないですか?」
魔法、腕力ともにそれを凌駕する種族が存在する世界である。こういった作品において本当に人間がノンスキルであれば迫害を受けるかもしれないが、本作の世界ではそうでもなさそうだ。
「そうですねぇ、もう少し物語を読んでいきましょうか? 妖精ニンフが出てきましたね? ご存知ですか?」
ヨミは分からないとジェスチャーするのでセシャトはふむふむと頷いた。そして金色の鍵を持ったが、それをしまうと話し出す。
「花嫁という意味を持つ妖精です。大変楽しい事が好きな妖精で人間や神々、どんな方とでもつがいになる珍しい設定を持つ妖精ですね。『愛する人を殺しますか?ーーはい/いいえ 著・夢伽 莉斗』ではセイレーンのように少々恐ろしい魔物として登場します」
余談ではあるが、こういった人間を魅了する妖精、その正体はスポーツ中毒ではないかと言われている。何故か山を登ろうとする登山家、あれは達成感に対するハイであるが、よそから見れば山に憑りつかれたように見える事だろう。
自然現象と妖怪、妖精という物の結び付きのレクチャーをしながら、先ほどのヨミの疑問についてセシャトは話し出した。
「キャンプを張るラムズさん達が魔法陣を書くのに使われる魔道具。こういった物を人間は発明し、使用しているんですね。これは現実世界でもそうですね。人間よりも力の強い生物は沢山いますが、それらを人間は制する事を道具を持って行ないますよね。実に調和がとれているとは思いませんか?」
「そうですね。魔法よりも強い武器とかも作れちゃうかもしれないですよね。ラムズの言う戦いたいって思う魔物ってちょっと私は考え難いかな」
おや、それはどういう事だろうかとセシャトはヨミの言葉を待つ。そしてヨミは面白い話をセシャトにしてくれた。
「対話が出来ないから、相手が怖くて襲うという事は考えられないかな? それを越えるとその存在を知ろうとするじゃない、犬と人間の関係がそうかな? だから知性って対話が出来る事じゃないんだよね。小説でも言ってるでしょ? 人間でも話が通じない人がいるって」
知性とは何か、知恵と知性は似て非ざる物。そして生物によって判断基準が違う。
「さてヨミさん、ヨミさんは森の中で女の子が助けを求めていたら助けにいきますか? それがもしかしたら人を欺くニンフかもしれません」
少し考えてヨミは真直ぐにセシャトを見てからこう言った。
「助けに行くと思う。私は、人間だから、だからニンフに捕まった人を尊敬するかな」
それはキャンプでラムズ達が話している内容とほぼイコールで繋がるだろう。人間は自らを賭してでも弱きを助ける生き物である。
正義感、倫理観、そして孤独感、あらゆる知性の器官が人間を動かす。
「素晴らしいです! ヨミさんならこのシーンの素晴らしさ分かりませんか? 正義感を見せた男性を誰も咎めず、蔑んでもいません。むしろ評価してるんです。ここは実は1章でも中々胸を打つシーンです。そこからの……」
宝石狂いのイケている船長、ラムズの唐突の死が描写される。それにさて彼は本当に死んでしまったのか、と言ったところでヨミのスマートフォンが鳴る。ヨミはスマートフォンを見るとセシャトに言う。
「セシャトさん、今日は用事があるのでこれで失礼させていただきます。また来てもいいでしょうか?」
ヨミの不安そうな表情に対してセシャトは満面の笑顔。
「いつでも構いませんよぅ!」
綺麗なお辞儀をするとヨミは「ありがとうございます」とキチンとお礼を言って古書店『ふしぎのくに』を後にした。
セシャトは本来このweb小説『愛した人を殺しますか?ーーはい/いいえ 著・夢伽 莉斗』をヨミにオススメする気はなかった。それにハァとため息をついて冷めた珈琲に口をつける。
されど楽しんでいるヨミを見ているとそれもいいかなとお店の閉店作業をはじめた。
店を出たヨミに連絡をした人物。
ヨミは古書店『ふしぎのくに』から離れるとその電話の主と話す。
「確かに、不思議な経験をしました。本当にあの古書店『ふしぎのくに』なら弟、セカイに会えるんですか?」
ヨミはやや震えながら電話の主との話を聞いて、通話を終了した。どっと疲れたような顔で、とぼとぼと家路につく。
『愛した人を殺しますか?ーーはい/いいえ 著・夢伽 莉斗』本作を読みふと感じた事があります。人間以外のキャラクター達はやや足りない物をお持ちです。知恵もそうですが、人間は案外足りない物がないのかもしれませんねぇ^^ それ故、過ちを犯すんでしょうか! GWのお休みに飽きてきた本日一気読みしてみてはいかがですか?




