表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セシャトのWeb小説文庫2019  作者: 古書店ふしぎのくに
第四章 『千羽鶴 著・千羽 稲穂』
30/111

死を願うのは諦めれない人

さて、江戸城跡周辺でお花見を楽しみましたよぅ^^ お花見前線目下進行中です! 一体私達は生涯何本のお団子を食べるのでしょうか? 春を感じつつなんだか夏の気配もしますよね? 春の時期が年々短くなっていると聞きます。四季折々を愉しみながら創作活動にいそしみたいですねぇ!

 神様達はダンタリアンが開けた部屋、それは大分散らかり、足の踏み場もないような部屋。一体ここは何処なのか? 神様は見覚えがあった。



「クリスの小僧の部屋だの」



 神様が足元に落ちているゲームのパッケージを見て驚く。プレステーション2.ファイナルファンタジーⅩ。



「ぬぉ! これ、小僧と一緒にやったのぉ!」

「そうだね。神君はあまりのリアルさに腰を抜かしていたもんだ」



 ヘカからすれば物凄い古いゲームであり、年寄り達が懐かしさに現を抜かしている。そう思ったが、ダンタリアンはこう言った。



「そういえば、このゲーム。『千羽鶴 著・千羽 稲穂』と少しばかり内容が似ているよね」



 ゲームのネタバレになる為簡単にかいつまむと、主人公は我々よりも科学が発達した時代から異世界に飛ぶ冒険アールピージーなのだが、その世界が実は……と言った中々素晴らしい出来であった。そんな懐かしさの中でヘカが気づいた事。



「これ、さっきの格ゲーより少し時間が進んでるん?」



 神様は手をポンと叩いた。ダンタリアンが言う通り、物語の考察をしたら時間が少し進んだのだろう。



「ヘカ君、賢いね! ご褒美にアタシが抱きしめてあげよう」

「お断りなん! ダンタリアンさんはヘカの半径5メートル以上離れてほしいん!」

「それじゃあ一緒に死ねないじゃないか? ヘカ君はどんな死に方がお望みなんだい? ちなみに首吊で融解が始まると、排泄物だけじゃない。どうかすると内臓も飛び出すよ。実に美しいね」



 ダンタリアンが恍惚の表情でそう言うので、あのヘカがどん引きする。吉と千鶴が死に方について語る様子とは違いダンタリアンはあらゆる事を肯定してしまうのだ。



「リストカットは手首をカミソリで切るからダメなんだよ。いっそ斧で落としちゃえば、十五分あればあの世行さ!」



 てへぺろな表情をしてダンタリアンはヘカにほほ笑むので、ヘカはプイと顔を背ける。神様がそんな話をしている中面白い事を言う。



「こやつら死に方を考えながら実は、昇華をしておったりするの」



 神様がそう言う意味をヘカはいまいち理解していない。そんな神様にダンタリアンは抱き着くとこう言った。



「なんだい? ロリショタ神君。言ってごらん」

「貴様の甘え癖は死んでも治らんの。死に方を考えながら折り紙を折っておるだろ? ながら作業は実は心によい、所謂アートセラピーってやつだの。本人も言っておるだろ? 今が青春してるとな」



 神様のその言葉にダンタリアンは嗤う。神様の髪の毛を一噛みする。ヘカは対象が自分から神様に移った事に安堵し、ダンタリアンは神様を堪能した後に語りだした。



「神君、君は残酷な事をしたらしいな? ふふふのふ、人間に意識を持たせた。本能のままに生きられれば楽だったらしいと千鶴君は言っているぞ?」

「神違いだ」



 神様は書に関する事には奇跡を起こすが、それ以外に関してはからっきし、大喰らいの無能な子供である。



「千鶴は、物事が見えるすぎる人間なんな? 世の学生達を体現したようなキャラなん。想像をしても実行しないところがリアルなんよ。そして家庭環境に問題のある家の子は大体、破滅願望があるん」



 決まったという顔でヘカがそう言うと、ダンタリアンがパチパチと手を叩く「あー、模範解答ありがとーヘカ君」だなんてヘカを煽るものだから、ヘカは頬を膨らました。 

 大人の何気ない一言を子供は永遠に引きずる事を知っているだろうか? 園児が言われた何気ない一言、小中学生が教師に言われた何気ない一言。初バイト先で店長等に高校生が言われた何気ない一言。それらが心を蝕むことがある。そんな意味で、千鶴の父親の『母さんはな、お前たちを捨てたんだよ』これは堪えた事だろう。



「アタシはね。こんな子がセックス依存症になったり、援助交際でまやかしの温もりを求めちゃうんだろうなっておもうんさ」



 神様の口内に指を入れるダンタリアンに「ひゃめろっ!」と嫌がる神様を実に嬉しそうに眺めている。



「吉君、あまりにもタイミングよくご登場だ。これは悪魔であるアタシもびっくりだよ。ヘカ君の模範解答を少し付け足そうかな? 子供はある一定以上のストレスを溜めると、友達を求めるんだってさ」



 それは幼児によくある反応。ヘカは意味を理解できないし、神様は目を瞑ってダンタリアンを吹き払う。



「おや? 神君。アタシのナイスバディは気に入らなかったかい?」

「遠慮せい。それ以上はな」



 書に関わる悪魔は書に関わる神と相性がいいらしい。傷をなめ合う描写に合わせて神様とダンタリアンは見つめ合い作品世界に意識を飛ばす。



「何してるんこのアホな二人。多分千鶴の方がこの二人より大人なんな」



 彼女は、悲観しているが、自分の環境が恵まれている事もしっかりと認識した上で絶望している。それをダンタリアンはこう例えた。



「千鶴君は絶望する権利を持っているね。ふふふ、実にいい物語だね。アタシは好きだよ。お互いがお互いの環境を羨むところなんて、アタシと神君みたいんじゃないか」



 はははと笑うダンタリアンの手はヘカの首筋に触れる。鳥肌が立つヘカが物申す前にほほ笑む。



「ヘカ君はもう少し笑った方がいい、怒ってばっかりじゃないか」

「生きてるからなん! 笑いまくる奴は諦めてるん」



 この中で一番よく笑う者はダンタリアン、虚を突かれたようで一瞬笑みを失ってからダンタリアンは満面の笑みをみせる。



「ヘカ君は、言動程馬鹿じゃないんだね」

「馬鹿じゃないん! ヘ……」

「ヘカなん! だろう?」

「それはヘカが言うん!」



 隙あらばヘカの身体に触れるダンタリアンはあははと笑う。そして悪戯好きな表情を見せてからこう言った。



「他人の行動を探る事は楽しくて、楽しくて、背徳的で最高に気持ちいんだけど、千鶴君はいけない事と知ってしまった。いけない事は楽しいんだよ」

「ダンタリアン、貴様馬鹿をあんまりいじめるな。こやつはこれで意外と打たれ弱い」



 物心ついた頃から神様がヘカを守ったのはこれが初めてかもしれない。



「全く、神君嫉妬しちゃうな。アタシのかわりをあと二人も作ったんだろう? 千鶴君の姉君。彼女は千鶴君以上に見たくない物、所謂世の中が見えてきたんだろうね。でもそれを心の何処かで納得できてしまうタイプなんだろうね。諦めれるんだ。片や、死にたがる子は諦められないんだよ」



 ヘカはダンタリアンの言う事が理解できない。死のうと考える人間の方が諦めているのではないかと……



「何言ってるん? 死ぬのは生きる事を諦めるからなんよ?」

「むむっ! ヘカ君は真面目さんかな? 諦めるから死なないんだよ。納得がいかなくて、諦めたくないから……死ぬんだよ。千鶴君はハッピーエンドを望んでいるだろう? でも姉君はハッピーエンドのその先を知っているから、諦めれるんだ」



 諦めるという事はある意味、大人になるという事であり、つまらなくなるという事。千鶴は何処か人との繋がりを求め、姉に心の中で悪態をつくものの、何処か憧れに近い感情を感じる。そして、その姉もまた諦めていない部分、弱い部分。人間らしい部分を見て心を痛める千鶴。それはいくら頭の中で冷静ぶっても彼女の優しさを感じる実に名シーンの一つでもある。



「人間くさい。人間らしい、この無意味な事に苦悩して、情を感じて、死にたくなる。千鶴君、あと少し闇を覗けばさらに高次の発言をするかもしれないね」



 ダンタリアンがそう言うのでヘカが訂正した。



「今はメタ発言っていうんよ」



 彼女の言葉は全て、真逆である。心の声というものがあるならそう読む事も出来るだろう。諦めていたと思っていた姉は、実のところ千鶴のよく知る人だった。それは憧れが終わる瞬間でもあったのかもしれない。

 千鶴は今や、姉をも救いの対象としたいと願う。まだ序盤でこの濃さ、陰鬱とした空気。千鶴は何かにすがりたい。



「神は何にもしてくれないからね。ね? 神君」

「知らん! 少なくとも私は何もできんからの」

「そう、何かにすがるなら悪魔に限るよ。悪魔は約束は必ず守るんだからさ、千の鶴を折るよりも実に楽で建設的だとは思わないかい?」



 ヘカの腰に手を回すダンタリアン。もはやヘカもそれを振りほどこうとはしない。それよりもヘカは虚ろな瞳でダンタリアンに言う。



「これおもしろいんな? 生きる意味を見つける呪い。鶴を折り続ける願掛け。この呪い、解けなければ死ぬ事はないん。条件付けは千羽の鶴を折る事なん」



 ダンタリアンの腰に回した手がヘカの尻に伸びた時、ヘカはダンタリアンの手を思いっきり捻った。



「感情はいらない? 世界を知らない? くくくのく、終わらない平成を願ったのは誰だろうね? アタシはこの『千羽鶴 著・千羽 稲穂』を本来出会うハズのないアタシ達が読み合っているのには何か(えにし)を感じるよ」



 今までアホ面をしていた神様が紫の瞳を大きく開き、ダンタリアン、そしてヘカを見る。ヘカの虚ろな瞳と、好奇心旺盛なダンタリアンの瞳。彼らが見つめる先には新しい扉、次に進めと何かが言っている。

 その扉に手をかけたヘカ、そして開ける前にヘカは言う。



「多分、平成を終わりたくないと思ったんわ、この中の三人の誰かなん? 違うん? ヘカも大体見えてきたん。売れっ子Web小説作家の勘なんな」



 少しだけ盛ったヘカの発言を聞いてダンタリアンは頭をかかえて大笑い。そしてヘカが開かなかった扉を開けると神様とヘカを次の部屋と導いた。



「さてさて、鬼が出るか蛇が出るか、平成ワンダーランド、第三幕へお付き合いしてもらおうかな」

『千羽鶴 著・千羽 稲穂』を読んだよ! というDMを頂いております。大変嬉しく思いますが、作者さんにもお伝えしていただければまた当方もさらに嬉しいですよぅ!

今回は、私の大先輩となるダンタリアンさん、大暴走。そして大変興味深い考察をされますねぇ。

実はですね。毎回ビデオゲームのソフトが出てきます。これは平成初期から中期まではゲームといえばハードとソフトで行う物が主流でしたよね? ヘカさん達は平成を脱出して令和を迎える事ができるんでしょうか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ