名前を言ってはいけないG 怒涛のキャラ紹介
北海道は-30℃の時間があったそうですね。私は寒さにはめっぽう弱いので、凍え死んでしまいそうです^^ さて、北海道や東北の方は暖をしっかり取って風邪を引かないようにしてくださいね!
私はホットココアと焼きマシュマロで寒さ対策をしていますよぅ!
シナモンを散らすとなおよしですよ!
セシャトがやってきたのは、トトが経営するブックカフェ『ふしぎのくに』、新しいハーブティーの試飲をしてほしいという事で、神様に店番をお願いしてやってきた。
「こんにちは!」
セシャトは手土産を持って準備中と書かれた店内に入ると、ペンギンみたいな燕尾服を着た少女、もとい少年の姿を見つける。
「こんにちは、汐緒さん」
「待ってたでありんす」
セシャトを見ると嬉しそうに笑う店長代理、汐緒。黒いエプロンをつけるとハーブティーを淹れる準備をする。
「好きなところにかけて待つかや」
「はい!」
そう頷いてセシャトはアイパッドを取り出すと『コルシカの修復家・著 さかな』を読み始める。それを横目に汐緒はセシャトに尋ねる。
「そん作品、あちきの店でも朗読するかや、セシャトさん。あちきにお話ししてくれりょ?」
「あらあら。私で良ければ、どのあたりを朗読されますか?」
「『虹のサーカス団』でありんす」
ふむとセシャトはタブレットでそのページを開く。
「さて、この章はアクセサリーに50ユーロ、大体現在価値6000円くらいでしょうか? 観光地詐欺というか恐喝にあっている少年、そしてかの有名なナポレオンの名言を語りながら助けてくれる大人の方が現れるところから始まりますね。この章を楽しむというより、汐緒さんはお客様に楽しんでいただくにあたり、ナポレオンについて、この章の名前にもなっているサーカスについて、さらにアルカンシェル、虹について少し予備知識を入れた方がいいかもしれません」
「サーカスと虹は分かりんす。ナポレオンは知らないかや」
「ナポレオンさんは有名な軍人であり、政治家でもあり、皇帝にもなられましたね。実は芸術面にも明るくて、勝手にエジプトから色々持ってきちゃったりしてます。作中でも書かれている通り本作、コルシカ島の出身なんです。さらにあまり知られていませんが、彼は獅子将という異名もお持ちです」
「しししょうかや?」
「えぇ、ナポレオンという名前は、ナポリのライオン。ライオンとは動物以外に勇気、勇ましい者等の意味があります。ナポリの英雄という事なんでしょうね」
へぇと話を聞きながら汐緒はセシャトにハーブティーを出した。それを嗅ぎセシャトはおやという顔をする。
「さすがセシャトさんかや、コルシカ島はハーブが有名でありんす。今度の朗読はこれをお客さんに飲んでもらいながらすすめるかや」
セシャトは一含み飲むと話し出す。
「汐緒さんはブロッコリーお好きでしょうか?」
「だいっきらいかや」
「ふふふ、アダムさんとニノンさんのやりとり可笑しいですね」
ブロッコリーは嫌いか好きか大きく分かれる。特に子供はブロッコリーを嫌う子が多い。この食事風景一つの動きが気持ちいくらいにリアルなのだ。
「エンジニアが衰退してるって不思議な感じかや」
「確かにそうですね。ですが、本作の世界は魔法の理論化に成功してしまっています。とある作品では人は満ち足りると仕事を始めると提言されていましたが、本来人間は保守的です。結果として不要な物は排除あるいは異端扱いされるのではないでしょうか?」
いまいちセシャトの言っている事が分からない汐緒はならば本作のタイトルにもなるサーカスに関してはどうか?
「サーカスだって生活には不要でありんす」
「人間は怠惰な生き物なんですよぅ! こと、趣味嗜好に関しては興味が尽きず、惜しみない散財をみせます。コミケなんかが良い例ですね。本作は何処か文化レベルが低いです。ですのでこう言った大道芸や舞台等が人々の楽しみなんじゃないでしょうか? そろそろ本題に入りましょうか? 本作の共通の悪として登場したベニスの仮面より先回りできたと思いましたが、残念ながら団長ゾラさんはお亡くなりになりました。非常に自然に物語を進められる作者さんです。はっきり言ってプロと言って遜色ない実力をお持ちでしょう」
セシャトはサーカスについて簡単な補足をしようとしたところで、トトの店内にいながら全く違うビジョンを見ていた。誰かの手を引いてサーカスを見ている自分。その瞬間わずか数秒、汐緒が怪訝な表情を見せるのでコホンと咳払い。
「サーカスは言葉通り見世物。と言いまして古代のローマやエジプト時代には既にあったと言われています。この二つは古代とはいえ、現在に等しい文化体系を持っていましたから当然と言えば当然ですね。不思議な事に何処の世界も文化的な国は滅ぼされてしまいますが……さて、このサーカスというロケーション。物語においては高確率でルカさん達のように潜入する描写が多いですよね」
映画でも漫画でもアニメでも、そして本作『コルシカの修復家 著・さかな』においてもそれを様式美のようである。実際、大型大道芸は芸をこなす人間、裏方、小道具や飼育係、仕事をする人間は多岐にわたる。全ての人間がお互いの全ての顔と名前を覚えていないが故に比較的簡単に侵入可能というタネがあるわけだ。ルカ達に至っては正規のルートで侵入する形になるのだが……
「アダムの殿さん、貞操を守ろうとするのは滑稽でありんすな。一夜二夜共にすればいいだけかや」
汐緒がそう言うのでセシャトは苦笑する。この少女と見まごう姿をした汐緒はれっきとした男の子であり、この店のオーナートトに好意を持っている。が、トトはノーマルな為、汐緒には一寸の興味も持ってはいない。
「ふふのふ。ですが、アルバイトという名目での侵入。楽しそうですね。そして来ますよ怒涛のキャラクター紹介」
小説にルールというものは存在しないが、読み手が認識できるキャラクター数という物がある。三人が一番想像しやすく、五人を超えたあたりから少し分からなくなってくる。
そういう意味では、ルカとニノン、アダムの三人で進行する物語は読みやすい。が、このセシャトが言う怒涛のキャラクター紹介。サーカス団員達の紹介シーン。
「汐緒さん、このキャラクター紹介ですがほぼ地の文の説明で進行させています。ルーグとシュシュは何度か登場されているので想像しやすいですよね?」
「うん」
「極力整理できるように、丁寧に書かれていますが、さすがにここは無理がありましたね。ただ、最後にニコラスさんが登場する事で、まるっと収めてしまうあたりが面白いのですが、汐緒さんが朗読される際はここはどう説明をいれるかでぐっと読み手の理解が変わりますよぅ!」
それを聞いて汐緒は考える。どうすれば作品の伝えたい事を自分が100%引き出せるのか、むぅと唸る汐緒にセシャトは優しく微笑む。
「しかし、アダムさん。主役級にキャラが立つと思いませんか? むしろルカさんやニノンさんよりいい意味で目立っています」
「分かるかや、清々しいでありんす。共感がわくかや」
コミカルで色で言えば赤、そして兄貴風のようなものを感じる安定感。本作屈指の透過性が一番少ないキャラクターが彼である。
「ゴキブリが苦手というとこも実に可愛いですねぇ」
「セシャトさん、その名前を言ってはいけないでありんす」
汐緒もどうやら苦手のようで、失神しそうな顔をする。それにセシャトは静かに言った。
「では、Gと仮名しましょう。Gは実は綺麗好きで、そして私達人間を監視していると知っていましたか?」
ゴキブリは実は埃っぽいところを嫌う傾向にある。身体中の各種センサーが狂う為、台所に、”ある”砂を撒いているだけで彼らの生息域を大幅に減らす事が出来るのだ。それは古書店『ふしぎのくに』もこのブックカフェも行っている。あの害虫、実害が殆どない代わりに精神衛生の悪さは世界最強である。アダムが嫌がるのも十分に理解できる。それを平然と捕獲するルカに戦々恐々する読者は少なくない。
「アダムの殿さん、気持ちが分かるでありんす。ルカの殿さんは狂ってるでありんす」
「あらあら、それは言いすぎですよぅ。このお仕事シーンはほのぼのして実に可愛らしいです。ニノンさんのモップの絞り方が分からない。これは私達の神様も同じ事をしてしまいましたねぇ」
セシャトが作品を読みながら悦に入っているので、若干引きながら汐緒はセシャトに現実世界に戻ってきてもらう為に、セシャトが手土産に持ってきたパインのバームクーヘンを切り分けて出した。
「おや、これは!」
サクサクとフォークで切り分けぱくりと食べる。セシャトの脳に糖分が満たされ、そして最高の称賛。
「はひゃあああ!」
汐緒はその姿を見て、これが噂のあざとい姿なのかと自分にも淹れているハーブティーを飲んだ。
「さて、汐緒さん。色なしという差別表現にも似たこの症状ですが、私の髪の色もそうなんですよ。但し、これはアルビノ属として一般になっています。肌の色素が抜ける病気があります。有名人では故・マイケルジャクソンさんが患っていましたね。恐ろしく綺麗な真っ白になります。実に美しい物は、時として畏れの対象になるんでしょうね。ですが、ここで……」
「男前のウィグルでありんすね!」
そう、狂犬と呼ばれた彼が助け船を出してくれる。さらにはケバブサンドまでニノンに奢ってくれるのだ。
「そうです。実に、ありきたりかつ素晴らしいシーンだとは思いませんか? このお互いの短所を語り合い、こそばゆい描写ですねぇ。一言で言うなればご馳走様でしたと言いましょうか?」
Web小説では中々、この伝統のありきたりを拝めない。そういう意味では本作の若草物語的雰囲気はなんとも懐かしくこそばゆい。
「出てくるキャラクターが脇役を含めて、みんな暖かいでありんすな」
「ですね!ですね!」
汐緒の一言がセシャトを真顔にする。
「ニノンが絵画の声が聞こえるという力、セシャトさんや、店長がWeb小説を読む時みたいでありんすな」
さてさて、『コルシカの修復家 著・さかな』今週は前後編で『虹のサーカス団』を汐緒さんと読み取っていきますよぅ! 今回はあの名前を言ってはいけない虫について触れられていますが汐緒さん的には触れてはいけないようですね。そして、今回の章はキャラクターが一杯出て行きますよぅ! 私個人としてはこの『虹のサーカス団』が一番好きですねぇ^^