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セシャトのWeb小説文庫2019  作者: 古書店ふしぎのくに
最終章 『セシャトのWeb小説文庫2019』
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最終話 セシャトのweb小説文庫2019

さて、皆さん今年一年間色々ありましたが、本当にありがとうございました。

あとどれだけ私達の活動が続くのかわかりませんが、皆は一人の為、一人は皆の為にの精神で頑張りたいと思いますよぅ!

「ただいま戻りましたよぅ!」



 セシャトが古書店『ふしぎのくに』に戻ってくると、カウンターに笑顔で立つトトが出迎えた。



「お帰りなさいセシャトさん。京都旅行はどうでしたか?」



 今年最後の日は古書店『ふしぎのくに』は閉店し、神様、ヘカ、トトとゆっくり過ごすというのがいつもの流れである。



「信じられませんが、京都では土方歳三さんと沖田総司さん、そして坂本龍馬さんに出会いましたよぅ!」



 セシャトがマジ顔でそういうのでトトは「失礼」と言ってセシャトのおでこに手で触れてみる。熱はない事にトトはセシャトをまじまじと見つめ、セシャトが自分がおかしな事を言ったと勘違いされている事に気づいた。



「もうトトさん! 本当なんですよぅ!」



 そう言ってセシャトはスマホに写した彼らを見せる。神様と瓜二つの沖田総司を見てトトは少し固まる。



「神様の2Pカラーですね」

「えぇ、食べ物に対する執着も神様にそっくりでしたよぅ!」



 薄幸の美剣士沖田総司と神様、想像とは違う感じにトトも驚きは隠せなかった。神様はどちらかといえば可愛い。という方がしっくりくるだろう。そして次にトトが見たのが、好青年と思しき土方歳三。



「これは鬼の副長なんですか?」

「えぇ、創作物に関しても造詣が深い方でしたよう」

「確か短歌や俳句を趣味にされていると後世にも伝わっていますからね? それにしても今年も面白い作品でいっぱいでしたね!」



 セシャトは思い返す、神様に連れられた不思議なお寿司屋さんで語ったホラーについて、あれは今にして思ってもなんだったのだろうかと……



「そうですねぇ! 強盗さんを改心させた物語、というのもありましたねぇ!」

「芸術をテーマにしたライトノベルらしい冒険譚でしたね? 僕のお店でも読み聞かせを行わせてもらいましたよ!」



 金の鍵をあれほど必要な使い方が出来た事は無かったなとセシャトは思い返す。そして三月はサイホコラー作品を皆で話し合った。



「この世で一番恐ろしいのは人間というのはある種のテーマかもしれませんねぇ!」

「そうですね。物語を書くのも人間ですし、結果として人間の意思決定を越える事というのは中々難しいのかもしれません」



 今年はニッチな作品を多く取り扱って来た。Web小説に関して、これほどまでにWeb小説らしい物がしっかりと書かれている事が嬉しくもあった。

 そんな風に今年を振り返っていると神様が古書店「ふしぎのくに」にやってくる。



「おおセシャト帰っておったか! 返ってきてすまんが、少し付き合ってくれんかの?」

「何処か行かれるので?」

「ボンディの受け取りにの!」

「そういう事でしたら」



 セシャトは神様と並んで歩く。神様は駄菓子のスルメイカを咥えながらペンギンみたいにフードを被りセシャトの隣で話し出した。



「貴様は知らんだろうが、平成が終わる時、初代古書店『ふしぎのくに』店主と私は会うておる」

「ダンタリアンさんでしたか?」

「うむ。あやつは言っておったよ。今のWeb小説のレベルは自分が携帯小説を読んでいた時よりレベルが高いとな。描写の多彩さが競合のおかげで磨かれるんだろうの」



 4月の作品についてかなとセシャトは考えながら、ずっと心の奥底で悩んでいた事を神様に相談した。



「良い思い出ばかりでもないですよね?」

「まぁの。一年365日もあるのだ。悪い事もあろう」

「私は令和に入ってはじめて人から憎まれました」



 セシャトの鍵の力を使って、故人である弟の作品に入ろうとした少女。彼女には逆恨みという形なのだろうが、物語を通じて人を不幸にしてしまったというセシャトの中では今だ解決していなかった。



「まぁ、ゆくゆくはクリスの小僧とも決着はつけんといかんな。あ奴があーなったのは私にも原因がないこともないからの」



 セシャトは頷く。恐らく古書店『ふしぎのくに』を経営している中で、あの者達との接触は今後避けては通れない道となるんだろう。



「私はクリスさん達とも笑顔で物語を語り合いたいと思いますよ」



 神様は鼻でフンと笑う。どうしょうもない奴だのと一言呟いてから神様御用達のカレーショップへとたどり着いた。

 そこでセシャト達のよく知る黒髪、おかっぱの少女と出会った。



「神様とセシャトさんなん!」

「貴様、馬鹿! こんなところで何をしておる」

「馬鹿じゃなくて、ヘカなん! 神様が予約したカレーをヘカが受け取りにいったん! 神様はこれ持って先に帰るといいん!」



 重いカレーを押し付けられ神様は少し苦言を述べていたが、カレーの匂いに負けてそれを持って古書店『ふしぎのくに』へと帰っていく。



「ヘカさんとこうしてお外で出歩くのは久しぶりですねぇ!」

「たまには女子会なんな! 欄ちゃんとセシャトさんは何故か会わないようにできてるん! それはきっとヘカが外伝の主役だからなん!」



 と訳の分からない事を言うヘカだが、セシャトにとって唯一無二の親友であり姉妹のような存在でもある。元々、一回かぎりのモブだったとは思えない程には……



「セシャトさんは、死んでも意識が保てるとしたらどう思うん?」



 7月の紹介小説について、あれはとても面白い作品だったなとセシャトは思い出す。もし、それが可能であれば人類は死という概念を恐れなくなるのかもしれない。終活の在り方も明るい物になるだろうし……



「もう一度会いたい人がいますね」



 人は死ねば終わってしまう。現実に生きているからこそ、その無常さから逃れる事は誰もできない。新しい年号において、悲惨な事件がいくつも起きている。セシャトの気持ちを汲み取りヘカも何も言わない。会えるものなら自分も会いたいとそう思ったのかもしれない。



「トトさん達、男の子組でキャンプに行ったのを覚えてるん?」



 セシャトはそういえば、自分やヘカをのけものにして神様主催のキャンプが何処かの山で行われた事を思い出した。



「あれは酷いですねぇ! 神様は男性でも女性でもありませんから、ある意味逆ハー状態だったんでしょうか?」



 ヘカが少しイラ着いた顔で地団駄を踏んだ。怒るというより悔しいという顔なのである。



「残念なイケメン共なんけどヘカも行きたかったん!」

「ですが、あれはきっとあの時の作品を楽しむ為にそうしたのかもしれませんねぇ!」



 耽美秀麗な少年達の濃厚で作りこまれた世界観の物語、あれは確かに面白い作品だったなとセシャトは思い出す。

 きっと神様様は自分をあるキャラクターに見立て、他三人を三人の登場人物として呼んだのだろうかとさすがは自分達を生み出しただけの事はあると感心した。



「もうしばらくヘカさんとお散歩をしてお茶でもと思うのですが、年末ですし、そろそろ忘年会に戻りませんか?」

「名残惜しいけど、そうなんな!」



 ヘカが手を出すのでセシャトはヘカと手を繋いだ。いつ以来だろうか? 神様がヘカを生み出した時には既にヘカは神様に反抗的だった。されどヘカはセシャトに反抗的だった事はない。時間軸上は年下のハズのヘカだが、セシャトからすればお姉さんという側面も彼女からは感じていた。



「ただいま戻りましたよぅ!」



 いい香りがする。母屋にてトトが何か料理をしているのかと覗くと鍋物の準備をしていた。



「お帰りなさいセシャトさん、ヘカさん。今晩は年越しを兼ねてソバ鍋を作りましたよ! 奥で神様が先にカレーを召し上がっていますので、お二人もどうぞ」



 言われるがままに母屋のテーブルに向かうと神様がスーパーで購入したであろうとんかつをカレーに乗せて満面の笑顔だった。



「神様、少しはあの聖女様をみならった方がいいん!」

「馬鹿者めが! 聖女とは神を崇めるものぞ? なら私の方が偉いのだ!」

「あの聖女様は神様を崇めてはいないん。別の神様を崇めてるから、ヘカ達の神様は異教の神であり悪魔なんな!」



 ヘカにそう言われ神様は叫ぶ。



「貴様ぁ! 言わせておけば! 許さんぞぉ!」



 ヘカは神様の横に積んであるカレーを一つとるとそれを食べ始めながら思い出したように言う。



「神様は煩いんな!」

「煩いとはなんだ馬鹿!」

「馬鹿じゃないん。ヘカなん!」



 いつもの掛け合いの中、セシャトは今年最後の紹介作品について語った。



「試験的にコンペを開催してみましたが、予想通りな面と予想外の面の二つがありましたね? 今後の私達が最後に行おうとしているイベントに関しては色々と対策が必要ですよねぇ!」



 来期より二年目が始まる。次はどんな作品を紹介していくのか、これから楽しみでもある。

 鍋の準備を終えたトトが戻ってくるので、セシャトは水を用意し、トトにもカレーを渡す。物語を読む者にとってカレーライスは切っても切れない食べ物であり、神保町には沢山そのお店が経営されている。



「沢山のWeb小説投稿サイトが増えています。そして沢山の私達のように作品紹介を行う方々もいらっしゃいますね! 私達の需要が少ないという事は素晴らしい事です! それだけ世の中がWeb創作で盛り上がっているという事じゃないでしょうか?」



 セシャトの言葉にトトと神様が頷く。



「でもヘカのところには読者が全然こないん」

「それは単に貴様の作品がクソつまらんからではないのか?」

「ふふふのふ! ですから、私達はこれからも私達のペースで作品を紹介して楽しんでいければよいと思いませんか? まずは楽しむ事が大事なんですよぅ! 今年も皆さんお世話になりました。来年もよろしくお願いしますねぇ!」



 セシャトがそう言って頭を下げるので、トトとヘカも同じく頭を下げる。そんな中神様だけがセシャトに上目遣いでこう言った。



「来年は小遣いを大幅にの……?」

「さぁ、カレーを食べましょうか!」



 来年も古書店『ふしぎのくに』は平常運転で運営します。今後も宜しくお願い申し上げます。

これにてセシャトのweb小説文庫2019を完結とします。今年も色々ありましたが総称すると本当に面白い作品ばかりでした。いつでも書籍化できるような作品もありますよね^^ 私達の組織はどういった人員構成かはお答えできませんが、紹介させていただいた作品に関しては少しばかりお口添えを各種サービスにさせて頂きたいと思いますよぅ!

また来年どうぞよろしくお願いします。皆さま、良いお年を!

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