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セシャトのWeb小説文庫2019  作者: 古書店ふしぎのくに
最終章 『セシャトのWeb小説文庫2019』
106/111

第六話『Spirit of the Darkness あの日、僕は妹の命と引き換えに世界を滅ぼした 箸・黒崎光』

ふふふのふ^^ またブログ担当のお二人が負債をだしたという連絡をお伺いしましたが、今回は大きくリスクヘッジをできたという事で最小限の被害で済ませれたみたいですよぅ^^

どうしても依頼料の先払いになるとまれにあるみたいですが、ダンタリアンさんの情報網と人脈は正直私も引いてしまいますねぇ^^

「この豆腐緑色をしておるぞ! しかし美味い」



 総司がそう言ってスプーンで枝豆豆腐を食べている中、土方は夕餉もそこそこにセシャトに問う。



「セシャトさん、ゆっくりと食事の場なので……その何かお話を、夜にそうですね。お酒に酔えるような面白い物語をお願いします」



 ご飯粒をつけながら総司が目をつぶる。自分も聞いてやるから話をせよという事なんだろう。セシャトははてこの二人のこの場の余興においてどのお話を選択すべきかと思っていたら夜空に月。

それを見てセシャトは彼らに話すまいと思っていた作品を話す事にした。



「よく考えればお二人がここにいるというのもそういう事でしょうね。お二人にお伺いします。今の身体以外に別の仮の身体があるとすればどうお考えでしょうか?」



 セシャトの質問に二人はぽかんとする。



「何を言っておるんだ。ついに頭が沸いたかの?」



「うん、総司君は言い過ぎだけと俺もちょっと良く分からないですね」



 さすがに幕末志士に、SF。それも仮想ダイブ型の作品は理解が追い付かないだろう。それに意外と食いついたのは総司だった。



「貴様の言う『Spirit of the Darkness あの日、僕は妹の命と引き換えに世界を滅ぼした 箸・黒崎光』とやら、長い名前だの……要するに生身の身体以外に霊魂のような物と入れ替われるという事であろう?」



 やや解釈に難ありだが、総司が言いたい事は何となくセシャトも分かったのでその件で一旦考えてもらった。



「どうでしょうニューロデバイスのある世界、どうお考えですか?」



 セシャトとしてもこの二人が考えるSFの解釈、彼らの時代にSF作品があるとすれば竹取物語くらいだろう。そこを主軸に作品を説明しようかと考える。



「かぐや姫をご存じでしょうか? 月の国からやってくるというお話です」

「知っておるぞ!」

「そうですね。翁が愚かにも娘を守ろうと侍の集団を雇うも返り討ちにあう話ですね。俺たち、新選組なら月の軍勢であろうが確実に切り裂けるものを」



 ちょっと違うがその時点でも宇宙から空飛ぶ光の籠やらに乗って宇宙からやってくる物語がある事で、宇宙と地球との関係性への理解はすぐに伝わった。



「体のない魂だけのようなもの、その魂を算術で作れるというのはいささか不気味な話だの」



 科学というものは数学や算数を星の数程集めたもので、その過程としてSFが存在する。



「その、えす・えふという物の定義はなんなんでしょう?」

「良いご質問ですね土方さん。実はSFは難しいです。サイエンス・フィクション。化学の創作。あるいは虚説というくらいですので、そもそもの本筋の世界設定や、物理法則等の取り決めが必要になります。分かりやすくいいますと、土方さんや総司さんの日本刀で人を切っても血が出ない、人が死なないという世界だと仮定します。すると、次は何故そうならないのかを納得できる理屈をもって用意する必要があります。ここは極めて難しい故、Web小説界隈において本来のSFは確立しにくいんですね。それ故、そういう世界観の根源部分をあまり説明されない物をSF風ファンタジー小説というくくりになります」

「なるほど、奥が深い作品の種類であるという事は分かりました。このセシャトさんのお話する世界において、響生殿は体を持ち、妹君は死霊。作られる魂である。これは兄妹の関係と言えるのでしょうか?」



 ヤバい。恐ろしく説明が難しいという事にセシャトは困る。そういう世界設定なのだ。という同じ時代の人間には通用しないこの質問群。

 二人は焼き魚をつつき、女将さんが用意してくれたお酒に舌鼓を打ちながらセシャトの話を聞く。セシャトも作品のテラーであるが、各種作品の根幹に渡るまでの説明する知識を持ち合わせているわけではない。



「そうですねぇ、悪魔に魂を売るという言葉がありますが、自分の身内が生きられるならどのような形であれ、望むものではないでしょうか? 儒教や仏教の教えの中では極楽浄土へ行く事こそ最高の喜びと思われているかもしれませんが、人の心はそんなに単純ではありません」



 幕末志士にこの意味や届くか? 死に場所を探していたと史上で語られる土方は首を捻っていたが、総司は違った。



「まぁ、分からんでもないの。私はこの体が労咳で死ぬとしても、魂として死霊として生きられるならそちらを選ぶの。セシャト、この世界は死霊になれるのか?」



 これに関して、詳しい欄に話を聞いた。今の技術水準から考えて一億年後でも不可能であるという事。地球という惑星が先に死ぬか、人間が神の頂に挑戦できるか、そのくらい不可能な技術であり、望みは一ミリもないという事。



「今の時点ではこの物語で行われていることはできませんね。お二人の世界のほとんどの病気を克服した私達の世界ですが、死を超越するという事だけは今だできません」



 それに関しては土方が頷く。



「死は超越するものではなく、受け入れるものだからですね。この作品の世界でも死霊となっても死は存在する。何処までいっても人間は死と共にある。これを超越してしまったら、人ではなくなる。死霊ですらなく、人ではない何かという事でしょうか?」



 セシャトは少し驚いた。

 死を完全超越したSFはセシャトの知る限り存在しない。いくつかの制限をもって超越した世界はあるが、何の制限もなくそれを成功させた世界はない。

 結果として、人々は地動説を理解したように、死を失わせてはいけないものであると遺伝子の何かがそうさせているのかは定かではないが、江戸時代の人間ですらわかっている事。



「そうかもしれませんね! 私はお二人から教わる事の方が多いですねぇ」

「それに、一つ分かる事があるの。戦いは何処かで区切りをつけんと泥沼になる。そうなると勝つとか負けるとかはどうでもよくなってくるものだ。それが攘夷を考えておる連中もそうだの」



 フロンティアと現実の戦争に関して総司は結論をつけた。戦争自体はもうどうでも良くなっている環境であると見抜く。

 ここは戦争ばかりしていた時代の人なんだなとセシャトは感心。そして徳川幕府は終わりを告げるのだ。



「セシャトさん、セシャトさんの話を聞いていると、そのネメシスという鎧のような物は人間の反応を優に超えていると……その力は理解できない部分も多くありますが、神々の怒りのような力だと考えれば宜しいな。セシャトさんにお聞きしたい、この時代の戦争はどうなる?」



 戦闘武装集団である新選組の副長ともなれば気になるのだろう。作り話とはいえ、こんな兵器を考えるという事は、今の時代はどうなっているのか……

 セシャトもそこまで兵器に詳しいわけではないがこう一言彼らに言った。



「指一本で数十分後に江戸の町が無くなってしまう程度の兵器は今の世の中でもありますね。さすがに本作『Spirit of the Darkness あの日、僕は妹の命と引き換えに世界を滅ぼした 箸・黒崎光』みたいなトンデモ兵器はありませんが、お二人からすればそこまでの差異はないかもしれません」



 それに食事も終盤、ごはんをお替りした土方はそれに漬物を乗せるとお茶を所望する。それを見て総司も「あー! 私も食べるぞー!」

 本当に沖田総司はよく食べる。子供と遊ぶ毎日だったという彼だから、エネルギーの減り方が違うのかもしれないが……御櫃のお米を殆ど喰らいつくしてしまった。



「そんな戦の武器があるのに、この時代は平和そうでなによりです。私達の戦いが無駄であったとしてもそれは無駄じゃなかった。そう思えますね」



 土方は何かを悟った。そしてセシャトの先ほどの話を真っ向から否定してみせた。



「セシャトさんは、この『Spirit of the Darkness あの日、僕は妹の命と引き換えに世界を滅ぼした 箸・黒崎光』の世界はどれだけ経ってもこないと仰いましたが、私はそうは思いません」

「おや……それは興味深いですねぇ」



 SFどころから、数百年科学力知識に差のある二人、まさにフロンティアと現世の関係に近いのに、土方はそう言った。



「私達の時代、セシャトさんやこの時代の人間が幕末と呼ぶ時代。写真という技術に対しても私達は神の御業だと思ったものです。それをセシャトさんは持ち歩いております」



 スマートフォンやタブレットの事だろう。確かに観光地でよく写真を撮った。二人の事もセシャトは随分写真を写したものだった。



「そんな物、私は私の時代にいた時であれば1億年後でも作れないとそう考えてたと思います。多分海舟だって、坂本だってあのクソカラクリを作った平賀源内……あいつでも考えないだろう。でも数百年かそこらで、セシャトさん達はそれを持っている。侍が刀を帯刀するように、ほとんどの人がそれを持っている。なんなら子供ですら持っている」

「まぁ、そういう事だの。セシャト、貴様の白菜の漬物もいただくぞ」



 総司にそう言われて漬物を盗られている事すら気にならないように、セシャトは感じた。

 嗚呼、そういう事かとセシャトは驚愕した。SFなのだ。

 もはや、二人にとってはこの未来旅行の全てがSFじみているのだ。彼らがほとんど動じていないから気にならなかっただけで……彼らはSFを体感している。



「まぁ、これを言うと恐らくダメなんでしょう。ですが、宜しいですか? きっとセシャトさんが聞きたい話ではないかと?」



 自らも文学をたしなむ土方はセシャトという人間をよく理解していた。どちらがテラーか分からない状態で、土方は言う。



「この荒木という、胸糞悪い男……この男を私達と仮定するなら、私達新選組はこの世界の人間と戦をできます。勝てずとも、大きな被害は起こすでしょう。それがどれだけ強力な武器を相手が持っていても、場合によっては勝てるかもしれません。フロンティアという場所の圧倒的な優位感がないのは、人間は抗う生き物だからではないでしょうか?」



 荒木という男を胸糞悪いと普通の読者のような感想を述べながら、土方は彼をある程度評価した。



「この作品は私達の物語にも感じますね。総司君はどうだい? この時代と戦争するとなったら?」

「大根包丁でたたっ斬る。私は剣で死ねるならここでも良いぞ、病で死ぬ等つまらんし、くだらんわ。この作品を読めば読むほど、死霊になりたいと思うわな。近藤さんと土方さんと、死霊になっても新選組で面白おかしくやっての……」



 やや哀愁漂う沖田総司、彼と彼の保護者たる土方歳三もこの作品に関して、何か非常に思う事があるのだろう。

 思いのほか食いついてくれた事にセシャトはなんとか安心しながら、二人にこういった。



「そろそろデザートのアイスクリームを持ってきてもらいましょうか?」

「アイスクリームですか?」

「おぉ! あの冷たくて甘いやつだの! 酒を飲んだら甘い物が食べとうなった!」



 女将に連絡し、サービスなのか特盛のアイスクリームが部屋に届けられた。セシャトは少しだけニューロデバイスがあれば、新選組の二人や世界中の偉人を残す事ができたのかなとふとつまらない事を考えた。



さて、第六話は『Spirit of the Darkness あの日、僕は妹の命と引き換えに世界を滅ぼした 箸・黒崎光』。ご存じSFです! 新選組のお二人がSFを理解できるとは思いませんでしたが、どうでしょう。再度本作をお楽しみいただければ嬉しいですよぅ!いよいよ、新選組のお二人が元の世界へ戻る為の準備が次回見つかりそうですねぇ! そうです。今回はSFなんです!

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