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セシャトのWeb小説文庫2019  作者: 古書店ふしぎのくに
最終章 『セシャトのWeb小説文庫2019』
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第四話『千羽鶴 著・千羽稲穂』

さて、この前ですが古書店『ふしぎごのくに』で忘年会を行いましたよぅ! レシェフさんが東京に合宿できてくれている間に『おべりすく』さんも呼んでサタさんのお家にお招きいただきました! 皆さんでWIIUをしたりボードゲームを楽しんだり、そしてこっそりWeb小説オススメ作品を語り合って楽しくご飯を食べましたよぅ!

「おい、セシャト! 土方さん! これを見ろぉ!」



 総司が叫ぶので、二人は総司が立っているところに行くとポスターが張ってあった。そこには”平賀源内、謎の発明品展示”

 それは何に使われた物か分からないが、つい最近見つかった物という事で数日間だけ展示されるらしい。セシャトは何となくみていたが、土方と総司は違った。



「これは、万次郎の奴が俺達に使った……」

「やはりそうであろう? あの発明馬鹿の代物はこんな遠くの未来まで残っておるのか、驚きだの、よし、これを見に行くぞ」



 総司は楽しそうに、先陣を切る。何処に行くかも分からないので二秒で総司はその事に気づき、セシャトを呼ぶ。



「よし、我等を連れていけセシャト!」

「また総司君! セシャトさんに命令しちゃダメだよ」



 土方に叱られながら、スネる総司。そんな総司を見てセシャトはふふふのふと笑う。そして話し出した。



「お二人は、ご家族のようですねぇ」

「まぁ、総司君と俺は兄弟みたいなものですよねぇ、そしてセシャトさん、その顔は何かまた面白いお話があるんじゃないですか?」



 先ほどからの流れで土方も随分セシャトという人間について分かってきていた。それは土方も文学を嗜むが故の反応。



「全く、土方さんは生まれる時代を間違えたのぉ。剣よりも筆だものな」

「そうだね。筆で生きていけるこの時代は憧れるよ。で、セシャトさん。目的地に行くがてらお話をお願いします」



 心を読まれているのかと苦笑するセシャトはコホンと咳払いしてから話し出した。


『千羽鶴 著・千羽稲穂』


 幕末の時代、遊びも沢山あり、連鶴としてその知識は総司も土方にもあった。



「セシャトさん、しかしどうして、千羽折ったらその女子達は死のうという約束をしているのでしょうか?」



 総司も同じくはてなという顔を見せる。



「全くもって度し難いの。鶴は縁起ものではないか、何故死のうと思う……飢饉でもあった古来ならともかくのぉ」



 これまた過去の人たちは率直な意見、そして少しセシャトには分からない考えももってそうだった。やはり彼らと現代の作品の話をするのは面白い。そうセシャトは頬が緩んだ。



「そうですねぇ、彼女達の中では死ぬという事が、幸福に見えていたりするんですよ。これはなんというか非常に説明が難しいのですが、衣食住においては今の時代は足りない物はないんですが、心の置き所といえば宜しいでしょうか? 生き甲斐のような物が中々見つけれないんですよね」



 土方と総司の目は生きている。人生を生き生きと楽しんでいる顔を見せているので、セシャトはあまり現代の悪い面を見て欲しくないなとは思ったが、この作品を知ってもらうにはどうしても必要な部分かと何かたとえを考えていると総司が話し出した。



「まぁ、この考えを持つやつは信仰にすがる奴に多いの」

「おや、沖田さん。沖田さん達の時代にもこのような方々が?」



 腰に差した刀の鍔を触りながら沖田はお腹を押さえる。少し腹が減ってきたのだろう。この仕草に神様に見た目もそっくりだが、底なしの胃袋まで似ている事におかしくなる。



「おるぞ、決められた夫婦に慣れぬからと入水する奴もごまんと見てきたし、神とやらにすがってその世界に行くと集団自決する奴らもおったの、ようは現実から逃げる口上だの」



 まさかまさかの、幕末の美剣士沖田総司が核心を語ってしまうとはセシャトは思いもしなかった。



「総司君は死にたいとか絶対思わないだろうからね」



 笑ってそう言った土方に総司は口の端を噛んでから言う。



「死ぬなら剣で死にたいものよな」



 彼は、自分の運命を未来で知ってしまった。それ故、なんとか生き永らえようと考えている。千鶴とは別のベクトルの信念を持っている。



「すばらしいですね沖田さん。まぁ何も考えずに言えばそうなんです。本作は、何故千鶴さんが吉さんと死を共にしたいかという事を追想していく物語になります」



 セシャトが二人に千鶴の学校環境について、家庭環境について話していく。そんな中で、これまたセシャトの想像外の話が飛び出してきた。



「千鶴の姉、少し軽蔑して語られておるようだが、別に色に狂っても恥ずかしくはないよの? 芹沢というどたわけも愛人をようかこっておったし」



 セシャトには歴史の知識は浅い。芹沢鴨なる人物か誰かは全く分からなかったが、彼らの時代において恋愛は今より広く自由度が高かったらしい。



「千鶴さんのお姉さん、実に皆さんに好印象ですねぇ」



 実際、身体の関係に逃げやすい事もこの世代特有であり、彼女はそれよりも家族を大事にしようという動きの方が実に印象的なのだ。

 特に幕末男子たちのウケは良かったらしい。



「そうですな。俺もこういう娘は嫌いじゃないです」



 あの土方歳三に言われるなら、それはお墨付きだろうかとセシャトは一人くだらない事を考えていた。



「千羽折るという願掛け、呪いみたいだの。まじないや呪いの類は思い込みが凄いからの、この千鶴という娘、本当は一人でこの邪悪な企てをしておるのではないのか?」



 総司が少し、鋭い読みを見せ、土方も少し考える。



「この千鶴さん、少し自分に酔ってはいませんか? 死ぬという事を美化しすぎている気がしてなりません。死に美しい等ありません。死は醜く、そして臭う」



 あまたの死体を見てきた新選組故のリアルな情報。セシャトは激しく新鮮故どうしようかと思った。

 今現代の人間が同じ事を言うのと、幕末の剣士が言うのとでは命の重みが違う。心底セシャトは自分の不思議な特異体質を感謝した。



「この時代の成長途中の子供。特に女の子は大変難しいんですよ。死ぬという選択肢にある種の憧れを抱いているんです。自分に必要性を感じない等、沢山思いつめてですね」



 セシャトの話をどれだけ理解できているのか分からないが、総司と土方は考え込む。否定するのではなく、彼らは知ろうとしていた。

 吉の考えを、千鶴の考えを、千鶴の母、父、姉。そこで出した総司の結論。



「死にたいという奴は勝手に自害するよの? こやつ、ただの迷い、考える時間を折り鶴を折るという事にしておるのではないのか? 最初は勢いで死ぬつもりだったかもしれんが、引っ込みがつかなくなった。だから止めて欲しかったのであろう。私もそんな奴を見て来たわ。全員、まとめて冥府に送ってやったがの」



 セシャトはいい話を聞いていたつもりが、途中から沖田総司の俺つえーを聞かされるだけに至った。



「まぁ、あれだ。死にたい奴は勝手に死ぬか、私みたいな人間に介錯されにくるものだ。千鶴は良い友に巡り合ったの。他人の為に真剣に動ける奴など、私の時代にも殆どおらんぞ。そして千鶴はしっかりと他人への感謝も忘れてはおらん。こやつ、もう死ねんぞ」



 ケケケと笑う総司。

 そしてそんな総司を優しく見る土方。



「そうですね。彼女は死にたい。のではなく、助けてほしかったんじゃないでしょうか? 誰にも聞こえぬ心の叫び、それは吉という子を呼び寄せた。いや、それも違いますね。自分の世界を壊してくれる事を望んだんでしょうか、いずれにせよ総司君と同じですね。もうこの娘は死ねません。俺達には分かります」



 近藤勇、彼はカリスマはあったかもしれないが、組織を統率する程の器は無かったと言われている。そんな彼の事を良くは思わなかったが隊士達も沢山いただろう。身内びいきの愚か者と……

 それでも土方、総司共に止まれないところにいる。新選組という連鶴に身を置いた事で彼らの命はもはや自分の物ではなくなった。

 近藤勇の斬首、沖田総司の病死、そしてこの朗らかな男。土方歳三、五稜郭での壮絶な死を遂げると歴史は語る。



「お二人からしてこの物語はどうですか?」

「茶菓子より、甘いの! だが、嫌いではないぞ。たまにはこういう胃が持たれそうな物語も悪くはないの、そしてセシャト。腹が減った」



 総司がそう言う。



「俺も好きですよ。何とも言えない、胸に少しつっかえが残ったような気持ちになりますが、こんなにも平和な世界がやってくるなら俺達が戦う意味を感じますね」



 話して良かったなとセシャトは思う。そして目的地にやってきたが、少し困った事になったいた。


”本日休業”


 平賀源内の発明を見に来たハズが日を改めなければならない事を総司と土方に説明すると土方は頷く。



「困りましたね。何処か宿を取らなければなりませんが、これ以上セシャトさんに迷惑をかけるわけにもいかぬし……」



 そう困る土方。

 明るい声で叫ぶ総司。



「おい、セシャト! さんびゃくえんという金を貸せぃ!」

「あらあら、何か買われるのですか?」



 セシャトは財布から百円玉を三枚差し出すと総司は何処かに走っていく。食べ物を奢ってもらい、お金までせびる総司に土方は閉口するが、総司の叫び声に思考が閉ざされる。



「おし、当たったぞぉい!」



 総司は紙幣を数枚持って戻ってきた。



「ほれ、この時代の金であろ? 富くじを当ててきてやった。これで宿代と飯代の足しになろう!」



 渡されたのは一万円札が五枚、スピードくじ一枚で沖田総司は高額当選をしてみせた。確かに三人分の宿と食事代には十分になりうる。



「えぇ、はい」

「では、源内のクソ発明が見られないなら何処か宿に入って飯にしようぞ」



 そう言っててくてくと沖田総司は駆けていく。そんな総司について土方、そしてセシャトは続いた。

第四話、どうやらお二人が帰る方法はジョン万次郎さんがお二人に使った平賀源内さんの発明っぽいですねぇ! さて、死について皆さんはどう考えますか?『千羽鶴 著・千羽稲穂』本作は非常にそれを強く考えさせてくれる作品ではないでしょうか? 是非とも再度お楽しみいただければ幸いですよぅ!

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