神降しと神々達の大衆遊戯
本日は1月最終日ですね^^1月は行くと言いますが、2月が来ます。そして春が来ると思うと少しほんわかした気持ちになりますね!
さてさて、閑話休題。面白い方々が古書店『ふしぎのくに』に遊びにきたようです^^
「なんでしょうこの状況は……」
セシャトが母屋から戻ってくると、テーブルが片付けられ、炬燵が用意された中で神様とヘカ、そして見知らぬというか、本来ここにいるべきではない二人が座って、ジョーカー・コール(ばばぬき)が開催されていた。
ジョーカー・コールの簡単なルール説明をしよう。
ばばぬきとゲームは変わらないのだが、ババを引いた時、元気よく「ジョーカーキープ!」っとコールしなければならない。古書店『ふしぎのくに』独特のババ抜きである。
「何が神降し共だ。私なんか身体ないからジンベイザメ降ろしだからの、ぬぉ! なんか刺身みたいに聞こえるの」
そう言って神様は、少年の手札からカードを引く。少年はにやり、そして神様は炬燵の台にバンとカードを置いて叫ぶ。
「ジョーカーキープだのぉ! くそぅ」
神様はカードをぐるぐると混ぜて、となりの少女に引かせる。そしてコールはない。ジョーカーは神様の手元。そしてペアができた少女は喜々として「やたー」とカードを捨て、となりのヘカのターン。
「使えない神様なん、ヘカがまとめて相手になるん。神無になる事、念仏でも唱えてるん」
そう言って少女からカードを引き、ペアを作るとそれを捨て、最初の少年に向かって挑発的な虚ろな瞳を見せる。
なんだが、出来上がっている雰囲気の中でセシャトは声をかける。
「神様とヘカさん、何されてるんですか? そちらのお二人はもしかすると、あのシュウさんとシンシアさんでお間違いないでしょうか?」
そう『神降し達の黄昏時 著・だん』の作品内キャラクター。それはそうと果たして何をしているのか?
「あぁ」
「うん!」
当たり前のように返事が返ってくるので、セシャトは神様とヘカを見る。神様は自分の手札を見ながら答えた。
「だんの奴がの、勝手に朗読なんぞしよるから、こっちも勝手に呼び出してやると馬鹿がいいよってな。私の髪の毛を二本も抜いたのだ。二本だぞ! 痛かった。あれは痛かったのぉ!」
そしてヘカは自分の頭の中から羽ペンを取り出す。
「神様の髪の毛を触媒にして、Web小説から書き出ししたん」
「書き出ししたん! じゃないですよ! で、なんでジョーカーコールしてるんですか?」
神様とヘカが微妙な顔をする。
それはさかのぼる事、一時間前。
「だん、奴は一線を越えよったな。良い度胸だ。ヘカ、奴のキャラクターを呼び出して折檻してやる。力を貸せ」
「しかたないんな。神様のオヤツ代三か月分で手を打つん」
ヘカは頭の羽ペンを取り出すと、神様の髪の毛をプツンと抜いた。
「痛いっ! 何をする馬鹿ぁ!」
「エナジードリンクが足りないん。神様の身体の一部なら十分その代わりになるん。じゃあ、行くんよ。фцумновн(Web小説疑似書き出し)」
二人の何者かを呼び出すと神様とヘカはその二人に対峙する。訳も分からず呼び出された二人、その内の少年は神様とヘカを見ていう。
「お前達は誰だ」
神様は腕を組むと笑う。
「私は全書全読の神様だ。貴様等に恨みはないが、やっつけてやろう」
神様が指をパチンと鳴らす。そこは火星。一瞬にして世界を変えた事に二人は驚きを隠せない。
「さぁ、やれヘカ! 貴様ならよぅ分からん理屈で倒せるであろう」
「何言ってるん?」
ヘカが目を点にして神様を見る。手をぱたぱたと振って不可能である事を表現する。
「やるのか、やらないのか?」
少年は少しけだるそうにそう言う。ヘカは神様の背中を押してこう言った。
「神様が相手になるん。シュウ、全力で神様を屠るん! 手加減は不要なん」
「あー! 馬鹿、貴様裏切ったな!」
ヘカは虚ろな瞳で少年、そして少女の元へ向かう。
「敵の敵は味方なんな」
シュウと呼ばれた少年は反応に困っていたが、少女はヘカを良しとしなかった。虚ろな瞳のヘカに対して、真直ぐと金色の瞳で見つめて言い放つ。
「誠愚かの極。貴様の名前が馬鹿というのも、実に相応しい」
「馬鹿じゃないん。ヘカなん。シンシア、消えるん。イケメンだけで十分なん」
「消えるのはどっちか、教えてやろうか?」
くわっと明らかに冗談抜きの空気があたりを包むので、ヘカは少し考える。神様をチラ見するともはや自分に対して恨みつらみしか抱えてなさそう。
「古書店『ふしぎのくに』は穏健派なん。脳筋なんは「おべりすく」なん。という事で一旦タンマ。神様、母屋に戻すん」
こと戦闘という点に関して、神様もヘカも一般人以下、赤子の首をひねるどころか、蟻を踏み潰すくらい容易い。嫌々神様は元の空間に戻すと、ヘカを睨みつける。
「どうするのだ?」
「ここはヘカ達のテリトリーなんよ? ジョーカーコールで叩き潰すん。シュウとシンシア、ヘカ達の戦い方で戦う事異論はないんな?」
勝手な理由を押し付け、ルールを説明する。シュウはあからさまに嫌そうな顔をする反面、シンシアは逆に楽しそうに瞳孔を開いた。
「じゃあちょっと準備するん。二人も手伝うん」
てきぱきと炬燵、みかん、そしてトランプ。席決めをして南にシュウ。西に神様、北にシンシア、東にヘカ。
「麻雀じゃなくて良かったんな! ヘカの積み込みが決まれば、ここにいる全員が死ぬん」
と適当な嘘を語った後にヘカはリフルシャッフル。それを見て神様とシンシアは同じ反応を見せた。
「「おぉ」」
「神技、窄弾札混なん」
そして今に至る。それを聞いて呆れるのはセシャト。
「だんさんは朗読許可をわざわざ私にDMを頂き、行っております。実際承諾の必要もないんですが、それに神様とヘカさんは何してるんですか」
セシャトはシュウとシンシアに珈琲とココアを淹れ、手元にコトンと置いた。それにシュウは「ありがとう」シンシアは「気が利くな」というのでにっこり笑って言った。
「ゆっくり楽しんで行ってくださいね」
セシャトはカード数を見る。シュウが残り二枚、神様が六枚、ヘカが二枚、シンシアが一枚。神様がほぼ全員のクリアカードを保有しさらに言えばジョーカーまで持っている。
何順目なのか神様がカードを引く番、当然の如く神様は一枚ペアが出来て捨てる。そしてここで仕掛けた。
「のぉ、シンシア。貴様私との勝負真向から受けるかの?」
「自らを神となのる愚か者、いいだろう受けてやる」
そしてシンシアが乗った。神様はジョーカーをぴょこりと他の手札より少し上にしてシンシアに向ける。
「引けるものなら引いてみろ!」
(せこい! 神様、それはちょっと引いちゃうくらい小さいですよ)
セシャトは二人に出すロールケーキを切りながらそう考えているが、シンシアはふっと笑うとそれを引く。そしてそのカードを見て、少し悲しそうな顔をしてから怒る。
「貴様卑怯だぞ!」
「シンシアコールだ。貴様は何を引いたのかのぉ?」
ケケケと笑う神様にシンシアは下唇を少しかんでから元気よく叫ぶ。
「ジョーカー・キープだっ!」
シンシアはここでも失敗する。カードを混ぜる事なく、神様が引いたカードをそのままヘカに見せる。当然ヘカはジョーカーでない方を引く。続いてシュウがヘカのカードを引くが、このターンペアが揃ったのは神様ただ一人。この場で一番カードを持つ神様はザコであり最強。まさに勝利の前の彼岸として立ちふさがる。
カードが減れば減る程、神様の力は疲弊していくのも事実。
「シュウ、お前に一番のりをくれてやるん。見せてみるん、ヘカ(魔力)を持ってこの場に最終戦争を起こすん」
ヘカの言葉の意味が分からないまま、シュウは神様にカードを引かせ、神様はペアを作る。そしてシンシアが神様からカードを引き、またしてもヘカはジョーカーではないカードを引く。そしてヘカは虚ろな瞳を持っていう。
「ここで、ヘカはカードオープンするん」
ババ抜きのルールを根底から無視する荒業。当然の如くシュウはクリアカードを選び。神様にカードをパスする事で一抜けが確定する。
このヘカのカードオープンの場合、神様の勝利も確定してしまう。だが、ヘカは自分の勝利しか考えてはいない。
「シュウが勝利した事で、ラグナロクが起きるん」
「黄昏時?」
簡単に言えば逆回り、革命である。マニアックなババ抜きのローカルルールが発動。ヘカのカードをシンシアが引くがジョーカーしか持っていないので手札が増えるのみ、神様はヘカ同様シンシアが今引いたカードを引こうとするがヘカが口を出す。
「シンシア、カード丸わかりなん。ぐるぐる混ぜるん」
「そうか、馬鹿貴様いいやつだな」
「馬鹿じゃないん、ヘカなんな」
それに怒るのは神様。
「貴様、馬鹿ずるいぞっ!」
「馬鹿じゃないん、ヘカなん。バカバカ言うのが何か二人いると疲れるんな」
どちらがジョーカーか分からなくなった状態で神様はもちろんジョーカーを引く。
「ぬぉ、なんでだぁ! ジョーカー・キープ」
神様の持つ三枚のカードの内、一枚はヘカの上りカード。ここから泥沼のドロー合戦が始まるのかと思いきや。ヘカは懐からエナジードリンクを出した。
「こんな無益な戦い終わりにするん」
ごきゅごきゅとそれを飲んでいる姿を見て神様は思い出す。
「貴様、エナジードリンク持っているではないか! 嘘ついて髪の毛抜きおったな!」
ヘカは東洋の魔女と見まごう姿に変わると、目を瞑って神様のカードに触れる。
「これは、ジョーカーなん。でこっちはスペードのエース。ならヘカの上りカードは一番端のクラブの7なんな?」
そう言ってカードを引いてポイとペアを捨てる。ヘカは馬鹿笑いをして神様とシンシアをひとしきりディスった。
もはやこの場で最後に負けるとかありえない。二人の中でジョーカー取り合戦が開始される。
「シンシア、貴様には悪いが私は負けるわけにはいかぬ」
「自称神らしい台詞だなっ、いいだろう決着をつけてやる」
神様とシンシアはゆっくりと立ち上がると、呼吸を整える。シンシアはお花でも包み込むように手の中に紅蓮の剣を呼び出す。
「そんなひのきの棒で私に勝つつもりか、愚か者めがっ!」
神様はパチンと指を鳴らすとそこは野球の球場に変わる。セシャト、ヘカ、シュウはセンター席に座りこの茶番を眺めていた。バッターボックスに立つのはシンシア。
神様はふわりと少し浮かび上がると髪の毛が逆立つ。そして手に何やらまぁるい球体を作り出した。
「千年生きたメガロドンの牙で作った三振の魔弾」
神様が作り出した即席神器。それにシンシアは紅蓮の剣を神様に向けて、予告ホームラン。
「”振り下ろされし怒り”に斬れぬものはない」
「魔剣、魔剣のぉ、負けん! と言いたいのかの? ぷぷぷっ」
神様の神様ギャグが炸裂するが、残念ながらそれが面白いのは神様だけだった。神様は足を高く天に上げて、ピッチングフォームを取ると手元にあるそれを投げた。
「打てる物なら打ってみよっ!」
「おぉ!」
力んだシンシアだったが、神様の投げる球の遅い事。あまりの遅さに空振り。神様は何処から取り出したのか野球帽をかぶると再び投げる。その遅さにタイミングを合わせたシンシアだったが、ファール。
「追い詰めたぞシンシア、貴様のそれが魔剣などと言っている間は私のこれを捉えられんぞ!」
「なんだと?」
「そもそも、シグルドという阿呆が自身を血染めした故、魔導に落ちたのが悪竜を殺す怒り。魔剣グラムだの、そもそもオーディーンという阿呆が作ったフィギュアにレギンというワルキューレがおっての、元々はそいつの持ち物だ。出自は聖剣、そしてその真名は聖剣グラムとな?」
神様はシンシアが持つグラムの色違いをぱっと出して見せてすぐに消した。
「ただの自称神ではないようだな」
「私は全書全読の神様だっ! そして、貴様は私に三振と取られて負けるのだぁ!」
この世にはレベルを上げて物理で殴れという言葉がある。神様の運動性能が、神降したるシンシアに1ミリとて届くわけがない。バックグラウンド、果ては場外へと神様の投げたサメの牙で作ったボールは消えていく。
「うぉおおお、何故だぁあああ!」
その光景は高校野球で決勝戦敗退投手のようだったと後にシュウ、セシャト、ヘカは語る。ひとしきり遊んだあとに、全員にお茶を配るセシャト。
「だんの奴も阿呆だが、非常にいい奴だしの。それに良い声だ。貴様等、まぁ作者を支えてやれ」
神様の言葉にシュウもシンシアも珍妙な顔をする。それにヘカもつけたした。
「ヘカの方が凄い物語書くんよ。でもまぁ、神降し達の黄昏時は二期も読んでるん。あとだんは声がいいんな」
もう時間がないようで、シュウもシンシアも消えかかっている。
「なんだか全然分からないが、面白かった」
「神様、またやろうなっ! 次はグラム同士で」
別れの言葉なんて言い出す二人にセシャトは二人の手を握る。
「また何処かでお会いしましょう!」
それは語られる事のない物語。
神降しと神々達の大衆遊戯。
ヘカが最後に突っ込む。
「ババ抜きどうなったん?」
皆さん、ご存知でしょうか?
『神降し達の黄昏時 著・だん』
英傑、英雄、そしてルーダーにヒールそんな方々の魂を降ろした人々の戦いの日々!
今回、朗読をして頂いているお礼に当方のライターさんに書いて頂きましたよぅ^^
本編はこんなゆるくはないですが、一度読んで頂ければ嬉しいですよぅ!




