2019年1月1日 1歳の誕生日
さて、数日前から高熱にうなされており、少々各方面にご迷惑をおかけしました。
そんな間の悪い私ですが、今年も全力全開で頑張りますよぅ! 今年はなんと……古書店『ふしぎのくに』に悪の牙が……なんて展開もあるかもしれませんね!
セシャトは大きなショートケーキと大きなお萩を買ってそれを並べて見つめていた。
「むふっ! この和洋最強スイーツ決定戦という贅沢を行えるのも誕生日という日くらいですねぇ! でもショートケーキは日本生まれ、あれ? という事はどちらも和菓子なんでしょうか? むむっ! これは調べる必要がありそうですねぇ!」
デコレーションケーキはそもそも、にくじゃがに近い勘違いから生まれた可能性が極めて高い。恐らくは不二家の創始者発祥と言われているが、とりあえず日本風に作った結果、まさかの世界最高峰のケーキが出来上がったんだろう。
セシャトはそんなスイーツのうんちくを一人で考えながら、みんなが祝ってくれる誕生日会とは別に自分ひとりでボッチバースデーを楽しんでいた。
普段は八女の緑茶にダークローストなんてこ洒落た物を淹れて楽しむセシャトだが、ジャンクな物も実は好きなのだ。
「ふふふのふ、一人だからできるインスタントの梅昆布茶にバンホーデンじゃなくて良い子はみんな大好き森永のココアですよぅ!」
そして、手元にはノートパソコンを置く。
Web小説を観覧しながら、美味しいお菓子に手抜きの飲み物、これがセシャトにおける至福の誕生日の過ごし方。
「まぁ、と言っても私お誕生日を祝うのは今日が初めてなんですけどねぇ!」
独り言を言いながらセシャトはお萩にフォークを入れる。そして一口分切り分けて口の中に入れる。
「はっひゃあああ! なんですかコレ? 脳に唯一の栄養である糖分が無駄なく、もれなく行き届いてますよぅ!」
実は和菓子は洋菓子に比べて血糖値の上昇が緩やかで、そして落ちやすい。まずはゆっくりとお萩を堪能する。
そして時々梅昆布茶。
「はぅ……幸せというものは案外近くにあるものなんですよぅ! 文芸部の方々も水曜日用に色々頑張ってるみたいですし……私も、と言いたいところですが今日くらいはいいですよねぇ!」
お萩を半分食べたところで、次はショートケーキ。この食べ方も順序が存在する。今しがたお萩で口の中は甘くなっている。
そこで食べる物は……
「昔は貴女を最後に食べていましたよぅ!」
苺にフォークを刺す。
ショートケーキをショートケーキと言わしめている果実。それをセシャトはパクリと食べて目を瞑る。
「うぅ、ややこの酸っぱさが私に生を感じさせてくれますねぇ! アダムさんとイブさんがリンゴではなく苺を食べなくてよかったですねぇ!」
からの、ケーキ生地をクリームを多めにつけて食べる。
それは本日二回目。
「は……はひゃぁああ!」
もしこの光景を誰かが見ていたら、すぐさま病院に連絡して黄色い救急車がやってきたかもしれない。古書店『ふしぎのくに』の扉は堅く施錠されており、蟻一匹侵入できない。いわばここはセシャトの砦と化しているのだ。
スイーツで頭が大分スイーツになってしまっているセシャトだが、ノートパソコンを触る手は当然Web小説に向いていた。
「元旦ですし、和物の作品を……あれを読みましょうか!」
そう言ってブックマークから作品を辿る。セシャトは金色の鍵を取り出してノートパソコンの画面にそれをつけた。
「……あれ?」
もう一度それをつけてみる。やはり何も起きない。
「もしや……嗚呼やはりそうでしたか、『天ノ狗 著・芳納珪』書籍化されたんですねぇ。おめでとうございます」
セシャトのライブラリーからそれが消える。今日を終える頃にはその記憶もまた曖昧になるのだろうかとやや寂しげな表情をするが、セシャト目の前のケーキとお萩を見つめる。
「ふふふのふ、記憶を失えば書籍化した物を楽しむ際、二倍楽しめます! それはそれで結構いいかもしれませんね!」
そう言ってケーキとお萩を同時に食べるというオーバーキルを行うセシャト、彼女が妖怪甘味狂いと呼ばれる所以でもある。
ガンガンガン!
「せしゃとー、あけろー! 私がきたー!」
「あら、正義のヒーローみたいな登場ですね。神様」
声からしてあの神様がやってきたので、セシャトは出迎える。いつも通り寒くはないんだろうかというパーカーに半ズボン。
「あけましておめでとうございます!」
「うむ、お年玉を回収にきたっ!」
我が子の誕生日にお年玉をせびりにくる親。そんな者がこの世に存在するのだなと思いながらセシャトはアニメキャラクターの印刷されたポチ袋を神様に渡した。
「はいどうぞ!」
「うむ、ではこれで寿司でも喰いにいこう!」
実は本日私の誕生日なんです^^
去年は生まれましたから1歳ですね! という事で、どうぞ本年度のセシャトのWeb小説文庫もお楽しみ頂ければと思います。
この場を借りて、今年も宜しくお願い致します!