表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

僕は何故、今……

作者: まにぃ
掲載日:2017/10/23

本格的な恋愛物に、初めて挑戦してみました。

宜しければ、少しの間お付き合い下さいませ。

それでは……。

 あれ?

 どうして僕は、こんな事になっている?

 思い出してみるか……そうだ!

 あれだ!

 あれが切っ掛けだったんだ……。




 思い当たるのは、そう。

 高校を卒業する、その前日。

 急に、あいつに呼び出されたんだっけ。

 僕は『何だろう』と思いながら、屋上のドアを開けたんだ。

 そしたら。

 思い詰めた様な表情で、あいつが立っていたんだ。

 小学校からの親友、〔レイジ〕。

 僕は軽い感じで、声を掛けたんだけど……。


「よう。どうしたんだ?用なら、帰りながらでも良いじゃないか。」


「俺達、明日で卒業だろ?進路もバラバラになるしさ。その前に、お前に言っときたい事が有るんだ。」


「何だよ、急に改まって。今日は変だぞ、お前。」


 僕は笑いながら、レイジにそう言ったんだけど。

 あいつの眉が、ピクピク動いていたんだ。

 様子がおかしいと思い始めたのは、その時からかな?

 するとあいつは、バッと頭を下げて謝るんだ。


「済まん!俺、〔あいつ〕と付き合ってるんだ!」


「え?誰誰?」


 僕は面白がってしまった。

 こいつの恋バナなんて、今まで聞いた事が無かったから。

 それが余計に、あいつの罪悪感をつついちゃったんだろうな。

 あいつは顔をしわくちゃにしながら、声を絞り出す様に言ったんだ。




「……〔エリ〕。」




 え?

 僕は思わず、そう返した。

 エリって、まさか!?


「ああ。あのエリだよ。」


「ちょ、ちょっと待ってくれよ!冗談だろ!」


「だから、『済まん』と謝ってるじゃないか。」


「え、えぇ……。」


 僕は言葉を失った。

 高校生活の3年間、僕達は。

 僕、レイジ、エリ、そしてもう1人。

 仲の良いこの4人で、あちこち遊び回っていた。

 それはもう、毎日が楽しかったさ。

 クラスも3年間、ずっと一緒だったし。

 その中で僕は、何時いつの間にかエリを好きになってたんだ。

 でも、告白する勇気が無かった。

 今の関係が壊れそうで、怖かったんだ。

 それでもレイジにだけは、隠して置きたく無くて。

 思い切って相談したんだ。

 レイジはニコッと笑いながら、『応援してるぜ!』と言ってくれた。

 言ってくれたんだ。

 2人きりになるチャンスも、何度も作ってくれた。

 てっきり、僕の事を真剣に応援してくれてると思ってた。

 なのに、どうして……。

 僕はレイジを問い詰めた。

『親友だろ、どうして話してくれなかったんだ』って。

 ちょっと言い方がキツかったのかも知れない。

 あいつも困り果てていたみたいだった。

 そこに丁度、エリが現れたんだ。

 どうやら、中々戻って来ないレイジを心配していたらしい。

 屋上へ飛び込むなり、僕へこう言ったんだ。




「レイジは悪く無い!私が悪いの!」




「どう言う事だよ!」


 僕は思わず、怒鳴り返してしまったんだ。

 そんなつもりは無かったのに。

 エリの顔を見た途端、冷静でいられなくなってしまった。

 僕は暗に、説明を求めた。

 エリは、何度か言うのを躊躇ためらったけど。

 重い口を開いて、こう言ったんだ。


「私から告白したの。『ずっと好きだった、付き合って』って。」


「レイジは、何て……?」


「初めは断られたわ。『ごめん、無理』って。それでも私は諦めなかったの。それでとうとう……。」


「受け入れたってのか?」


「ああ。こいつの真剣さを、これ以上裏切れなかったんだ。」


 レイジは僕に、そう答えた。

 恋人同士になる前、エリに僕の気持ちを伝えたらしい。

『あいつを裏切る様な真似はしたく無い、それでも付き合いたいのか?』って。

 エリも最初は戸惑ったけど、『レイジを好きな気持ちは止められないから』って。

 僕からの非難を覚悟で付き合い出したって、レイジは言ったけど。

 じゃあ何で、僕に隠してたんだ?

 親友じゃ無かったのか?

 所詮しょせん、それだけの関係だったのか?

 これまで過ごして来た時間は、何だったんだ……。

 ガクッと肩を落とす僕へ。

 レイジは辛そうに、こう言った。


「親友だからこそ、言えない事も有るんだ。分かってくれよ。」


 そう言いながら、レイジはうつむいた。

 でも僕は、納得出来無かった。

 エリは今、僕の目の前で。

 お前が身体を震わせている姿を見て、目を潤ませながら抱き付いている。

 そんなのを見せ付けるなよ、悪びれてる様に見えないだろ!

 分かんない、分かんないよ!

 分かりたくも無い、もう聞きたく無い!


「あっ!おい!」


 レイジが止めるのも聞かずに、僕は屋上から階段を駆け下りた。

 その場から逃げる様に。




 僕はずっと、思い続けていたんだぞ!

 お前だって、知ってただろ!

 何が親友だ、この裏切り者!

 レイジに向かって、そう怒鳴れたら。

 どんなに心が楽だっただろう。

 それが出来なかったって事は、僕もまだ。

 あいつの事を、親友だと思いたかったんだろう。

 そう思いながら、人の少ない校舎を何と無くブラブラしてたんだ。

 2人共、とっとと帰ってくれ。

 今日はもう、顔も見たく無い。

 そんな感じで。




 それから1時間位経ったかなあ。

 いい加減帰ろうと、校門から外へ出ようとした時。

 あいつの姿を見つけたんだ。

 遊び仲間の残りの1人、〔サナエ〕。

 片足をプラプラさせながら、僕に話し掛けて来たんだ。


「どうしたの?」


「べ、別に……。」


 僕は咄嗟とっさに、すっとぼけてしまった。

 後ろめたい事なんて無いのに。

 サナエは心配そうな顔で、僕の顔を覗き込んで。

 言ったんだ。


「レイジとエリの事?」


「ど、どうしてそれを!」


 僕は思わず、大声を上げてしまった。

 放課後で良かった、人もまばらで反応する奴は居なかった様だ。

 思わずホッとする僕に、サナエは聞いて来たんだ。


「目、赤いよ?」


 しまった!

 泣いてたのがバレた!?


「き、気のせいだろ。」


 誤魔化せた感触は無い、それでも何も言わないよりはましだ。

 するとサナエは、意外な事を言って来たんだ。


「私、見ちゃったんだ。3人が屋上で話してるとこ。」


「え?な、何で?」


 僕には何の事か、さっぱり分からなかった。

 普段は元気印、その明るさでみんなを引っ張っていたサナエが。

 今はやけに、しおらしい。

 モジモジしながら、何かを言おうとしてる。

 それが気になった僕は、サナエに催促した。


「何だよ?僕の事が、そんなにおかしいか?無様ぶざまか?」


 この時も、語気が強かったのかも知れない。

 あのサナエがたじろいでいたから。

 それでも意を決して、サナエは言った。

 僕はその言葉に、驚いたんだけど……。




「私じゃ……駄目かな?」




「サ、サナエ!?」


「私じゃ、エリの代わりに成れない?」


「何を言い出すんだ、突然!」


「好きだって言ってんの!あんたが!」


 ガバッ!

 サナエは、僕の身体へ急に抱き付いた。

 もう離さない、みたいな感じで。

 目を潤ませながら、上目遣いで。

 サナエは言うんだ。


「ずっと……ずっと、好きだった。」


「ご、ごめん。僕はエリが……。」


「知ってる。ずっとあんたを見ていたから。」


 サナエから、冷静にそう返された。

 気が動転していた僕は、明らかに語彙ごい力が低下していた。

 こんな言葉しか、出て来なかった位に。


「なら、何で……。」


「今のあんたを見ていると、辛いんだもん!心の奥が、ギューッと痛くなるんだもん!」


 そう言うと、サナエの抱き付く力が。

 強くなった気がした。

 それで、気付いたんだ。

 ああ、僕と同じ様に。

 サナエもずっと、苦しんでたんだ。

 4人の関係が崩れる事を、恐れていたんだ。

 なんてこった、僕は本当に独りよがりだったんだな……。

 そう考えると、心の整理が付いた気がした。

 僕はサナエに、こう言ったんだ。


「ごめん、サナエとは付き合えないよ。」


「エリの事が、まだ好きって事?」


 クスン、クスン。

 サナエも泣いているらしい。

 僕はサナエをそっと、身体から引き離して。

 その顔をジッと見つめながら、真心を込めて。

 こう返事したんだ。


「サナエの気持ちが真っ直ぐな様に。僕の気持ちも真っ直ぐなんだ。簡単には変えられないよ。今のお前なら、分かるだろ?」


「……分かりたく無い。」


 さっきまでの僕を見ている様だ。

 本当は、もうどうしようも無いって気付いてる。

 それを認めたく無くて、意地を張ってるんだ。

 それでも僕は、サナエに言った。


「お互い、気持ちの整理がつくまで。この事は、保留にしないか?」


「保留?」


「明日、思い返せば。また違った考えになるかも知れない。」


「それでも、私は……。」


 すがる様に言って来るサナエ、それを振り切る様に。

 僕は言った。


「また明日な!」


 そして全速力で、駅の方向へ走ったんだ。

 一度も後ろを振り返らないで。

 サナエの表情を見るのが、怖かったから。




 駅を乗り継いで、家に転がり込んだ僕は。

 何もやる気が起きずに、夕食も取らず。

 そのままベッドに倒れ込んだ。

 今日の事が全て、夢であります様に。

 そう思いながら、気付かない内に寝ちゃってたんだ。




 翌日、卒業式の日。

 親はもう、仕事に出かけていた。

 昨日風呂に入りそこねたので、軽くシャワーを浴び。

 食パン1切れとコーヒー1杯と言う、いつもの朝食。

 その後、重い足取りで学校へ向かったんだ。

 電車の中でも、ずっと考えていた。

 レイジに、エリに、そしてサナエに。

 どんな顔をして会えば良いんだろう。

 校門をくぐるまで、ずっとずっと。

 そんな事を考えていたんだ。




 そーっと、教室の中を覗き込む。

 まだ3人共、来ていない様だ。

 ホッとした僕は、中へ入ったんだけど。

 クラスのみんなが、何故か泣いているんだ。

 中には、号泣している奴も。

 一体、どうしたってんだ?

 僕はクラスの奴に、尋ねてみる事にした。


「何か有ったのか?」


 すると、そいつは。

 僕の顔をギッとにらんで、こう言い返したんだ。


「お前!良くも呑気に居られるな!お前が一番、仲が良かったんだろ!」


「え?何の事?」


 状況がさっぱり分からない。

 ポカーンと口を開けていたんだろう、何の事やらと言った顔付きの僕へ。

 別の奴が、こう言って来たんだ。




「知らないのか!?【死んだ】んだぞ、あいつ等!」




「し、死んだ!?」


 予期しない言葉が出て来たんで、僕は頭が混乱し始める。

 そいつは、こう続けた。


「エリとサナエとレイジだよ!今日卒業だってのに、どうしてこんな事に……!」


 う、嘘だ。

 嘘だ。

 嘘だっ!

 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だっ!

 気が付くと、僕は。

 そいつの身体を掴んで、そう叫びながら揺さ振っていた。


「俺だって信じらんねえよ!お前、何か知ってるんじゃないのか!」


「ぼ、僕は何も……知ら……ない……。」


 そいつの迫力に、思わず僕はひるんだ。

 まさか、昨日のあれで……。

 屋上での出来事、校門での出来事。

 それ等を思い出して、僕は黙ってしまった。

 それが、クラスメートの気にさわったらしい。

 みんなが僕に、詰め寄って来たんだ。


「知ってるな?知ってるんだな!言え!何が有った!」


「僕の……せいじゃ……。」


「『言え』って言ってんだろ!」


「うわあああぁぁぁっ!」


 僕は叫ぶと、掴んで来るクラスメートの手を無理やり振り払って。

 勢い良く、廊下へ飛び出した。

 必死に、懸命に、その場から逃げ出した。

 上履きのまま、外へ外へ。

 なるべく遠く、誰も僕の知らない所へ。

 このまま消えてしまいたかったのかも知れない。




 スマホは電源を切っていた。

 帰って来る様、親や友達から催促が来そうで。

 どうして教室から逃げてしまったんだろう?

 自分のせいで、3人が死んだ。

 何故かそう思い込んでいた、それが理由としか考えられない。

 3人の死因を聞いても居ないのに。

 多分、ベッドへダイブした時に思った事が。

 心の何処かで引っ掛かっていたんだろう。




 《僕を裏切ったあいつ等なんか、この世から消えちまえ!》




 人目も気にならない程懸命に、夢中で町中まちなかを駆け抜けた僕は。

 とある電車へ飛び込むと、ドスンと席へ腰を下ろし。

 揺られ揺られて、海岸沿いを西へ西へと移動していた。

 途中でふらりと、見知らぬ駅へ降りると。

 気付いた時には、高いビルの屋上に居た。

 どうやって、フェンスを乗り越えたのかも覚えていない。

 下からは、沢山の大人の声が聞こえて来る。

 わんわんとうなっているだけで、はっきりとは聞き取れない。

 その時ふと、今流行りのラノベを思い出していた。

 不運にも死んでしまった主人公が、神様の力で異世界に生まれ変わり。

 チート能力を駆使して敵をなぎ倒しながら、ハーレムを築いて幸せに暮らす。

 そうだ、そうなんだ。

 きっと3人も、そうやって異世界転生したんだ。

 なら、僕も……。

 無意識に足を、1歩前へ出す。

 身体がガクンと揺れる。

 下からは一段と、大きな声が上がる。

 フワッとした感覚、気持ち良い。

 僕は夢見心地で、宙を舞っている。




 そうか、それで僕は。

 今、空を飛んでいるんだ。

 待ってろよ、異世界。

 次こそは、良い人生を……。




 ────────────────




「駄目だったか……。」

「こんなに若いのに、飛び降り自殺なんてなあ。」

「何でも、卒業式の前日に。仲の良かった友達が3人も、事故で亡くなったらしいよ。」

「可愛そうに、それで思い詰めたんかねえ。」

「本人にしか、分からないけどな。」


 そう呟き合う、大人達。

 結局彼は、異世界に転生出来たのだろうか。

 思わぬ事に現実逃避し、ラノベの世界観に憧れ。

 現実とフィクションをごっちゃにした結果、僅かな可能性に賭ける形となった。

 こんな事でつぐないになるとは思っていなかったが、これしか方法が思い付かなかった彼。

 望み通り転生が叶ったかどうかは、正に〔神のみぞ知る〕所となった……。

いかがでしたでしょうか?

主人公の苦しい内面、少ない文字数で表すのは難しいですね。

楽しんで頂けたなら、幸いです。

願わくば、「小説家になろう」に投稿されている作品のどれかで、

主人公が、幸せな人生をやり直していますよう……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ